17話
「友香さん、先ほどはごめんなさい。」
落ち着いた理沙が深々と頭をさげた。
「い、いえ、これぐらい冷やせば大丈夫です。」
ブンブンと首をふる。
矢島は友香との関係をきちんと話してくれた。
「俺は、お前に嫌われてると思っていた。てっきり青木翔太が好きなんだと…。」
「…ヤキモチ妬いて欲しかったの。」
理沙ぼそっとつぶやいた。
「青木くんは確かにファンよ。だからお話できてすごく嬉しかった。…だけど、ファンと恋は別だもの。私が青木くんの話をして、学に妬いてもらいたいのに『よかったな』っていつもと変わらない笑顔。挙げ句の果てには、『今晩は他の女性と泊まる。』って勝手に部屋を出ちゃって…。」
周りの3人は固唾を飲んで事の有様を見守る。
「…理沙…。」
「学、私、あなたが好き!学が私を好きじゃなくてもあきらめない!だから…!」
理沙が言い終わらないうちに、矢島は理沙を抱きしめる。
「…学!?」
「俺も、お前が好きだ!」
矢島はギュッと手に力をいれる。
「本当は今から、理沙に告白しにいこうと思ってた。友香ちゃんに怒られて目が覚めたんだ。」
矢島はちらっと友香と視線をあわせる。
友香は笑顔をむける。
「ずっと、理沙だけを見てた。だけど理沙の視線の先には青木翔太がいた。『学に妬いてほしかった』だって?…俺はいつも妬いていたさ!…狂いそうなほどに。理沙の心を独り占めしたかった。」
矢島は優しく理沙に微笑みかける。
「だけど…俺は臆病で。笑うことで気持ちを誤魔化して…。理沙の幸せを願うなんて偽善者ぶって…。挙げ句の果てには、友香ちゃんに怒られてやっと告白する勇気が持てたんだ。」
理沙を見る。
「…理沙。こんな臆病な俺だけど、ずっと側にいてくれないかな?」
「…もちろんよ!」
理沙が矢島の胸に飛び込んだ。
2人はしばらく抱き合っていた。
誰も何もしゃべらなかった。
暖かい日差しか窓から入りこんでいる。
(…次は私の番ね。)
2人に勇気をもらい、有沢友香は心の中でつぶやいた。




