第03話 - 地獄の生活1
入社してから半年が経った。
合格点を貰えて研修期間が終わり、仮配属とはいえ業務に携わっている者もいれば、様々な理由で区切りを付けたのか、最初に雑賀さんが言った通り、数人かは姿を見せることはなくなっていた。
俺はというと、期間ギリギリだったがなんとか合格点を貰えて、怒涛の研修期間が終わった。これから仮配属期間に入る。まだまだ半人前だが、これから頑張れば正当に評価されていくだろうと、この頃はそう思っていた。
あれから半年後。入社してから丸1年が経った。2年目に入ると、新入社員の肩書きは無くなり、忙しい日々を送ることになった。
それが、今は、というと。
「おい、川崎! お前早くさっさとしろよ! お前はこの業界の中では新参者で仕事が遅いんだからな! 迷惑が掛かるのはこっちなんだよ! おい聞いてんのか!?」
と言った具合に、先輩方からの全くありがたくないお叱りを受ける毎日。自分自身の生活のため、空元気を出し、それなりに仕事をこなして行くしか道はないのだから。思考を切り替えて、声を張り上げる。
「はい! すみません! ただ今!」
研修期間、仮配属、本配属と経て組織の一員として働き始めて早1年半。俺から見て3年上の先輩が指導員として俺に仕事を教えてくれる。くれるのだが……。
実はこの先輩が曲者で、仕事に関することとか、プライベートの話をしているときに直感でハズレを引いたと気付いた。さすがにこんなんじゃまともに仕事出来ないし、周りの人に迷惑をかけるだろうから先手で「この人の下で動きたくないです」みたいな事を直属の上司に相談した。まさかこれが悪手だとは夢にも思わなかった。
「それはお前から見たら、だろ。部署内でそんな話は全く聞かないし、他部署からもその話は聞いてないぞ」
の一点張り。何とありがたくない話なのか。
話のスジを通すために他部署に相談する訳にもいかない。どうしてこうなったんだととても困っていた。
「お前また上(司)に相談したらしいな? そこまで言うならお前1人でやってみろ。俺からはもう一切教えない」
と逆ギレで返されたもんだ。
今さらながら、世間で言われてる上司ガチャのハズレを引いた上に、いざフタを開けてみれば世間で問題になっているブラック企業だった。もれなくパワハラとパワハラ上司も付いてくるというオマケ2つ付き。
毎日残業が当たり前。定時で上がれたのは入りたての研修期間のころだけだった。家に帰り着くのが日付が変わることも増えた。
家に帰り着いて、何もやる気が起きず布団にダイブして、気付いたら寝ていて。起きたらすぐ会社に向かう毎日。安易な考えで就職するものじゃない、と今さらながらに後悔していた。この道を選んでしまった以上、もう遅いのだが。
こんなありがたくない日々が続くと、人間、やつれていくのは時間の問題だった。食べ物が喉が通らないほどになったこともあった。気付いたら、俺自身自覚する程に痩せていた。
休みはあるにはあるが、その休みは睡眠時間として使い切る。自分の趣味の時間が全く取れず。そのせいでお金は貯まっていく一方。使うタイミングがほとんど無いのが現状。
おまけにやつれているのを自覚しているからか、行動力がさらに落ちている。何もしたくない。何も動きたくない。周りから見たら「こいつ死ぬんじゃねーの」と思われていそうな、そんな状態だった。
【初版】2022/10/14 13:00 (予約投稿)
短めですが、区切りがいいので投稿します