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異世界にはロリコンという概念が存在しないようです  作者: 乃酢来蛇
序章:ロリコン×異世界〜邂逅編〜
3/11

3,カーマンエール聖王国です


「お主らを呼び出した理由、それは、



______異世界、アクセリムを救って欲しいからなのじゃ」



 幼女神がそう言葉にした時、俺と渋川は言葉を失った。

 考えてみて欲しい。平和な国に住むただの学生に世界を救えるだろうか?


____どう考えても不可能である。


 そんなものはフィクションの世界の話だ。

 幼女神がアクセリムを何から救って欲しいのか定かではないが、普通に考えて無理としか言いようがない。

 俺は一瞬考えたが、幼女神の頼みを断ると決めた。

 やはりただの学生には荷が重すぎる。


 渋川の方を見てみると、同年代のなかではかなり可愛い部類に入るだろう顔を、青を通り越して青白くさせていた。

 渋川は、そんなはずはない……と、恐る恐る確認するように幼女神に尋ねた。


「あの、女神さま……もし、その話を断った場合は元の世界に返して頂けるのですよね?」


 渋川のその言葉を聞いた俺はいつのまにか自分が、元の世界に帰る、という選択肢を既に自分の中から省いていることが分かり驚いた。


 元の生活に不満があったわけではないのだが……考えるのは後にしておこう。

 ひとまずは、幼女神の頼みを断った場合、元の世界に戻してもらえるのかどうかだ。

 幼女神は渋川の話の途中から、とても申し訳なさそうな顔をしていた。

 渋川はその様子を見て察したのか、その顔から生気が抜け落ちた。


「………………すまんがそれは無理、なのじゃ。不可能と言い換えてもいい……。お主らを召喚したのは、あくまでもアクセリム側……わしがこうして干渉できていること自体が奇跡に等しいのじゃ」


 案の定、返すことが出来ない旨を告げると幼女神は頭を下げた。


「すまぬ、お主らが理不尽に感じるのはわかる。いきなり平和な日常を奪われた怒りは途轍(とてつ)もなく大きいじゃろうて……しかし、既にアクセリムに行くことは確定しておるのじゃ。それを踏まえて先程の頼みじゃが……」


 幼女神が顔を上げたので、俺は断ろうと口を開こうとするが幼女神が手左を前に突き出してきた。

 どうやら、まだ話には続きがあるようだ。


「まぁ待て。そう逸るな。話しにはまだ続きがあるのじゃ。最後までわしの話を聞いてはくれんかの?」


 俺はその言葉に対し首肯する。

 渋川も顔色は悪いままだが聞く意思はあるようだ。

 幼女神は一つ頷き続きを話し始めた。


「お主らが召喚される国の名はカーマンエール聖王国という。……まぁ、聖王国など名乗っておるが内情は先も述べた通り悲惨の一言につきるのじゃ。ここで話の続きじゃが、お主たちには聖王国を離れ行動を共にして欲しいのじゃ。もちろんお主らの意思を最大限尊重するが、ダメかのう?」


 ダメかのうって……渋川香純は夕波奈美をあんな風に振った俺を絶対に許しはしないだろう。


 ______放課後、校舎裏に呼び出されそうに……っていうか、本来こんな異常事態にならなければ実際呼び出されていたしな。


 俺も別にそんな女子と行動を共にする趣味はない。

 断ろうとした俺だったが、それよりも早く今まで黙っていた渋川が聞いた。


「私とコイツが一緒に行動するだけで、そのアクセリムという世界は救われるんですか?」


 渋川は元の世界に帰れないと聞いて傷心していたが、うまく切り替えたようだ。

 幼女神は渋川の懐疑的な質問にフッと笑った。


「それは確かじゃ。特に意識せずとも二人で行動を共にすれば、特別なことは何もせずともよい。ただ、トラブルに巻き込まれやすくなってしまうが、その代わり二人いれば一人でいるよりも盗賊や魔物に害される心配が減るのじゃし、世界も救われる。まさに一石二鳥じゃな!」


 幼女神はそう力説したが、納得はできなかった。


「むぅ、強情じゃのう……ならば今なら特別に、わしの頼みを聞いてくれるのならば、お主らに最も見合った唯一無二のオリジナル能力を授けよう。どうじゃ? 常に命の危険が付きまとうアクセリムにおいて生存率が大幅に向上するのじゃぞ? さらにさらに、神であるわしの加護までつけるのじゃ! これ以上ないくらいの大盤振る舞いじゃろ!?」


 幼女神の中ではもう了承されることが分かっているのか、やりきった顔をしている。

 …………一言も了承した覚えはないのだが。


 しかし、俺としてはこの幼女神の頼みは受けてもいいと考えている。


(_______幼女の頼みだからではない….....…断じてない……)


