十三話 テレンスとの決闘(1/3)
太陽が天高く上る時間。
雲一つない青空の下で、金属同士がぶつかり合う甲高い音が響き渡る。
大勢の人が同じ広場を眺めており、その広場の中央に立つのは二人だけ。
行われているのは、真剣あり魔法なしの実戦形式の試合。
互いの武器が身体のどこかにぶつかる、あるいは寸止めを行えれば勝ちというルールだ。
俺の相手は騎士団の中でも実力ナンバー3の槍使い、ケットさんである。
既に五分以上打ち合いを続けているが、寸止めすることはおろか槍の間合いに潜り込むことさえできない。
とはいえ俺も未だ一撃を貰っていないので、五分五分と言ったところか。
俺が近づこうとすれば槍を大きく振るって攻撃を当てようとする。
それを避ければ、今度は突きがやってくる。
全くもってやりづらい相手である。
だが、ここまで来たからにはもう退くことはできない。
ケットさんに勝って、俺はもっと強くなるのだ。
単純なせめぎあいじゃ、剣では槍のリーチに勝てない。
ならば…。
俺はケットさんに突進した。
それを見たケットさんは当然横に薙ぎ払うようにして俺を攻撃する。
俺はすかさずスライディングで槍の攻撃の下を潜り抜けた。
「その避けかたも読めているぞマサヨシ!
これで終わりだ!」
しかしナンバー3はこんなことで欺ける相手ではない。
素早く持ち方を変え、槍の柄の先端部分で真下にいる俺を攻撃する。
例え柄の部分だろうと、胴体に当たれば俺は負けの判定をされるだろう。
だが、この状況こそがいいのだ。
広場にコーン!という音が響き渡る。
俺の剣の柄と、槍の柄の先端がぶつかり合う音だ。
「バカな、こんなことが…!」
柄の部分同士で当たるように剣を逆手に持ち、当たる際に左手を添えることで受け止めたのだ。
槍の刀身部分で同じように攻撃されたなら、成す術はなかっただろう。
しかし薙ぎ払いをした後で俺を刺すように持ち変えるよりは、右手で槍の先を持っている分、刀身を持ち上げて柄の部分で突いた方が素早く反撃できると考えたのだ。
柄の部分で受け止める方が刀身同士で受け止めるより遥かに難易度が低い。
そしてこの状況であれば、槍よりリーチが短いからこその利点がある。
俺に対して垂直な槍の柄に対して水平に剣を置いている分、受け止めた部分を軸に回転させやすいからだ。
俺は剣を右回転させ、刀身をすね当てに軽くコツンとぶつけた。
それを見たテレンスが高らかに宣言する。
「勝負あり!勝者、マサヨシ!」
沸き立つ歓声。
俺への賛辞の言葉が聞こえてくる。
「マジかよ…ケットさんに勝ちやがった」
「騎士団に入りたての頃とは比べ物にならないな」
「槍相手に片手剣だけで勝つとは…」
嬉しい限りの声だ。
しかし、どっと疲れた…。
気力が限界に達し、スライディングしたままの体勢で動けなくなってしまう。
いくら一本取ったと言っても、試合形式だからこそ通じた手段である。
これが本当の戦いであるなら、この程度で済んでいるはずがないのだ。
『そりゃそうだわな。
試合としてのテメーの判断は間違っちゃいなかったが、実戦ならこの後間違いなく殺されるぜ』
やっぱりそうだよなぁ…。
強くなってきた自覚はあるけど、問題は山積みだ。
今後の訓練課題を考えていると、ケットさんが俺に笑顔で手を差しのべてきた。
俺はその手をしっかり握り立ち上がる。
「負けたよマサヨシ。腕をあげたな」
「いえ、運が良かっただけの話です。
実戦じゃこうはいきませんしね」
「謙遜しなくていい。
たった半年で、剣の使い方もわからぬ状態からよくぞここまで成長したものだ。
君を誇りに思うよ」
「…ありがとうございます!」
何と言う誉め言葉か。
感激のあまり涙が出そうになる。
頑張ってきてよかった…。
この後も、俺は騎士団員にもみくちゃにされながら成長を祝われるのだった。
俺がこの世界に来てから半年が過ぎようとしていた。
四ヶ月前の魔物化事件以来特に目立ったトラブルも起きず、平和な日々が続いている。
その間もコツコツ特訓を重ねてきた俺は、とうとう騎士団の中でテレンスに次ぐ実力として認められるほどに成長したのだった。
これもシックの身体という才能の塊と、団長やテレンス、イザベルによる英才教育の賜物だろう。
まあ俺単体の実力じゃないからズルと言われても仕方ないけど…。
俺はこの世界で勇者として必要とされているのだから、多少のズルは許容されるべきだと思う。
…いいよね?みんな許してくれるよね?
