支離滅裂な思考・言動
「今日は晴れですね。」
「そうだな。」
俺は今彼女と公園に来ている。
暑さも小一時間前と比べ比較的和らいだ昼下がりの一時に、俺達は公園で遊ぶ子供達を見つつ木陰のベンチで涼んでいた。
「晴れといえば、私の誕生日は来月だけど…」
「あれ?そうだっけ?」
もうそんなに月日が経っただろうか。
というか、『晴れといえば』という発言が少し気にかかった。文脈からみてなんかおかしい気がするが。
俺は暫く逡巡すると…その発言は一旦無視する事に決めた。
「考えてみたけど…お前の誕生日はもっと先な気がするんだが…。」
記憶力はいい方だし、ましてや彼女の誕生日だ。忘れるなんて事はないと思い、俺は先程の謎発言も含めどうしたのかと彼女に問う。
「君はお肉が好き?」
「…!?こ、こいつっ…」
不味い。これは不味い。何とか彼女の言ったことに本能的な恐怖を覚え、距離をとることができた。だが、何故自分がいきなりベンチから逃げ出したのかの理解ができない。俺は必死についさっきの会話を思い出そうとする。
「確か…。今日は晴れですね。晴れといえば私の誕生日は来月だけど、君はお肉が好き?とか言ってたな。」
そうだっけ?そんなことを言っていたような…。俺はふと、公園で未だ遊んでいる無邪気な子供に目を向ける。
「あー。卵食いたいなぁ。卵といえば昨日の映画観た?あれすっごい楽しかったからあの後焼肉食べたんだよな。」
…?俺は誰に話しかけているのだろう?すると、目の前にいる、彼女が、
「支離滅裂な思考・発言。」
まるで呪文を唱えるかのようにそう言った。
ーこの後この男性の行方は未だ知られていないー