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第5章 最後の夜-3

 明日に備えてしっかりと睡眠を取る。

 母さんはそう言ったけど、みんな各自の部屋で眠れない夜を過ごしているのだと思う。

 僕はベッドに寝転んだまま、窓から夜空を眺めていた。

 虫たちの大合唱が聞こえてくる。

 真っ暗な闇の中で月が明るい光を放っていた。もう何時間こうやって月を眺めているだろうか? まん丸に見えるけど、満月は明日らしい。そういえば、大人になったら月に行ってうさぎといっしょに餅つきをする、っていう理由で宇宙飛行士を目指していた幼少時代もあったなぁ。

 今の僕は母さんと同じ道を目指している。体だけじゃない。心の病も治せるような医者になりたいと思っている。

 だから、僕は……。

 この先は考えたくなかった。

「不安でたまらないといった顔だな。何なら今すぐここで私が封印を解いてやってもいいのだぞ」

 剣呑なセリフと共に、麗鈴が窓から僕の部屋に侵入してきた。

 驚愕した僕は思わずベッドから滑り落ちる。

 普通に入ってくることができないのか、この子は。っていうか、窓開けておいてよかった。また蹴破られて侵入されたのではたまったものではない。

 あれ?

 診療所のベッドにくくりつけられているはずの麗鈴がどうしてここにいるんだ? しかも、寝巻きではなくちゃんと自分のチャイナ服を着ている。

「霊力が回復すれば勇兄さんの術を解くくらい造作もないし、服や剣も探し出せる」

 麗鈴がふんと鼻を鳴らした。

 茅結さんといい麗鈴といい、どうして僕が思っていることに即答できるんだろう? 僕って思っていることが顔に出やすいタイプなのかな?

「勇兄さんに聞いたのだろう? 再封印は十五夜に行う、と。不本意だが、再封印を確実に成功させるためだ。私も今日はお前に手は出さない」

 勇さんを竹林に案内した時に教えてもらった。

 本来、《渾沌》の再封印の儀式が十五夜の日に竹林で行うのだ、と。竹は清浄な植物とされていて、地鎮祭などでも使われている。そして、十五夜は自らの能力を最高潮にしてくれるらしい。

 竹と月。僕はその話を聞きながら、竹取物語を思い出していた。光り輝く竹から生まれた女の子が美しく成長して月に戻っていくという、日本最古といわれている物語だ。

「だが、お前に逃げられると元も子もないので、見張らせてもらうことにした。今夜は安心して寝るがいい」

 麗鈴は皮肉たっぷりに口の端を吊り上げた。

 と。

 ぐうぅ。

 夏の虫とは違う虫の音色が聞こえてきた。

 麗鈴の表情から一瞬にして冷徹な笑みが消え去った。頬を朱色に染め、狼狽する。

 この二、三日まともに食事を取ってなかったんだろうな。

 僕はホワイトボードに書き綴った。

『ちょっと待ってて』

 すると、麗鈴が怪訝な表情を見せた。

「私は日本語はしゃべれても読むことはできない」

 僕はガックリと肩を落とした。

 麗鈴も千里眼さんと同じだった。でも、紫に通訳を頼むわけにはいかないし、どうしたらいいんだ?

「声が出なくてもいい。口を動かせ。私には読唇術の心得がある」

『ちょっと待ってて』

 僕は口パクすると、階下へ下りていった。




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