七話 開国祭当日(3/3)
「馬鹿め!我が攻撃はブレスだけではないということを思い知らせてくれる!」
一番早く動いたのはマンガスだった。
身体を捻り尻尾を振り回し始めたのだ。
凪ぎはらって攻撃しようと考えたようだが、俺たちに尻尾が届く前にテレンスが盾を構えて飛び出し、その尻尾を受け止めた。
「ぐっ、貴様!」
「汚名返上のチャンス到来ってな!総員!かかれ!」
テレンスの合図で、団員たちは再びそれぞれ武器に魔法で属性を付与しマンガスへ突撃する。
「小賢しい!そんな攻撃は通用せんと言っているのだ!!」
団員たちを爪で迎撃しようと腕を振りかぶったマンガスだが、ほんの一瞬、後ろから引っ張られる力を感じ動きが止まってしまう。
その腕には、半透明の鎖がどこからともなく巻き付いていた。
「ぐっ、拘束魔法か!?」
「一瞬止められれば十分よ」
その僅かな隙の間に、団員たちによる一糸乱れぬ連続攻撃が行われる。
その攻撃は、テレンスが抑えている尻尾の根元の一点を狙い撃ちしていた。
アネモネ団長による厳しい指導により鍛え上げられた団員たちには、寸分違わぬ箇所への攻撃など容易いことだった。
その連続攻撃で、硬い鱗に守られた尻尾にほんの僅かな亀裂が入る。
「やってくれたな!!」
マンガスはすかさず団員たちに反撃を繰り出そうとした。
しかし既に俺が懐まで潜り込んでいることに気付き、標的を俺に変えて爪を振りおろす、が。
『今のこいつには遅すぎる攻撃だなぁ!やっちまえ!』
爪を振り下ろされるより前に、俺は亀裂の入った箇所めがけ全体重を乗せて剣を振り下ろし、マンガスの尻尾を切断することに成功する。
マンガスはあまりの激痛に叫び声を上げて身をよじり、なんとか俺から離れた。
テレンスも尻尾が切れたことを確認し、すぐにその場を離れる。
「バカなぁぁ…!まだ日も浅く戦闘経験も未熟なはずの貴様が、なぜこれほどまで修羅場馴れした戦いかたを…!?」
テレンスや団員たちとの連携そのものは、【脳波交信】なんて言う反則極まりない伝達手段があることくらいはマンガスもわかっていることだと思う。
説明がつかないのは、爪が振り下ろされる速度より早く、俺が冷静に尻尾を切断したことだろう。
俺も普段の状態であれば、爪の一撃を食らうことを恐れて足がすくんでしまったかもしれない。
しかし残念ながら、今の俺にはシックから与えられた秘策中の秘策があるのだ。
自分でもこんな世界があるなんて驚いているが、それをむざむざ教えるつもりは毛ほどもない。
俺はマンガスにはっきり見えるように笑みを浮かべ、嫌みったらしく答えた。
「さあね、俺がそれくらい強いってことじゃないか?」
『調子乗んなゴミクズ』
…はい。ありがとうございます。
助かってます。本当に。
俺一人じゃ絶対この魔法の制御は無理だし。
『しくじんなよ?俺様がまたいずれ使う身体なんだからよぉ!ギャハハ!』
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「…なるほどね」
イザベルは【脳波交信】で指示を出しつつ筋力強化魔法を味方全体にかけながら、急激に動きが良くなっているマサヨシの変化に対して1つの答えを得た。
イザベルの筋力強化魔法は確かに強力ではあるが、流石に今の爪の一撃を避けもせずに攻撃できるような速さにはならない。
尻尾を切断できたのは筋力強化魔法によるものであろうが、あの一瞬で僅かな亀裂に寸分の狂いもなく冷静に剣を走らせることは、熟練の剣士でも滅多にできることではない。
強化魔法のみが原因でないことは容易に想像できる。
ならば必然的に、仕掛人はあの身体の本当の持ち主しかいない。
