7,犬派?猫派?それとも……らしい
す、すいません更新遅れました(汗)
突然だが、あなたは犬派だろうか? それとも猫派だろうか?
もちろん犬と猫、両方を同じくらい好きという者もいるだろう。
だが、あえて言わせて貰おう。
犬と猫、その両方の内どちらかを選ぶ必要は果たしてあるのだろうか、と。
犬には犬の、猫には猫の良い所がそれぞれあるのだ。
そこに何々派などという無粋な枠組みを持ち込む必要はあるのか?
俺は常々そう感じている。
______なぜ、急にこんなことを言い出したのか?
それは、今から数時間前に遡る______
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「メルシャ、一つ確認したいことがある」
異世界に召喚された翌日、現在はメルシャの案内で、聖王都の外れにある朽ちかけた小屋に泊まっていた。
…………まぁ、異世界に来て初日から野宿じゃないだけマシか……
メルシャが案内してくれた小屋は何というか、端的に言ってボロかった。
外じゃないだけマシというレベルだ。
「?」
今の俺には一つ、メルシャに確認しなければならない事があった。
俺の言葉に首を傾げるメルシャ。
______抱きしめたい
ハッ、危うく本来の趣旨を忘れる所だった。
メルシャの可愛いさに我を忘れていた俺は、先程確認しようと思っていたことを思い出す。
「メルシャ、昨日は忙しくて聞けなかったんだが、メルシャって……何の獣人になるんだ? 耳の形からいって犬の獣人になるのか?」
昨日は忙しくて聞けなかったことを確認する。
メルシャの耳の形からいって犬の獣人だと思うんだが、どうも確信が持てなかった。
何というか、耳の尖り方というか……何か違う気がする。
そんな俺の疑問にメルシャが不思議そうな顔をしている。
「……? 見れば分かると思うけど……。私は狼の獣人、になる」
そんな……狼、だと……。
……有りだな。
「その、触ってもいいか?」
どうしても、揺れる尻尾や耳を触りたいという欲求が抑えきれなくなり、つい聞いてしまった。
「……ダメ。…………耳と尻尾は敏感だから……」
何だ、この可愛い生き物は……
「通報するわよ? ……異世界にも警察に近い組織は存在するのかしら……」
突如聞こえてきた渋川の声に冷や汗が流れる。
「おい渋川、俺はまだ何もしてないぞ」
しまった、と思ったが遅かった。
「……まだ? アンタ今、まだって言ったわよね? つまり、アンタはいずれその子にそういう事をするって予告したようなものよね?」
渋川の冷たい声音に、冷や汗が止まらなくなる。だが、ここで引くことはできない。このままでは俺に、『出会ったばかりの少女に手を出す変態』という不名誉なレッテルが貼られるからだ。
「そういう事? 渋川、そういう事って何だ?」
尋ねると渋川は顔を赤くし、慌てだした。
俺はココが好機だと一気に攻め立てる。
「そもそも俺は、ただ耳と尻尾を触らせて貰おうとしていただけだ。渋川が想像したそういう事とは一体どんな事を想像したんだ?」
言葉に詰まり、「だから、何って……ゴニョゴニョ……」などと小声で聴き取れない声を発する渋川。
____勝った
俺はそう確信した。
「……本当に私の耳と尻尾が触りたいの?」
メルシャが顔を顔を赤らめ、モジモジしながら聞いてきた。
そんなもの勿論決まっている。
「あぁ、一日中でも触り続けていたい」
そう答えた瞬間、メルシャが茹でダコのように真っ赤になった。
「……そんなに触りたいの……? 分かった……触っていい、よ……?」
その言葉を聞いたとき、俺の中で何かが音を立てて崩れた。
モフッモフモフモフ。
______至福
まさしくその一言がしっくりくるほどのモフモフだった。
「……ンッ、ン〜/// そ、そこは……ダメ……ンッ」
触っている間に聞こえてくるメルシャの官能的な喘ぎ声も最高だった。
「フゥ〜、最高のモフモフだったぞ。ありがとなメルシャ。また、機会があれば触らせてほし____」
「このっ、変態ロリコン野郎がァッ! 死にさらせッ!」
俺の言葉は最後まで続かなかった。
言葉の途中で渋川という、般若の拳が唸りを上げ飛んできたからだ。
避けられる速度だが、この拳は甘んじて受けよう……
俺が決意を固め渋川の拳を見ていると、拳が急加速した。
________は?
…………………………ぶべらっ
疑問に感じる暇もなく殴り飛ばされた。
今、明らかに拳の速度と威力がおかしかったんだが……
渋川に尋ねてみようと顔を上げると……
____そこには、次なる拳を放つ寸前の般若がいた。
俺の記憶はそこで途切れた。
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「つまり、あの頭がおかしい程の速度と威力のパンチが渋川の能力なのか?」
あれから数時間もの間、気絶していた俺は目がさめると直ぐに渋川に問い詰めた。
____あれは、何なのだ? と……
それに対して渋川はケロッとした様子で、
「あぁ〜、あれね。なんか私の能力らしいわよ?」
らしいわよって……
普通そういうのって、もっと大事な局面とかで覚醒したりするもんじゃないのか!?