 何せ、右も左も分からない異世界で何の力もなく生きて行けるとは到底思えないからだ。

 それに幼女神が言った通りならば、俺たちが召喚される国はまともな国ではないだろう。つまり、単独で国を出ても安全である保証はどこにもない。

 盗賊や魔物が闊歩(かっぽ)する世界らしいので戦う力は必須だろう。さらに言えば、力を持っていて最低限の信用が置ける人物がいないと厳しいはずだ。


 しかしながら、この頼みは俺だけ了承しても意味がないのだ。

 幼女神の頼みを聴くには渋川が了承する、あるいは了承してもらうことが絶対条件だが、そんなことは無理だと分かりきっている。

 内心ため息を吐きながら渋川の方を見てみると、あちらもこちらを見ており目があった。


「アンタはどうするべきだと思う?」


 不意に渋川が尋ねてきたので、嫌がられる前提で俺の考えを話した。

 渋川は考える仕草を見せ、()()()()と頷いた。

 そうだよな……やっぱり嫌いな男と一緒に行動するなんて………………


_______ン?


「すまない渋川。よく聞こえなかったんだが、もう一度言ってくれないか?」


 確認の意味を込めて尋ねてみる。

 ……もしかしたら聞き間違いかもしれないしな。


「はぁ? ロリコンのくせに聴力までカスとかマジで終わってんじゃない?


______もう言わないからね、アンタと一緒に行動するって言ってんの。わかった?」


 …………ロリコンは関係ないと思うんだが……

 兎にも角にも、何の気まぐれか渋川は幼女神の頼みを素直に聞くらしい。

 渋川が了承するんなら俺も当然了承だ。

 心を読んだのだろう幼女神が頷いた。


「うむ。礼を言うのじゃ()()()()()


……………そろそろ時間のようじゃな。では、またの。もう会うことはないかもしれんが達者でな。能力や加護はアクセリムに転移した時点で付くように設定したのじゃ。安心するがよい」


 幼女神が教えていないはずの名前を呼んだが、心を読んで知ったのだろうと一人で勝手に納得した。

 能力や加護とやらも向こうに行けば既に付いてる状態らしい。

 ただ、時間制限があるのなら最初に言ってほしかったが。

 そう思いながら、これから行くアクセリムという名の異世界に想いを馳せ____





------------------------------------------------------





 ________目を開けるとそこは、中世のヨーロッパのような風景が広がっていた。





______見たことがない大きさの煌びやかに広大な広間を照らすシャンデリア


______周りには剣を携え鎧を纏った騎士のようなものが大勢


______極め付けは、正面の高価そうな椅子に偉そうに座ってこちらを見ている豚のように肥えた男


 その男は、王冠らしきものを頭に被っている。

 周りも男の周辺に常に気を配っているように見えるので、あれがこの国の王だろう。


 ふと周りを見回せば、俺と渋川以外のクラスの面々に担任の中年女教師もいる。

 状況が理解出来ていないのだろう。俺と渋川以外は皆、不安そうな顔でキョロキョロしたり、友達と「テレビのドッキリ番組か何かかな」、などと様々な反応を示している。

 その中に見知った顔があった。


「よっ、海音。しかしこれ、随分大掛かりだけど何の撮影なんだろうな?金とかスゲ〜掛かってるんだろうなぁ」


 岩田だ。しかしその言葉とは裏腹に、その声は不安を隠せていなかった。


「ドッキリにしては、手や金が掛かり過ぎな気はするが……どうだろうな」


 恐らくここは幼女神が言っていた、異世界アクセリムにあるという”カーマンエール聖王国“だろう。

 しかし、現時点でそれを知っているのはおかしいので俺も、何も知らない振りをする。

 渋川も恐らくだが大丈夫……なはずだ。

 知らないはずのことを知っているというのは、集団の中に置いては特に異質に映るはずだ。

 ここは目の前の、誰かがコンタクトを取ってくるのを待つのがベストだろう。

 そんな事を内心考えていると、やっと周囲に変化があった。

 王らしき人物がなにか喋るようだ。


「異界の勇者たちよ、ようこそアクセリムへ。我輩はこの栄えある国、カーマンエール聖王国の王。ミウメーガ・カーマンエールである。お前たちは運がいいぞ何せこの我輩が治める()()()()()()()()()()()()()として戦うことができるのだからな。誇りに思っていいぞ」


 生徒たちの間に流れた空気は____困惑である。

 それもそうだろう、未だ生徒たちは自分たちがどういう状況か把握出来ていないのだ。


 しかし、幼女神が言っていた通り本当に自分勝手だな。

 あんな傲慢の塊みたいなあんな人間初めて見たぞ。


 豚のような聖王、ミウメーガを観察していると状況が動いた。


「勇者の皆さまは、陛下のお言葉を拝聴し感激なさっているご様子。陛下、後の詳しい説明はこの文官統括である私めにお任せください」


  聖王の横に控えていた陰険そうな顔をした男が一歩前に出ながらミウメーガに進言した。


「ライニークか……うむ、任せたぞ」


「ありがたき幸せ」


 クラスの面々が状況について来れてない中、ライニークと呼ばれた男がクラスの面々のすぐ目の前に来た。


「ライニーク・ウーモンと申します。皆さまは、この世界。アクセリムについて何も知らないとお思いますので、私が説明致しましょう」


 ライニークと呼ばれた男は、陰険な顔で笑みの形を描いた。




 海音は、この国を抜け出すのは一筋縄では行かなそうだなと、直感がそう告げているのを感じていた。






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