『許してほしけりゃ身体返しやがれ』
駄目だってば。
それにイザベルがかけたプロテクトは俺の意思じゃ解除できないし、お前だって解除できないんだろ?
『くそがああああ!
俺様は天才なんだ!
こんなカスみたいなプロテクトに負けてたまるかああああ!』
おーっほっほっほ!ウィザズの精鋭でも無理矢理には解除できない奥義があんた程度に解けるわけないじゃない!
…とは、イザベルの言葉である。
魔法の精度の凄さは伝わるけど、その魔法をかける側も中身を理解してないと使えないよな…。
つまりイザベルはそんな魔法を扱えるだけの領域にいるってことだ。
前々からイザベル自身も天才だとか言ってたけど、改めてとんでもない才能の持ち主なんだな。
『才能なら俺様だって負けてねーぞ!
今にみてろ、ぜってーに解いてやるからな!!』
それを俺の頭の中でばかでかく宣言するのは止めてもらえますかね…?
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「マサヨシ!粋のいい魚が手に入ったんだよ!刺身にして持ってくか!?」
「なにを!うちの家畜の肉はジューシーで他の肉なんか食いたくなくなっちまうぜ!?」
「まあまあ。それぞれ必要な分をいただきますので…」
二重人格云々の噂が流れてから、町の人たちの俺への態度は毎回こんな感じになった。
俺を見かけたら声をかけて、色々と便宜を図ってくれるようになったのだ。
遠慮する必要がなくなったのか、シックみたいな奴をまた産み出されてなるものかと恐れているのか。
…両方かもな。
『くれるってんなら全部貰っときゃいいじゃねーか』
誰が食うと思ってんだ。
そんな一気に買っても消費期限過ぎちゃって捨てるはめになるぞ。
こういうのは計画的に、必要最低限でいいんだよ。
『さっき例の菓子屋で同じ甘味十個も買ってたやつは言うことがちげーな』
それはほら、甘いものは別腹ってことで…。
『カマかよきめーな』
全国のオカマの人に謝れ!!
オカマはいい人なんだぞ!某幼稚園児の映画でも大抵味方だしな!
『何の利点だそれは…』
「こんだけサービスできるのも今のうちかもしれねえからさ。
貰ってってくれよマサヨシ」
「…何かあったんですか?」
魚屋の店主は顔を曇らせつつ話してくれた。
「アネモネ団長が頑張ってんのは知ってるだろ?
それでも海の魔物は絶え間なく来やがるからさ…。
少し前までちょっとは沖にも出られたんだが、ここんとこ更に活性化したってんで、こないだ遂に近海ですら漁が禁止になっちまった。
今ある魚はもうじきだめになるやつばっかりだから、持ってってもらわねえとうちも処分に困るのさ」
魚屋の店主がそう言い終わると、肉屋の店主も愚痴を言い始める。
「あんたんとこも大変だなあ。
うちも家畜の餌とかは遠くの方から取り寄せてんだけどよ、そっちの方も魔物の襲撃が厳しいってんで仕入れが減っちまったのよ。
今はまだいいけど、いつ殺処分する必要がでてくるか…」
二人は憂鬱な顔を見合わせてため息を吐いた。
今はまだ直接的な被害がないだけで、段々と人の生活は苦しくなっていくんだろう。
『ま、いつまでも平和って訳にはいかねーわな。
魔物との戦いは続いてるんだからよ』
俺がこうして日常を過ごしている間にも、世界のどこかで誰かが困っている。
食料調達ができない状態にされて飢え死にを待つだけの人がいるかもしれない。
今まさに魔物に襲われ、心臓を貫かれる数秒前かもしれない。
そうした人たちが世界にはたくさんいて、誰かの助けを待っているのだろう。
だとしたら、俺はこのままでいいのだろうか。
このままのうのうと暮らし続けていて、それで満足なのか?
