1,人気のあの娘からの告白です
拙い文ですが、精一杯書くので応援して頂けるとありがたいです!!
「好きです付き合って下さい!」
春の陽気が見え隠れし始めた、2月中旬のある日。
大きいとは言えないが、改修したばかりで綺麗に見える田舎の公立高校の放課後の教室。
平日のため部活動に行く生徒がほとんどであり、空いた窓からは吹奏楽部の演奏が聞こえてくるなか、一人の女子生徒が愛の告白をしていた。
その一面だけを切り抜けば、そこら辺に掃いて捨てるほどある青春の一幕だろう。
……その女子生徒の容姿以外は。
濡れ羽色の長く艶のある髪に、愛嬌のある目、全国の女子高生の平均を軽く超えているだろう胸、くびれた腰に、程よく付いた筋肉。
人通りの多いところを歩けば、10人中9人が振り返るであろう可愛さだった。
返事を聞くのが怖いのか、その鮮やかなブラウンの瞳は少し潤んでいた。
そんな、全国の『彼女がいない歴=年齢』の男共が見れば血涙を流し出しそうな青春の一幕。
「悪いけど無理だ」
しかし、相手の男子生徒はそんな美少女の告白をにべもなく断った。
「どうして!? 私の何がいけないの? 私、ずっと井上くんのこと好きだったんだよ?」
まさか断られるとは思っていなかったのか、女子生徒は、その美しい顔を悲痛に歪ませて男子生徒を問い詰めた。
しかし、件の男子生徒は、さも当たり前のような顔で
「だって君、幼女要素ないだろ? 胸も乳牛かよっ! てくらい大きいし……3次元だし……うん、守備範囲外だ」
と、告白を断るにしてもあまりにあんまりな一言を発したのだった。
「…………………………ぐすっ、な、なんでそんな酷いこと言うの……?」
最早、女子生徒の顔は涙と鼻水でくしゃくしゃだった。
「だって俺、未成熟な女の子にしか興味ないから」
その瞬間、いつもと代わり映えしない放課後、そこに女子生徒の悲痛な叫び声が加わったのだった。
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「いやぁ、まさかクラスで一番人気の夕波ちゃんの告白を断るとは……相変わらずこじらせてんな」
そう言って俺、井上海音に話しかけてきたのは、中学時代からの腐れ縁である岩田三成だった。
「だから……俺は言っているだろう? 女は未成熟な子以外は興味が無いって、さらに言えば______ 」
今は平日の朝であり、通学路を歩いて学校に向かう途中だ。
話題は昨日のクラスの男子人気ナンバーワンである夕波奈美の自分への告白だ。
しかし、岩田はその答えを予想していたのか、機先を制するように、
「2次元なら尚よし、だろ?」
さすがは中学時代からの腐れ縁とでもいうべきか、岩田は俺が答えるよりも早く俺が言おうとしたことを言ってきた。
「あぁ、よく分かっているじゃないか」
俺がそう言うと岩田はなんとも言えない顔でため息を吐く。
「そりゃ、中学時代からの仲だしな。…………それに、お前がそうなった原因も知ってるからな……」
岩田の後半の言葉は普段より小さい声だったこともあり、よく聞こえなかったが、あまり大事なことでもないだろうと深く考えずに学校までの道のりを雑談しながら歩いたのだった。
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「つまり、小さい女の子こそ至高なんだ」
「結局そこに行き着くのか……」
学校に到着してからも、岩田と好きな女子のタイプ談義を交わしていたら既に教室の前まで来ていたようだ。
ちなみに、岩田とは中学の頃からずっと同じクラスだ。
現在、俺と岩田は高校2年なので中学1年の頃から約5年ものあいだ同じクラスということになる。
そのせいか、岩田とばかり話していたら、交友関係が悲惨なことになっていたが止むを得まい。
そんな取り留めのないことを考えながら教室の引き戸を開けると、あと数分程でホームルームが始まるからか既にクラスメイトの9割程が教室内にいて、各々の席の周辺で雑談を交わしていた。