(【思考加速】…。あたし以外にも使えるやつなんていたのね)
【思考加速】は脳の処理能力を魔力で補強し、一時的に物体の認識能力や思考能力を高める魔法である。
使用した本人には時間の流れが止まって見えるような感覚を得ることができ、普通の人よりも素早い判断が可能なのだ。
本来持っている脳の処理限界を超えているため、当然デメリットも山ほどあるわけだが、制御の仕方次第ではいくつか軽減できる。
つまり。
爪が来るという認識をしてから、コンマ数秒にも満たない一瞬のうちに、爪が身体に到達するよりも速く切断できると判断できたからこそマサヨシは尻尾を切断できたのだ。
この土壇場で他人に、しかも自分の身体で使わせるということは、シックにはデメリットをほとんどゼロにできる秘策があるということになる。
(もしうっかり脳にダメージが残ってしまえば、仮に身体の主導権を取り戻しても本末転倒だもの…。
天才って言うのは本当みたいね)
イザベルは自分以上に魔法の才能を持つかもしれない男が存在することに内心腹がたちつつも、持ち前の好奇心にその怒りはかき消された。
自分でさえデメリットを隠しきれないその魔法に、何か別のやり方があるのだと知って。
(上等よ。あたしはあたしのやり方で、いつか魔法を極めて見せるわ)
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イザベルからの【脳波交信】による戦術指示と支援魔法。
テレンスによる圧倒的防御と団員たちの統率された狂いのない連続攻撃。
アリスさんからの回復魔法とブレスを遮断する【女神のドレス】。
そしてシックによる【思考加速】と俺への細かい動きの指示。
戦闘におけるパーティーとしてこれ以上ないであろう戦力がマンガスを襲い続けた。
負けじと抵抗し続けるマンガス。
既に身体中に傷があり、息も絶え絶え、尻尾の他に右腕も落とされて…それでもなお、マンガスは戦うことを止めようとしなかった。
「我は…我は魔王様の為に尽くすのだ!
かつて人間どもに迫害されてきた我ら一族を、人気のない谷に誘導し手厚く保護してくださったあの方に!
あの方がこの国を滅ぼせと仰るのなら!
我は!
たとえ死んでもこの国を滅ぼして見せる!
滅ぼさなくては…ならぬのだああ!!」
マンガスにもこの国を攻めるだけの理由があったのだろう。
その魔王とやらも、もしかしたらそれだけの理由があるのかもしれない。
それでも、この国に住む罪もない人たちを危険に巻き込んでまでやらなければならないことなんて間違っている。
誰かが不幸にならなければ解決できないことなんて、あってはならないんだ。
だから…。
俺は足に渾身の力を込めて飛び上がり、目標の頭上からしっかりと剣を構えた。
マンガスは迎え撃つべく渾身の力を振り絞ってブレスを放ったが、アリスさんの【女神のドレス】により無効化された。
尻尾の残った部分で俺を攻撃しようにも、テレンスがそれを受け止める。
ならばと爪で迎撃しようにも、イザベルの拘束魔法で動けない。
持てる攻撃手段を全て封じられているマンガスは、既に詰んでいるのだ。
「俺はお前を許さない。
お前にどんな理由があろうとも、沢山の人を不幸にするのは間違ってる。
だからその身を持って…償え!」
俺は最初にマンガスを切った時と同じように斜めに切り裂いた。
人の身体では致命傷だったそれは、龍の巨体ではあまり大きな傷になったとは言えない。
しかしその攻撃は、マンガスの最後の気力を刈り取ったようだ。
「グオオオオオ!!」
マンガスは鼓膜が破れるような咆哮を上げた。
─── ── ─ ┼ ─ ── ───
貴様に言われなくとも…そんなこと、分かっておるわ…小僧…!