俺が転生して半年。
毎日毎日修行して、ようやく自分の腕にそこそこ自信がついてきた。
今ならシックの手助けなしでも、ナックルグリズリーを倒すことができるだろう。
それだけが根拠じゃないけど、ともかく、旅立つ最低限の力は手に入れている、と自負しているのだ。
だから、そろそろ魔王城に向けて旅立つ必要があるんじゃないだろうか。
今起こっていることをすぐ解決することはできなくても、これから起こることを未然に防ぐために。
『止めとけ。テメーにはまだはえーよ』
思い上がりそうな俺をいつも引き留めてくれる声。
嫌悪すべき相手ではあるが、俺が生きるのに必要な存在からの忠告だ。
『この先何が起こるかなんて俺様にもわからねー。
テメーが俺様の身体で無茶やらかさねーとも限らん。
そんなやつを、この段階で外に放り出すのはありえねーんだよ』
自分でもわかっているのだ。
無理に焦って旅立ってしまったら、それこそ取り返しのつかない状況になるんじゃないか、と。
この大陸には魔物がいない。
だから安心して暮らしていける。
しかし一度外の世界に出てしまえば、いつ魔物に襲われるかわからない生活を、下手をすれば何年も続けなくちゃならない。
平和な日本で育ってきた俺には、厳しい道のりとなるだろう。
でも、それでも。
今動かなければならないと思う。
理屈も何もないけど。
できることは少ないかもしれないけど。
助けられたかもしれない人たちを、できる限り見過ごしたくないから。
勇者として。
南正義として。
俺は俺にしかできないことで、より多くの人たちを助けたいんだ。
『クソガキが…理想だけ語ってその気になりやがって』
…なら、理想じゃなきゃいいんだよな?
『あ?…そうだな。
テメーにそれができるだけの力があんならな』
よし、決めた。
俺はテレンスに決闘を申し込む。
『………………は?』
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「…というわけでテレンス。
決闘を申し込むよ」
次の日の朝。
いつもの訓練が始まる前に、昨日の俺の考えをテレンスに伝えた。
もちろん、シックと話しながら考えたという部分は割愛しているが。
伝え終わった時のテレンスの反応は概ね想定内だった。
「…マジで言ってるのかマサヨシ。
俺から一本も取れたことのないお前が、俺と決闘だと?」
「今まで一本も取れなかったからこそだよ。
団長レベルは無理でも、テレンスに追い付けたなら旅立っても問題ないだろ?
テレンスなら、仮に一人旅をしていても普通に暮らしていけるだろうしさ」
「…はは…ははは…あーっはっはっはっは!」
テレンスは清々しい三段笑いを見せた後、真剣な表情で俺を見た。
「あのなマサヨシ。
この前ケットさんに勝ったから勢いがついてるんだろうけどな。
ありゃ試合だから勝てたんだぜ?
