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美容サロン【金の靴】

作者: たってぃ

 まぁ。珍しい御客様ですね? ようこそ。美容サロン【金の靴】へ。えぇ。金の靴はグリム版のシンデレラから。ガラスの靴では脆すぎますからね。はぁ、テレビ局で【芸能人の駆け込み寺】としてのうちの評判を聞いてですか…。まったく不本意ですよ。美を磨く人々の為にこのサロンを作ったというのに、その逆もできると分かるや否や。本当に、ヤレヤレです。一応人助けになっているからやっていますが。個人的な復讐や犯罪には手を貸しませんのであしからず。


 噂を聞いたのだ。美貌を損なう事なく【ただ魅力だけ】を奪う事が出来る美容サロンがあると。その為に、芸能界から綺麗に足を洗いたい人間が、先生の施術を受けによく訪れるのだと。曰く【ファンにストーカーをされて、耐えられなくなった】【自分の才能にぶち当たり、これ以上この業界に居るのが辛くなった】【元の日常に戻りたくなった】。理由はそれぞれ。知らない人間が見たら「年齢による衰え」「時代遅れ」「ただ単に飽きた」と、納得し、別の興味対象を見出す。真実は先生の施術で魅力が奪われたと知る由もなく。

 なんでも先生は、魂を見る事が出来て魂の状態からベストな施術を行う事が出来ると。美貌を奪うのもその応用だと聞きました。

 話をしていて確信しました。私を助けてくださいっ! 見知らぬ男性に一方的に殺意を向けられて困っているんです。男は私を消す為なら、地の果てまで追ってくるそうです。先生のお力で周囲の景色と溶け込むくらい、私から魅力を取って、あの男の魔手から私を救ってくださいっ! お願いしますっ!

 お断りします。私は貴女には手を貸しません。すみませんね、元トップアイドルの××さん。撮影中の事故で命を落とし、未練からか、その後事故が起きたスタジオに姿を現す…。まぁ、姿を現せる程度なら、「あの男」…除霊師の方から助ける事も考えましたが、貴女が霊障で再起不能になったアイドル達の中に、当サロンの本当のお客様がいらっしゃったのですよ。たえてたえて、努力に努力を重ねてデビューした後も、自分磨きに余念がなかった。まるで、シンデレラのように本当に良い子たちでした。貴女は事故死となっていますが、顛末はライバルを奈落へ突き落とそうとして落っこちてしまったのでしょう? 此処は芸能人の駆け込み寺。こういう業界の裏話が嫌でも入ってくるのです。

 貴女は除霊師から逃れた後も、人を呪い続けるでしょう。私には見えるのです、貴女の魂の色は穢れに穢れを重ねて汚らしいドブ川の色をしています。手を貸す訳にも、見逃す訳にもいきません。

 ふふふ。断ったら私を祟ろうとしたのでしょうが、軽率でしたね。魂を見る事が出来る人間が、どうやって美貌を奪えるか考えなかったのですか? あぁ。ずっと人を呪い続けていたから、そこまで深く考える事が出来なくなったのでしょうね。


「人体にツボがあるように、魂にもツボがあるのです。私は、魂のツボを刺激して相手の美貌を封印しているのですよ」

 そう言って、先生の手が伸びる。私は当然幽霊だから、先生の手が私の体を突き抜ける形になるのだが。

 あ…あぁ…あああああああああっ!!!!

 突然体中に激痛が走った。そんなっ。私は死んでいた筈だ。

「サロンを開く以前は、能力を伸ばそうと世界中で修業をしていました。そこで見つけた霊魂破壊のツボです。魂が不滅の存在だと誰が証明しました?」

 私を見上げて不敵に笑う先生。

 いや。止めてっ!

「貴女は既に死んでいます。…と、神谷明風に言ってみます」


【了】

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