─── ── ─ ┼ ─ ── ───
え…?今、マンガスが何か…。
俺はマンガスの目を見た。
その瞳に宿る、燃えるような意志は段々と消え始め…一粒の滴が流れ落ちた。
「マンガス…?」
俺は床に着地し、マンガスを見上げる。
しばらく仁王立ちしたままだったが、やがてぐらりとその巨体が揺れ、床に伏せるようにゆっくりと倒れていった。
全員がそのまま武器を構えていたが、テレンスがゆっくりと口を開く。
「殺気が消えた。…俺たちの勝ちだ」
テレンスが勝利宣言をしたと同時に、城中から歓声が上がった。
どうやら城に攻め込んでいた魔物たちの掃討が完了したようだ。
つまり、俺たちの大勝利である。
「アリスっ!」
勝利を認識した途端、アリスさんがその場に崩れた。
イザベルが急いで近寄り、怪我の有無を確認する。
「大丈夫です。特別怪我はないんですが、足に力が入らなくなって…」
「無理してこんなところへ来るからよ。全く…でも、ありがとう」
イザベルがアリスさんを優しく抱き抱える。
アリスさんは困惑しながらも、嬉しそうな表情だ。
「アリスさん、あんたが来てくれて助かった。
もしいなかったら、あそこで全員やられていたからな」
テレンスも罰が悪そうにお礼を言う。
アネモネ団長に頼まれた手前、誰かに助けられたのは色々と複雑な心境なんだろう。
それでもアリスさんは嬉しそうにテレンスに返事した。
「いえ。私の力であなた方が救えたのなら、それで満足です」
「…そうか。いや、本当にありがとう。騎士団を代表して、礼を言う」
そんな様子を見ていると、シーナ姫がてこてことやってきて、キラキラした瞳で俺を見ながら大はしゃぎし始めた。
「流石ですマサヨシ様!あのような龍を倒してしまうなんて!」
純粋な目に気圧されつつも、俺は色々と訂正する。
「いや、正直俺はあんまり役に立ってなかったよ。
イザベルたちがいなきゃ、俺は最初の魔法で消し炭にされてただろうし。
…ていうか、シーナ姫や王様たちの方が心配だよ。
ブレス、もろに浴びてたでしょ。大丈夫?」
一応耐熱性の鎧を来ていたおかげか大事な部分なんかは上手く隠れているものの、ブレスの高熱を浴びて一部が変形してしまっている。
痛々しい姿なのだが、シーナ姫はさらに瞳を輝かせてアリスさんの方を見た。
「全く問題ありません!
あのお方の回復魔法でむしろ元気が出まして!
貴重な体験ができて私嬉しいんです!」
灼熱の炎を浴びて死にかけたことをいい体験なんて言うのはシーナ姫くらいのものかもしれない。
…いや、王様も俺の話を聞いてかなり目が輝いたりしてたし、もしかしてこの一族は身の安全より知的好奇心を優先するタイプなのか。
「そ、それはよかったね。あはは…」
俺は何とも言えず、当たり障りのない返事しかできなかった。
『俺様には到底理解できねーな』
俺もです、はい。
その時、廊下から一人の兵士が慌てた様子で入ってきた。
「報告します!
町へ向かった龍は、たった今!
アネモネ団長によって討伐されましたぁ!」
その一報を聞き、団員たちは歓喜の声をあげる。
「流石団長だ!俺たちがあんなに苦労したドラゴンをもう倒してしまわれたのか!」
「団長がいればこの国は不滅だぜ!」
俺たちは十数人でようやく倒したっていうのに…。
一人で倒したの?
いくらなんでも強すぎじゃね?
どうやってあのブレスを攻略したんだろう…。
『あの女ならブレスごと叩き切っててもおかしくねーわ』
それはさすがに…ないと、言い切れないな…うん。
後で聞いた話によれば、アリスさん同様、パトリック司祭含め教会の人達が応援に駆けつけたとのことで。
ブレスはパトリック司祭の【女神のドレス】によって簡単に攻略できたとか。
…いや、尻尾とか爪は?
レイピアだけで倒せるダメージ与えてたわけ?