あの人ならおまえさんを殺すのに五分もかからん。
俺だって、真剣の勝負で片手剣しか使えないならすんなり勝てる気がしねぇぜ。
それくらい、試合と実戦じゃ本気の度合いが違うんだ」
「それは俺にだって理解できる。
あの人が相当手加減して俺と戦ってたってことくらいは」
殺す気で戦っていたなら、あそこで柄の部分を当てようという判断は絶対にしないだろう。
刀身を確実に俺の身体へ抉り込むための策をとるはずだ。
一歩下がるとか、やりにくくとも刀身を下にして攻撃するとか。
結局俺は、試合形式の穴をついた戦いしかできていないのだ。
「だったら諦めるんだな。
本気のナンバー3に勝てない程度じゃ、旅に出てもやっていけねぇよ」
止めろ止めろ、とテレンスは手をひらひら扇いだ。
しかし、そんなことで止まる俺ではない。
「じゃあ、いつならやっていけるんだ?」
俺の強気な反論に、テレンスは眉をピクリとさせる。
「町の人たちはいい加減限界が近いことに気づき始めてる。
今動かないと、マンガス以外に誰かが国家転覆を狙ってたりしなくても、勝手に疲弊してみんな共倒れだ。
そういう状況を打開するために俺を呼んだんじゃないのか?」
「…………」
「だったら、今動かなきゃダメだろ。
全てが悪くなってから動き始めたんじゃ意味がない。
この国を守りたいという王様の思いを無駄にしないためには、もう魔王城に向かわなきゃ間にあわないんだよ」
テレンスはしばらく考える素振りを見せてから、思いの丈を話し始めた。
「お前さんの言う通りさ。
この国は…いや、世界中が魔王軍の侵攻に耐えきれなくなりつつある。
戦争が始まってから、ちょうど世代交代の時期だしな。
そういう節目は上手くやらなきゃ全部崩れちまうもんだ。
カスティーラは戦争が激化する前に継承できたが、他の国じゃいくつか街が滅んだ場所だってある。
そういうのを考えれば、確かに今動かにゃならんのだろうな。
…けどな、一つハッキリ言わせてもらうぜ」
「…なんだ?」
テレンスは真剣な顔で俺に向き直った。
「どうあがいたって魔王城には辿り着けねえってことだ。
仮に着いたとしても、魔王を説得したり、あまつさえ戦おうなんてのは手の込んだ自殺にしかならねえんだよ。
五十年以上前の伝記によれば、魔王サタンは『国一つ気軽に滅ぼせる力を持った魔物を、赤子の手を捻るがごとく捩じ伏せることができる程の強大な力を持つ』バケモンなんだとさ。
そんな力を持った奴と対峙して、どう交渉しろっていうんだよ」
その伝記は俺も以前図書館で読んだことがある。
その本に記されている魔王サタンの人物像は、王様が言っていたように『魔物の王』そのものだった。
纏まりのない多種多様な魔物たちを指導し、秩序をもたらし、エルフやドワーフといった亜人のように国を作り上げて人々と交流してきた存在だったらしい。
同時に、並々ならぬ力の持ち主であることも書かれていたわけだが。
「…正直、俺は【降霊術】で他の誰かをシックの身体に入れるなんてのは最初から反対だったんだ。
特に【光の勇者】の素質をもつ奴なんて、頼まれれば応えちまうようないいやつに決まってるじゃないか。
そんなやつを恐ろしい魔王の元に送り出すなんてよ…
マサヨシ、焦る必要なんてねえんだ。
こんなことに巻き込んじまった以上、俺たちは最後まで責任を持つ。
だからせめて、あと半年でいい。
お前さんを鍛えさせてくれよ」
テレンスは本気で俺のことを心配してくれているらしい。
それは俺の実力だったり、性格だったり、色々なんだろうけど。
その気持ちは凄く嬉しい。
でも、もう覚悟は決まってるんだ。
「それで誰かを救うことが間に合わなかったら、俺は一生後悔して生きることになる。
誰がどうとかは関係ない。
俺がこの世界の力になりたいと思ったから戦うんだ。
…だからテレンス、その心配が杞憂だってことを証明してやるよ。
もちろん俺が負けたら、大人しくもう半年修行するからさ」
俺の言葉を聞いて、テレンスはしばらく悩んだ後、諦めたようにため息をついた。
「わかった…本気で相手すりゃいいんだな」
「ああ、そうでなくちゃ意味がない」
よし、何とか約束を取り付けたぞ。
後は実際にテレンスを攻略できるかにかかってる。
さて、どうしたものか…。
『相変わらずノープランで話を進めるな、テメーは』
テレンスの本気の実力がわからないからな。
今までの訓練じゃどの程度の強さかなんて測りようがないんだから、どれだけ対策したところでぶっつけ本番と同じだろう。
なら俺がすべきことは、考えうる限りテレンスが超人的な動きをすると予測して、その対処法をある程度考えておくことだ。
……絶対に勝つぞ!
