表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月ノ心ニ音、累ナル。  作者: ココツキプロジェクト
7/56

第1話前編.クローバーに約束を - 7

 すぐ側につきねが立っていた。つきねも一瞬少し驚いた表情を浮かべていたが、

「卒業おめでとう、おねーちゃん」

「ありがとう~! 本日鈴代ここねは中学校を卒業しちゃいました~!」

 元気いっぱいな感じで応じると、ここねは疑問を口にした。

「でも、どうしてこんなところにいるの? つきねの教室こっちじゃないでしょ?」

「なんとなくだけど、こうしてたらおねーちゃんに会える気がして」

「ふふ、何それ? 普通教室に来ない?」

 偶然会えて、ここねはなんだか楽しい気分になっていた。

「そうだけど、こうして会っちゃってるし……それにね」

「ん?」

「教室に行ったら、まね先輩たちいると思って。おねーちゃんに……伝えたいことがあるから」

 つきねが真剣な面持ちでここねの瞳を見つめてくる。

 真摯な眼差しと緊張で微かに震えた声が漂わせるこの雰囲気に、ここねは既視感があった。

 以前に告白してきた同学年の男子と同じだ。そんな気がした。

「待っ……つき――」

「毎日、起こしてくれてありがとう」

 つきねが言葉を続ける。


「毎朝、髪の毛きれいに編んでくれてありがとう」

 もう一つ言葉が重なる。

「いつもどんな時でも、つきねの味方してくれて……ありがとう」

 それはどれも姉であるここねにとっては当たり前のことだ。

 しかし、つきねにとってはとても大切なことであるかのように。

「…………」

「いきなりでビックリしたよね。でも、絶対伝えたくて。家だと恥ずかしくて言えない気がしたから……」

 照れくさそうに一度視線をそらすつきねだが、またすぐ笑顔を向けてくる。

「高校生になったら、おねーちゃんには夢に向かって頑張ってほしいんだ。一緒の時間は減っちゃうと思うけど……つきねは大丈夫だから!」

 ここねの歌手になるという夢を応援してくれる。そのために軽音楽部を作って活動するというここねの目的をつきねは誰よりも知っているから。

 嬉しい。大好きなつきねが後押ししてくれる。

 絶対に夢を叶えたい。

 それでも――

「おねーちゃん?」

 ここねは思ってしまった。


 ――つきねとずっと一緒にいたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