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幼馴染とただ今同居中!  作者: ゆずる
2章 夏キャンプ編
21/29

21話

「ねー、香織やりすぎたんじゃない?」


友香を部屋に閉じ込めた女性達は浜辺に来ていた。


「あら、どうして?」

きつい目の美女…香織が首をかしげる。


「…だって友香って人、努力もせずに青木翔太くんと同居しているのよ?私たちはやっとこの夏キャンプでお話できたぐらいで…名前だって覚えてもらってないわ。…こんなこと許される?」


波が後から後から波打っている。


「…だから、あの子を閉じ込めちゃえば、私たちの誰かが、今晩青木翔太くんと泊まれるわ。"男1人女1人で泊まる"のがルールですものね。」


うふっと微笑む。


「…あんな子。どっかに行けばいいのよ!」


「…お前ら、友香をどこに閉じ込めた。」


女性達は驚いた。

…目の前には青木翔太が恐ろしく冷たい目で立っていたのだ。


「…あら、翔太くん♪なんの話か私たちにはさっぱり…「とぼけるなッ!!!」

翔太の怒鳴り声に美女達はびくっと震えあがる。


「言えよ!おまえら友香になんかあってみろ…。」


ファンの前では常に優しい笑顔を浮かべる翔太。

そんな翔太に騙されていた美女達は、翔太がこんなに激しい感情を出すなんて想像できなかっただろう。


…今の翔太は、目が据わっていた。


ギロリと美女達を睨む。


「…許さないよ。」


翔太はそれはそれは美しく笑った。

美女達の微笑など足元にも及ばない美しい美しい…悪魔の微笑みだった。








※※※



あの後、美女達は震え上がって友香の居場所を教えた。


"1階の倉庫Fにいるわ…"


翔太はすぐにホテルに引きかえす。


フロントで事情を説明し、係の人と倉庫Fに向かう。


中を開けるとむわっとする暑さ。

その部屋の中に…友香が倒れていた。


「…ッ友香!!!!」


友香にかけよる。


…友香はぐったりとして、意識がない。


「とにかく、救護室へ運びましょう!」

係の人がどこかへ電話をしている。


「友香…友香…。」


友香を抱き上げた。


「…救護室はどこですか?!」


係りの人に案内してもらい、翔太は1人で友香を抱き上げて運んだ。



携帯に連絡した花と俊明も救護室にかけつけた。


「翔太くん、言われた通り、水と氷もってきたわ!」


「サンキュ。」


翔太は花から受け取ったペットボトルの水を自身の口に含み、そっと友香の口に流し込む。

…友香は無意識だが、少しだけ飲んだ。



花は氷の入ったビニール袋を、友香の脇などに挟んだ。

俊明はうちわで友香を扇いでいる。



翔太は何度も何度も水を含んでは、友香に口移しで水を与えた。


(友香、目を覚ましてくれ!)




しばらくして願いが通じたのか、友香はゆっくりと目を開いた。


「…こ、ここは?」


「友香!あんた、目を覚ましたのね!よかったー!」


花が泣きながら友香を抱きしめる。


「…あ、そっか、私…閉じ込められ…て…。」


友香はだんだんと意識がはっきりしてくる。


「友香ちゃん、4時間以上閉じ込められてたんだよ。翔太くんが友香ちゃんを見つけ、ここまで運んだんだ。」


俊明がほっとした表情を浮かべてそう言った。


…ふと隣を見た。


「…翔太…。」


翔太は友香をじっと見つめていた。何かに耐えているように見える。


「翔太…。ありがと。」


私は大丈夫よ、と言うように友香は微笑んだ。


「…俺のせいだ。」


翔太がぼそっとつぶやいた。


「友香を閉じ込めた奴は…俺のファンだったんだ。俺が友香をこんな風にしたようなものだ。」


翔太の顔は苦しそうに歪む。


「…翔太のせいじゃないよ。」

友香は語りかけるようにゆっくりと否定した。


「…私がいけないの。…早く翔太に会いたくて部屋を飛び出したから。」


そう言って友香は翔太をまっすぐ見つめる。


「私…翔太が好き。それが言いたくて、翔太を捜してたの。…あの部屋に閉じ込められた時も『翔太、助けて』って心の中で何度も叫んでた。…そしたら本当に翔太は助けに来てくれた。」


翔太は突然の告白に驚いたように友香を見つめる。


友香は照れたように、はにかんだ。その顔は晴れ晴れしている。


…翔太は友香のそのあまりの可愛い表情におもわず自分の腕に閉じ込める。


「…し、翔太?」


「…俺も…昔からずっとお前のこと見てた。でも照れ隠しに反対の行動ばっかとってお前を傷つけて…。」


ぎゅうっと抱きしめる力を強める。


「…もう、お前を離したりしない。ずっと側にいろよ…。」


「…うん!」


2人は見つめ合い…だんだん顔の距離が近づいて…。



「…あー、ごほん、げほん!…続きは夜2人で楽しんだらいいんじゃないか、な??」


花がわざとらしく咳をした。


2人の世界に入っていた友香と翔太は、側に花と俊明がいることを思い出した。


友香はだんだんと顔が赤くなる。


「いやー、よかった!友香ちゃん、翔太くんおめでとー!!」


パチパチと拍手をする俊明。

邪魔が入った翔太はむぅと不機嫌な顔になる。


「友香、よかったね!私も嬉しいわ!」


花は翔太を押しのけ、また友香に抱きつく。


「は、花ちゃーーん、ありがとーー!」

友香と花は抱き合って喜んだ。



…花に友香を奪われ、さらに不機嫌な翔太に俊明が女2人には聞こえないように小さな声で呼びとめた。


「翔太くん。両想いになったとこ悪いけど…。今晩は友香ちゃんを休めてあげてね。」


「?」


「昨日みたいに友香ちゃんを襲ったらだめだよってこと!友香ちゃん、倒れたばっかなんだから。」


瞬間、翔太の顔が真っ赤になる。


「し、しねえよ!ばかやろう!」


俊明は『何も言うな、わかってる』と言うようにうなずいた。


「どうしても我慢できなくなったら、夜空を見上げるんだ。空一面光輝く星を見上げると『なんて自分は馬鹿なことを考えてるんだ』と悟りを開けるさ。…俺は花ちゃんに拒否られた時はいつもこの方法で自分を抑えている。」


「ちょっとー、男子達ーッ!何2人でこそこそ話してんの!」


花が怪しむように言った。


「いやー、人生の先輩として翔太くんに理性の抑え方を…痛!暴力反対!!」


「お前、もーしゃべんな!…な、なんでもねーからッ!」


俊明の襟元を掴みながら、女子2人には愛想笑いを浮かべる翔太であった。







こうして友香と翔太は晴れて両想いとなったのでした。



その夜…。

幸せそうに寝る友香を前に、翔太は何度も夜空を見上げたのは言うまでもない。







ひとまず夏キャンプはこれにて終了です。





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