俺の能力が覚醒した時とか、まさしくそんな感じだったじゃん!?
それを……こんなしょうもないところで覚醒させるなんて……
……こめかみが痛くなった。
「あ、あのぉ、渋川さんや。そういうのって普通、誰かを守る時とかピンチの時とかに覚醒するものでは?」
「 ? 何でよ? ピンチになる前に能力を使いこなせるようになってた方が圧倒的に有利だし、安全じゃない。違うの?」
渋川の正論にぐぅの音も出ない。
「……はい、その通りでございます……
____それで、渋川はどんな能力だったんだ?」
俺の中二的ロマンは置いておくとしても、渋川の能力は確認しておかなければならない。
メルシャは所在なさげに小屋の隅に座っていた。
(あまり、気にしなくてもいいのにな……)
メルシャのことも大事だが渋川の能力についても大事なことなので渋川の言葉に耳を傾ける。
「えと、能力の名前は大敵殲滅っていう名前みたいね。発動条件は『怒る』ことで、効果は、怒りに応じて力を増幅し使用者の敵を滅する……らしいわ」
…………はい?
何だその物騒な能力は……
つまり『渋川を怒らせること=死』ということか? ……洒落にならん……
顔からサァーと血の気が引くのを感じる。つまり俺は先程、渋川の能力が付与された拳を二発も受けたということだ。
俺は全国の男子高校生の平均ほどの身長と体重だ。
それを、目の前で腕を組んで、首を傾げている女は気絶するほどの威力で殴り飛ばしたのだ。
渋川の話を信じるとするならば、それはつまり能力の加減が効かないということであり、下手をすれば俺は先程のパンチでぽっくり逝っていたかもしれない、ということではないか?
頭に過ぎった疑問を解消するべく、俺は慎重に渋川に問いかける。
「し、渋川さん? それはつまり能力の加減などは……?」
俺の縋るような問いは、しかし……
「できるわけないでしょ? 怒りの度合いで能力の強弱が決まるんだから。感情の強弱なんて私につけられるわけないじゃない」
渋川の言葉に表情が引き攣った。
「……参考までに聞きたいんですけど……さっき俺を殴った時の怒り具合などは……?」
そこで渋川は顔を逸らした。
「……そこまで本気で怒ってなかったわ。ただ、『この変態を殴りとばしたい』くらいにしか思ってなかったもの。そう思ったら急に能力の使い方が分かって、試しにアンタに使ってみた、ってわけ」
俺は言葉を失った。
つまり渋川はどれほどの威力かも分からずに、俺で試したのか……?
流石にカチンときたので渋川に一言、物申そうとしたところでメルシャが間に入った。
「……待って。……シブカワはあなたが気絶した後、やり過ぎたと心配していた。私もアレはやり過ぎだと思うけど、逆に考えればそれだけあなたを信用していた、とも考えられる」
メルシャの言葉を聞き、そうなのかと渋川の方を確認する。
渋川は若干、頬を染めながら俯いていた。
「……私だってアレはやり過ぎだって思ってるわよ……アンタ頑丈だから大丈夫かなって思ったのよ。……まさか気絶するなんて思うわけないじゃない」
渋川の言葉を聞いた俺は、思ったことを一言、
「なぁ、これから行動を共にするんだろ? それなら俺のことはカイトでいい」
渋川は上目遣いでこちらを一瞥し、
「…………怒らないんだ……
______なら私のこともカスミでいいわよ。」
渋川……カスミのことは、『俺に告白してきた女子の親友』ということくらいしか知らない。だがこれからは、この国を出るために嫌でも行動を共にしなければならない。
それで距離が遠過ぎるのは問題だろう。
「あっ、もちろんメルシャもカイトって呼んでいいぞ」
「私のこともカスミでいいわよ」
俺たち二人を順に見たメルシャは顔を赤く染めながらも、嬉しそうにしている。
____瞳に悲しみの色を浮かべながら____
「……ありがとう。カイト、カスミ。あなた達二人に会えて本当に良かった。
…………私のことはもう忘れて…… 」
どういうことだ? そう問いかけることはできなかった。
何か鈍器のような物で殴られた。
そう感じた次の瞬間……
______目の前が暗転した。
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