引き戸を開けたせいか、クラス内の声が少し小さくなったが、俺とすぐ後ろにいた岩田をちらりと一瞥すると直ぐに興味を失ったかのように各々のグループが雑談を再開させていた。
「特にクラス内で変わったところはないみたいだな……」
自分でもあの振り方はやり過ぎたかな、と海音自身も若干ではあるが罪悪感を感じていたため、最悪の場合クラス内に夕波奈美が海音の性癖を言いふらすことも危惧していたが、杞憂だったようだ。
「夕波ちゃんは、クラス内の女子の中でも特に優しいと評判だからな」
海音の小声で言った独り言に反応した岩田が小声で囁いた。
「お前は、よくそんなことまで知っているな……」
俺が疑問を口にすると
「海音が気にしなさすぎなんだよ」
呆れ混じりな声で、そう返された。
「興味がないからな」
それだけ言って自分の席に向かって進み始めると、岩田も自分の席に向かった。
岩田とは席が反対側なので、自然と離れていく。
そして、まるで俺が一人になるタイミングを見計らっていたかのように、雑談していた女子グループの内一人の女子生徒が俺に近づいてきた。
「なんだ? なにか俺に用か?」
俺が端的にそう問うと、近づいてきた女子生徒は瞳に怒りと軽蔑の色を浮かべながら、
「放課後、体育館の裏に来なさい」
小声でそんなことを言ってきたので
「いやだ、と言ったら?」
問い返すと、女子生徒は冷たい微笑を浮かべながら
「断るんだったら、あなたが重度のロリコンだということがクラスに知れ渡るだけよ?」
証拠がない、そう言おうとした所で、女はブレザーの内ポケットからICレコーダーをちらつかせていた。
そこで俺は、昨日の告白がタチの悪いイタズラの類だったのでは……? と思い至り
「はじめから俺を嵌める気で仕組んだのか?」
努めて冷静を装い問う。
「まさか、そんなことする理由がないもの。あの子は本気でアンタのことが好きだったわよ。私は昨日の放課後、教室に忘れ物を取りに行った時に偶然アンタと奈美の2人が見えたから隠れて様子を見てたのよ」
まさか、あんな事になるとは思ってもいなかったけどね……。
一瞬だけ悲しむような仕草を見せたが、すぐにこちらを怒りのこもった瞳で睨みつけてきた。
「いい? 絶対に誰にも言わずに一人で来なさい。来なかったら……クラスの皆がこの録音した音声を聴くことになるからね」
念を押すようにそれだけ伝えると、女子生徒は自分の席に戻って行った。
どうやら、既にホームルームが始まるらしく、雑談していたクラスメイト達は全員、自分の席に着席している。
この面倒ごとの発端、夕波奈美も座っているのが見えた。
俺もすぐに自分の席に着くと、すぐに担任の女教師がきてホームルームとなった。
「皆さん、おはようございます。これからホームルームを始めます」
余談だが、クラスの担任はつり目の中年女性で、とても厳しいと校内で有名である。
かくいう俺や岩田も苦手な教師だ。
ホームルームもつつがなく終了し授業が始まったが、俺はどことなく上の空だった。
理由は言うまでもなく放課後の呼び出しだろう。
授業中に棘のある視線がどこからか刺さってきた気がするが、一々気にしないことにした。
ちなみに、俺を呼び出した女子生徒は、渋川香純という名前であり、件の夕波奈美の親友とも言える存在らしい。(※岩田調べ)
「……はぁ、憂鬱だ…………」
放課後まであと数十分ほどしかないからか、クラス内のほとんどが弛緩した空気だったが、俺は陰鬱な雰囲気を纏っていた。
ついでに言えば例の渋川香純がこちらをガン見していた。
…………そんなにガン見しなくても別に逃げないのに……はぁ
何故時は進むのか、たまには止まればいいと思うがしかし、時が止まる訳もなく
____数十分後、放課後を告げるチャイムが校内に鳴り響いた。
俺は気が進まないなか、呼び出しに応じるべく重い腰を上げようとした…………瞬間。
──────教室内を目も開けられない程の光が支配した。
読んで頂きありがとうございます!!
読んでくださる方が面白いと感じて頂けるとよう精進したいと思います!!
ブクマや評価をしてくださると有難いです!!(※作者が感動して泣きます)