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特別がほしい

 いつも輝きに満ちてうつくしい姉のことが、幼い頃からずっと苦手だった。誰からも愛される要領の良さで、それは妹である私にも十分に発揮されていて、だから余計につらかったのだ。

 子どもの私は、可愛い髪飾りを店で見かけてすぐに欲しくなったのだけど、姉の方がよく似合うであろうことに気づいてしまった。途端にそのきらきらした装飾の花々は私にふさわしくないように思えて、それでも諦めがつかずにじっと見つめていた。そうしたら横から姉が、「ほしいの?」ときいてきたので、私は「かわいいけど、お姉ちゃんのほうが似合うと思う」と答えた。そしたら姉は、なんだそんなこと、とでも言うように平然と、「じゃあ同じのを買って二人でつけよう」と、その商品を二つ手に取ってさっさと買ってしまった、私の返答なんて聞かずにレジに向かった姉の背中は小さかった。結局恐る恐る髪飾りを身につけた私に、同じ髪飾りを身につけた綺麗な姉がいっぱいの笑顔を見せ、そうやって姉妹の間はすべてが済まされてしまうのであった。

 魅力的な姉は多くの人に囲まれながらも、私に視線を送ることを忘れなかったから、自惚れてしまいそうになる。愛おしさを含めた視線は他の誰かにも存分に注がれているのに、ただ一つの特別なことみたいに思いたくなってしまう。姉はずるいけれど、そのずるさは作為的でなく、私の執着心に起因していたので誰に打ち明けようもない。一方的に苦手に思っている姉と距離をとることは叶わず、名前を呼ばれただけで嬉しくなってしまう単純な自分が嫌だ、と思うことが年齢を重ねて増えていった。

「明日から、修学旅行かあ。」

 隣の布団に寝ている姉が、はっきりと私に聞こえるように言う。姉妹は家で一つの部屋を割り当てられており、そのことについて不満を述べたことは互いに一度もなかった。

「うん。二泊三日ね、お姉ちゃんと同じだよ。行く場所もほとんど変わらないし」

 姉は高校に上がって二年が経ち、私は姉が卒業した中学校の最終学年になっていた。

「そうだね。さびしいな」

「さびしい?」

「うん、さびしいよ。たったの二、三日でも離れるのは」

 そんな弱々しい感情、私のものだけかと思っていた。当然のように姉は、悲しそうな目で不安に満ちた態度を示し、その姿には少しの翳りさえあったので自分の鼓動の高鳴るのを感じた。

「お土産、何がほしい?」

「そんなのいらないから、早く帰ってきてよ」

 甘えたような口調、私は、日程を早めることなんて無理だよと普通を装って苦笑と共に返しながら、この肉親への愛おしさでどうかなりそうだった。やっぱり私は姉の前では無力で、ずっと苦手なままかもしれないと、静かな覚悟に身を沈めた。

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