トンカツ定食を注文するのは、「ちゃんとしたもの」を食べたい時
――以下、俺、ユウタの言葉については引用符を省略する――
正直言うとさ、俺はいま「どちらかと言えば改憲派」なんだ。
安保法制のときにさ、国会前で「ドドンガドンドン」やってたでしょ?
あれ見てさ、護憲派には申し訳ないけど、正直なところ。
「護憲派って気持ち悪い」って思ったんだ。
デモが悪いとは言わない。大切なことだと思う。
でも怒鳴ってののしるばかりで、まともな議論が聞こえてこなかった。
「ユウタ、それはお前がちゃんと見ていないからだ。議論の場ではきちんとした話をしてるよ?」
「いや、キーパー。議論の内容もお粗末だった。それに見ている人をどん引きさせるようじゃ、そもそもデモをする意味がない。逆効果じゃないか。……だいたいお前が院進を決めたのも、あのデモに参加したからだろう?『あれは無い』って思ったからだ。違うか?」
でもさ、アクセル。
やっぱり改憲派には申し訳ないけど、正直なところ。
改憲派の集会も大概気持ち悪くないか?
それに。
「護憲派はおかしい」と思って、例の改正草案を調べてみたらさ。
グーグルの下の方に乗ってる「ふたことめ」が「問題点」と「やばい」だもん。
実際、ちょっと見ただけでもあれはないでしょ。
なあアクセル、お前は改憲派だろうけどさ。
あの草案で良いのか?本当に良いと思ってるのか?
「ドドンガドンドン」と変わらないよ。
老若問わず、お仲間は盛り上がるだろうけど、外に広がるようには思えないんだ。
強烈に主張する人以外は、おいてけぼりだ。
聞こえてくるのは、論者の「立場」ばかり。
ただ頭数を増やそうっていう、扇動ばかり。
ゼロベースで考えさせてくれるような議論って、少なくないか?
憲法論議に興味を持ってもらおうと思って、かえって人を遠ざけてやしないか?
最初っから同じ「信仰」を有する人じゃなくて。
「違う」って思っている人、「知らない」って言っている人。そういう俺たちとしては。
ゆっくり穏やかに、「考える材料だけを提供してもらいたい」と思わないか?
そう言うと、「勉強会」とか何とか、「最初っから立場が透けて見える」ような「信者の会」がぞろぞろと。
「材料だけ渡すふりして、その材料にバイアスがかかってる、誘導している」ような真似をするんだけど。
いや、当たり前って言えば当たり前の話だとは思う。
誰にだって立場はある、「色」もあるんだから。
「無色の人間なんていないんだから、むしろハッキリ立場を示すべきだ。そのほうが正直だ」って言えるのかもしれないよ?
でも色がついてる集会って、怖いじゃん。参加しにくいじゃん。
分かってる。こんなのは青臭い議論で。
決まる時は冷静さなんて関係ない。勢いで決まるんだ。
だったら勢いを煽って押し切っちゃえってのが「政治」だろ?
でもさ、俺たちは、国民は、そこまで簡単に動くものかな?
最近の選挙とかの傾向を見て、基本「煽れば何とかなる」って、どっちもそう思い込みすぎてないか?
小選挙区とは話が違うから、そう簡単には行かないと思うんだけどな。
改憲派が5割を越えていても、その中には「きちんとした改憲案であれば」という留保をつけている人、けっこういると思うんだ。
護憲派が「振るわない」のは、「やり方に問題があるから」じゃないのかな。
反知性主義だとか取り沙汰されているけれど。
護憲も改憲も、めんどうな議論を重ねてみる気はないのかな。
めんどうな議論でも、聞いている人は絶対にいるはずだ。
「これ読んでみ」って、家族や友達に勧める人も。
「憲法」の名を冠することができる草案を出してください。
「なぜ反対か」を、拡声器を使わずに説明してください。
本当は、国民ひとりひとりがやらなくちゃいけないことかもしれないけれど。
それもなかなか難しいから。
どうか、お願いしたいんです。




