20話
19時の夕食の時間になっても友香は姿を見せなかった。
ーー友香が部屋を出て…まもなく4時間が経とうとしていた。
20時からは浜辺で花火が始まる。参加者達はそれぞれがホテルを出て浜辺に向かっていく。
花と俊明…翔太も、さすがにおかしいと感じ始めた。あれから3人はずっと友香達の部屋にいたのだ。
「4時間も戻ってこないなんて、何かあったんだわ。…どうしたらいいの?…友香、変な人に連れていかれたのかしら…。」
花は動揺して泣きそうな声になる。
「…とりあえず、俺たちで手分けして探そう。」俊明の言葉に2人はうなずいた。
翔太と俊明が外に探しに行き、花は友香が戻るかもしれないと、この部屋にとどまることになった。
※※※
翔太は外を、俊明はホテル内をそれぞれ捜すことになった。
翔太は浜辺に向かった。
浜辺はもうすぐ花火をするため、ほぼすべての参加者が来ているようだ。
太陽が沈んで薄暗く、あまり人の顔がよくわからない。友香の背格好の女性を見つけては…その女性は別人で…。翔太は焦りを覚える。
(…友香、どこにいるんだ!)
翔太は花の言っていた言葉を思い出していた。
"友香はあなたに、大切な事を言うために会いに向かったのよ"
ーー大切な事って何なのか。
自分に会うはずだったのに、姿を消してしまった友香…。ーなぜ?
(…くそッ!!)
自分はいつもこうだ。…気持ちと真逆の行動をとってしまう。
ーあの時、自分が部屋を出ていったりしなければ…。…昼の出来事が蘇る。
"や、やめてッ!"
本能のままに、友香を抱こうとした。友香のその声に一瞬だけ理性が戻り、ふと友香の顔を見ると…泣いていた。一気に理性が戻る。
ーーなんて馬鹿な行動をしたんだろう?罪悪感が溢れた。
(俺は友香を…傷つけた。)
今まで同居していても耐えてきていたのに…。友香がリビングで無防備に寝ていても抱きしめたい衝動を抑えそっと毛布をかけた。…昨日の晩だって友香の裸を見ても、必死で冷たいシャワーを浴びて瞑想して邪念を消した。シャワーから出て、目の前で友香が無防備に寝ていても、壁に頭をぶつけ痛みで欲望を抑えた。
翔太がここまで理性を保っていたのは…『友香が大切な女性だから』。
友香が自分に気がないのは知っていた。だから抱きしめたい衝動にかられると、わざと友香をからかい嫌われる行動をとっていた。自分が小学生男児なのは自覚している。『友香が大切』その一身で、翔太は本能を抑え込んでいた。
ーなのに、友香は平気で自分を煽る行動ばかりする。
結局前の晩は睡眠が取れていなく、部屋で仮眠をとっていた。…目が覚めると…友香が隣で寝ていた。ーしかも自分の腕に絡みついて…。
…限界だった。
今までの欲望が溢れるように、友香に無理やり襲いかかってしまう。
ー友香の涙で自分を拒否されたのだと理解した。…挙げ句の果てには…
"矢島さんと泊まるの。翔太、出て行ってくれない?"
…友香の言葉に頭が真っ白になった。
無理やり友香を襲ったことの反省よりも、『他の男と泊まる』と言った友香への怒りの感情が上回った。
…だから怒りに任せて、部屋を出た。
(…あの時、俺が部屋を出ず、友香に謝っていれば…。)
後悔ばかりが頭に浮かぶ。
(ー友香に謝りたい。)
…もう無理やり友香に触れたりなんかしない。…だから…
「…友香、出てこいよ…君に…謝りたいんだ…。」




