19話
「…あの…どちら様でしょうか…?」
友香は声をかけた5人の女性達にどこかの部屋に連れていかれた。
『話したいことがある』と女達に言われたが、友香は翔太を探したかった。断ったら、有無を言わさずにこの部屋に連れてこられた。
ー…辺りはダンボールの山だ。物置き部屋だろうか?
5人は皆、美女ばかりだった。
「単刀直入に言うわ。」
5人の内の一番きつい美人が声を発した。
「有沢友香さん。今晩、ルームメイト交換してくださらない?」
「…え?…それは、つまり…。」
「そう!私ね、青木翔太くんと今晩泊まりたいの。…ね、いいでしょう?」
きつめの美女は周りがうっとりするような微笑を浮かべる。
周りの女性達も、彼女に賛同するように友香ににっこりと微笑む。
ーどうやら彼女達は、翔太のファンのようだ。
…友香に選択肢は残されていないらしい。ぐるりと5人に取り囲まれる。
「…あの、嫌と言ったら…。」
「あら、どうして?」
不思議そうに美女は首をかしげる。有無を言わせない迫力があった。
友香の足は恐怖で震えており、立っているのがやっとだ。…それでも必死に目を美女に合わせる。
「わ、私は翔太が好きなんです。…だから、絶対に変わりたくありません!」
嘘でも、『部屋を変わる』なんて言いたくなかった。…やっと気持ちを伝える勇気を持ったのだ。
そう、と美女は甘いため息を吐いた。
「…変わっていただけないなら…。」
優雅に笑い、美女の瞳が細くなる。
「…あなたをこの部屋から…出してあげない。」
美女の微笑みは時として、人を震え上がらせる。
…
…気がつくと、友香はその部屋に1人でいた。
ーどれぐらい眠っていたのだろう?
…あの後、2人の女性に両腕を掴まれ、動きを封じられた。口を無理やり開けられ、粉を飲まされ…意識が遠くなった。
まだ体が痺れて思うように動けない。
扉まで這うように向かった。
扉のノブを持ち、手で回す…。
…ノブが回らなかった。
(…閉じ込められた!?)
鍵が掛かっているようだ。…彼女達がやったのだろう。
ドンドンと扉を叩く。
「だ、誰か、助けてッッ!!」
…外からの反応はない。
(…暑い。)
真夏であるのに、この部屋はクーラーがなかった。
電気を薄暗い照明が付いているだけで、部屋の中は見渡しが悪い。
こんな暑い中で、眠っていたのだ。汗がべっとりと服についている。
…一刻も早く出なければ、死んでしまいそうだ。
ポケットから携帯を取り出そうとして、ホテルの部屋に置き忘れたことに気づく。
必死で扉をたたいた。
…何度叩いても、扉が開く気配はない。
…だんだんと、扉を叩く力が弱くなる。
(…あ、暑い……。)
友香はずるずるとその場に倒れこんだ。
顔は真っ赤になり、呼吸を吸うのが苦しくなる。
(…し、翔太、…助…けて…。)
友香の意識はゆっくりと薄れていった。