『(はっきり言って五分以内に負けると思うが…。
まあ、どの道俺様にはあまり関係ねーか。
どっちに転ぶにしても、この邪魔なプロテクトを解除しねーことには始まらねーからな)』
「ふふ、話は聞かせてもらったよ」
そんな言葉と共に訓練所の入り口から現れたのはアネモネ団長だった。
有に五メートルは離れてたけど、そこからどうやって聞いていたんだ…?
「聞いてたんなら団長も止めてくださいよ」
「いいじゃないか。
マサヨシ殿だってそろそろ自分の腕を過信し始める頃だろうしな。
一度くらい力の差を見せつけてやるのも我々の仕事だ」
…暗にテレンスには勝てないって言ってるな。
しかも自信過剰だとみられている。
くそ、今に見返してやるぞ。
「折角の大事な一戦だ。
こんな訓練場でやるより、もっといい場所で戦うのがいいだろう。
…そうだテレンス、君の実家なんかはぴったりじゃないか」
これ、俺に恥をかかせるつもりなのか?
俺のプライドを完全にへし折るつもりで提案してるよな団長。
そのくらいじゃないと外の世界で生き残れないぞ、ってアドバイスだと思うけど…。
アネモネ団長はノリノリで話を進めるが、実家という単語を聞いた瞬間、テレンスの眉がまたしても反応した。
「…団長。本気で言ってますか、それ」
テレンスは睨み付けるような視線で団長を見たが、当の本人はけろりとしている。
「本気だとも。
我が騎士団のナンバー2がいつまでも父親と不仲だというのはよくない。
ここでしっかり話し合う機会を作るべきだ。
ちょうど色んな事件が片付いて暇ができ始めているしな」
父親と不仲?
誰にでも気さくなテレンスが?
何があったんだろう…。
「確かにうちの道場は設備も整ってるし、模擬戦をするのには最適ですが…。
俺は、あの家に長居はしたくないですね」
「まあそう言うな。
私も肩の荷が降りてから色んな事に興味を持ちはじめてな。
一度、君の実家を訪れてみたいと思っていたんだ。
君は家族のことをあまり喋ろうとはしないからな」
テレンスは俯いて何か考えていたようだったが、すぐに顔をあげて団長に向き直った。
「…わかりましたよ。
まあ、確かに俺が全力を出すなら都合がいいのも事実ですからね」
「よし、決まりだな。
マサヨシ殿もそれでいいだろうか?」
「ええ。俺もテレンスの実家は楽しみです」
実際、俺はテレンスのことを腕っぷしの強い人以上の事は何も知らないのだ。
これを機に知っておいても悪くはないだろう。
父親との不仲というのは気になるけど……。
テレンスの実家かあ……どんなところかな。
『確かこいつのファミリーネームはアクティアだったか。
アクティア家ってのは有名な戦士の家系だった筈だぜ』
そうなのか?
『ああ、一族全員が優秀な戦士でな。
魔法を使わず、己の肉体だけで戦うってのを信条としてる。
そしてその強さを生かして、誰かに仕えて暮らしてるっつー傭兵の一族なんだとさ』
へぇ、傭兵の一族か。
じゃあ騎士団に入ってるのもそういう理由からなんだな。
強さの秘訣も何となく見えてきた。
もしかしたら、実家を見ることでテレンスの戦いの型なんかもわかるかもしれない。
そうなったら少し有利だな。
よし、隅々まで観察するぞ。
「じゃあ取り敢えず俺の実家に行きますか。
親父にも話をつけておかなくちゃなりませんからね」
そう言って訓練場を出ていくテレンス。
俺とアネモネ団長は、その後に続いたのだった。