どっちにしろ化け物だよあの人は…。
王様はマンガスを見下ろしてじっと佇んでいた。
しばらくしてから、マンガスに触ろうとしているのか、右手を伸ばし始める。
しかしそれをテレンスが制止した。
「王よ、駄目です!こいつはまだ生きています!」
え、まだ生きてるの?
よく見ると、息をしているように身体が少し動いていた。
これだけやっても生きているなんて、ドラゴンと言うのはかなり生命力が高いらしい。
『早くトドメさしちまえよ。また暴れだしたらたまんねーぞ』
確かにシックの言う通りではあるけど…。
でも、嫌だな…。
最後に聞こえた声が、本当にマンガスのものだったなら…。
王様はゆっくり首を振ってテレンスを押し退けると、マンガスの身体に触れた。
「…ワシはな、マンガス。
本当は王の器ではないのだ。
もちろん妻や娘のいる今の生活にも満足しているが、お前や仲間と共に冒険していたあの頃が一番楽しかった…」
マンガスは答えない。
「ワシはずっとお前に負担をかけていたんだな…。
考えてみれば、最近はお前とあの頃のように話し合うことも少なくなった。
いつだって“魔法大臣のマンガス”として接してきていた。
お前個人の悩みを、見て見ぬふりをしていたのだ。
ワシは、お前の友だというのにな…。
ワシは道を踏み誤った。
だからお前に、こんな真似をさせてしまった」
王様は頭を床につけ、精一杯の謝罪をした。
「許せとは言わん。だが、すまなかった…!」
しばらくの沈黙の後、マンガスがゆっくりと口を開く。
「ふん…だからお前は甘いと、昔から言っているんだ…」
「!」
「非情にならなければならない時が…必ず来ると言ったはずだ。
今の世の中は、綺麗事だけでは上手くいかん。
…お前は、一国の王なのだろうが。
王は…自らの選択を悔いてはならん。
例えその行いに疑問を持つ時があっても…。
自らの行いを正義と信じ…民を守るため、己の信念を全うするために…進み続けなければならないのだ。
それに、少なくとも我は…お前の方針が…。
民を第一に考えた振る舞いが、間違っていたとは思わぬ…」
「マンガス…」
正義…か。
マンガスは己の信念を全うするためにこの計画を実行した。
魔王に、かつて龍の一族を救ってくれた恩を返すという信念を。
色んな人を助けるんじゃなく、誰か一人のために命を懸けて戦い続けると。
それはある意味では正しい考え方で、俺とは違う正義の在り方なのかもしれない。
俺は自分の信念に基づいてマンガスを討った。
それが自分の進むべき道であると信じて。
であればそれは、きっとマンガスにも言えたことなのだ。
マンガスだけが信じる正義が、確かにそこにはあったのだ。
マンガスはふっと笑みを浮かべる。
それは何かを企んだ笑顔ではなく、心から安らいだ笑顔だった。
「さあ…これから何をすればいいのかは、わかっているだろう。
お前は、この国の王なのだから…」
しばらく俯いていた王様だったが、顔をあげて団員たちに指示を出す。
「この者を地下の牢獄に。【魔力の枷】を付けてだ。よいな」
団員たちは敬礼し、そそくさと準備を始めた。
そして王様はバルコニーへと歩きだす。
その大きな背中に、俺たちも続いた。
王様より正式な声明が発表され、開国祭にて起きたマンガス魔法大臣によるクーデター事件は、こうして幕を下ろした。
事前に民間人を避難させることができたために被害も少なく済んだ。
そして数日のインターバルを置いて…再び開国祭が開催された。
今度こそ、永遠の平和が訪れるようにと、願いを込めて…。
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広大な海の真ん中に、異質な雰囲気を漂わせる大陸があった。
空を自由に飛ぶ鳥でさえ、その領域には本能的に近づかない。
うっかり近づいたものは、塵となって消えてしまうからだ。
その大陸の真ん中に、巨大な黒い城が聳え立っている。
