7話
吉田は、友香の入れたコーヒーを飲み、しばらくすると帰って行った。
それと、同時ぐらいに、翔太が帰ってきた。
「あ、おかえりー。」
「今、男いただろ?」
「あ、吉田さんのこと?」
「誰だよ、そいつ?」
「あ、昨日夕飯食べるときに知り合って、今日買い物の荷物運ぶの手伝ってもらってたの。」
友香は新しい鍋を翔太に見せる。
「この大きさなら、翔太も満足するでしょ?」
「…友香に男?マジお前何様なの?」
翔太は冷たい視線を向ける。
「友香みたいな奴、誰も相手になんかしねえんだよ。自惚れんなよ。あっちだって遊びで友香にちょっかいかけてんだ。」
「よ、吉田さんは、そんな人じゃない。」
「遊ばれてるんだよ。お前みたいなブス誰も相手になんかしないよ。」
かーっと友香の体温は上がった。
また、卒業式の光景がフラッシュバックする。
「…そんなに。私、だめ?」
低く静かな声で聞く。
「は?友香なんて女としての魅力なんて全然ないね。」
友香はゆっくりと翔太の前まで来た。そして彼の手を取り…。
「…ッ!?お前、何やって!」
「私、胸あるでしょう?」
友香は翔太の手を自分の胸に押し当てた。
「ペチャパイじゃない。Cはあるもん。中学生の頃とは違う。ちゃんと本物だよ。」
翔太の手をさらに胸に押し付けた。
「翔太が私を女の子として見ないのは知ってる。だけど、私の自信まで奪うのやめてよ!」
涙が後から後から落ちてくる。
「もう、翔太なんて知らない。」
友香は翔太から離れると、自分の部屋で荷造りを始めた。
鞄に一通りの者をいれ、リビングに行くと、まだ翔太はそこにいた。
「友香、どこいくんだよ。」
「…翔太がいないとこならどこでもいい。」
「悪かったよ。言い過ぎた。」
翔太が友香の腕を掴もうとしたのを、振りほどく。
「大嫌いだよ、翔太なんか。」
ぼーぜんとした翔太を後ろに友香は家を飛び出した。