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【第一章】7.それでも世界は続く
【第一章】7.それでも世界は続く
着慣れないスーツに、ネクタイを締めた。
鏡を見ながら、自分の姿を確認する。
我ながらピシッと決まっている。俺は、今日から大学生になる。
今思い返すと、チョコが亡くなったあの日の事件。家に飛来物が落ちたあの事件。
夢では無かったのかと思う時がある。
人の記憶とは儚いものだ。
あんなに大きなニュースになったのに。しばらくうちの周りはヘリコプターだらけで、うんざりしたものだった。
今では家の跡地も静かなものだ。親父の話だと、あの場所でまた建て替えるらしい。
時計を見る。そろそろいかないとな。
「チョコ、行ってきます」
そう言って、ぱたんと自室の扉を閉める。
机の上のチョコの写真立て、それが僅かに動いたように見えた。