天をも貫くような高さを誇る、その城の頂上付近。
玉座の間には、一人の男が、ドクロで飾られた豪華な椅子に座っていた。
そしてその左手の水晶玉には、一人の悪魔が映し出されている。
念の為に潜り込ませた、自分の息のかかった部下である。
『マンガスめがしくじりました。いかがなさいますか』
悪魔が作戦失敗を報告した。
しかし、そんなことは既に男にとってはどうでもよいことだった。
「捨て置け。どうせ奴等は既にその国を抜け出している。
奴等を追い出すことができたなら、その時点で計画は成功だ」
『では、この国は?』
空いた右手で巨大な鳥を撫でつつ、曖昧な指示を出す。
「好きにしろ。暴れ足りん者たちに向かわせる程度でよい」
悪魔は満面の笑みを浮かべた。
『かしこまりました。
…それと、例のもう一つの【降霊術】に関してですが』
「どうした」
『中々素質のある魂らしく、アニムめは非常に気に入っているようですな。
反抗的ではあるものの、順調に身体を使いこなしているとのことです』
何故こちらに報告しないのか…。
そう考えたが、アニムは元々そういうきらいがあったことを思い出す。
いずれ自分の地位を脅かそうと企んでいるのだろう。
愚かなことだ。
どのみち、男はそんな報告をされても興味がなかった。
「そうか。それも好きにするよう伝えろ。
こちらはこちらで奴等を探すのに忙しい。
これ以上そちらを気にかけることはない。
お前がやりたいようにやれ、ディンよ」
『かしこまりました。魔王様の御心のままに…』
悪魔は恭しく礼をし、通信を切った。
魔王と呼ばれた男は無意識に足を揺らしつつ、ワインを飲み干した。
「…奴等め…例の場所を見つけた途端、あの国が攻め落とせぬのをいいことに十年も居座るとはな」
十年前。
魔王にとって忌むべき存在が、あろうことかカスティーラに潜入した。
いずれはそこへ向かう可能性も考えてはいた。
しかしそこに魔物が集中して配備されていては「この国に何がある」と思わせてしまう。
そう考えて比較的手薄にしていたのだが、その隙を突かれたのだ。
その上、奴等の工作によって一年もその事実に気付かなかった。
魔王は怒り狂い、全軍をカスティーラに集結させようとしたが、人間たちの必死の抵抗によってその目論みは失敗に終わる。
そして五年前、東の大陸を指揮する四天王にカスティーラを内側から滅ぼすよう指示を出したが、ろくに成果を上げず方便だけでのらりくらりとやり過ごされたのだ。
このままでは埒があかないと、カスティーラに潜入しているマンガスに直接連絡し、ディンを送りつけたというわけである。
もっと早く行動できればよかったのだが、想像以上に全軍が大打撃を受けたせいですぐに動くことができなかった。
自分さえ自由に動ければ…と魔王は何度も後悔していたのだった。
しかし、今となってはそう焦ることもなかったのやもしれん、と魔王は考えた。
魔王にとって力の根元である、とある封印。
それを奴等に発見されてはならないと思い隠してきたが、無理に隠す必要もなかったのだろう。
封印先から魔力の供給が止まっていないところを鑑みるに、未だに封印の解除はできていないようだからだ。
その封印の解除方法はたった一つ。
光の力と闇の力を全く同一に合わせ、封印箇所に流し込むしかない。
もしかしたら封印を解いてしまうのではないか…と不安になっていたが、逆にこの十年という年月が封印の強固さを裏付けている。
やはり自分の封印魔法は、奴等の力を持ってしても容易には解析できないのだ。
であれば、今まで通り【光の勇者】の芽を刈り取りつつ、連中を追うようにすればいい。
世界の征服などいつでもできる。
脆弱な人間では、魔族には到底敵わないのだから。
「誰にも渡すものか…。
この世界は、私のものだ…!
ククク…ハハハ…ハーッハッハッハ!」
魔王城…デモンラリア大陸に、魔王の笑い声が響き渡った。




