表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神さんと等価交換  作者: ELS
【第二章】死神さんと娘
9/11

【第二章】2.願い

【第二章】2.願い


「お母さん、あのね」


おじさんの事など忘れていたある日、娘がまた言った。


「おじさんが、しばらくいなかったんだけど、戻って来たの」


そう言って、いつもの白い壁を指差す。


「へぇ、おじさんってどんな人なの?」

「こんな細くって、真っ黒。こわいこえ」

「うん……」

「今も居るよ」


そうして、娘はジッと壁を見る。なんだか気持ちの悪いものを感じて、「やめなさい」とも言えなかった。


「何で戻って来たんだろうね」

「わたしがお願いしたからだよ」

「お願いしたの?」


そう尋ねると、娘はにわかに明るくなって言った。


「うん、助けてくださいお願いしますって!」

「そっか。お母さんもお願いしておこうかな」

「それがいいよ」


真っ白なただの壁。大した事もない壁に、私は目一杯の祈りを込めて願った。


「娘を助けてください、お願いします。私はどうなっても構いませんから。どうか娘を助けて下さい」


神様だろうが死神だろうが、なんでも良い。助けてくれると言うのなら、何にでも頭を下げてやる。そう思って壁に向かって頭を下げた。


「助けてくださいお願いします」


私に続いて娘も壁に向かって願掛けをした。

しばらくぼうっと壁の方を向いているので、大丈夫かと心配していたら、急にこっちを向いて笑った。


「良いよ、って言ってたよ!」


そっか。神様か死神さまか知らないけど、娘だけに見えるおじさんが、そう言ったんだったら良かったよ。


「良かったね」

「うん」


紫がかった小さな唇が、震えるようにそう動いた。



……



それでも、日に日に娘の体調は悪くなっていった。

できる事はなんでもやった。食べ物が何が良いらしいと聞けばそれを持って行ったし、神社でお守りもコレクションできるぐらいもらってきた。

白い壁へのお願いも何度もやった!

薬だって手術だって、何度もやった!


でも、それでも。

思ったようにはいかない。

神様か、死神様か、何でも良いから助けてよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