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恋愛ゲーム  作者: 七度
遊戯部との出会い
3/23

02話「よろしく」

下駄箱で、スニーカーから学校指定の上履きに履き替え、北校舎の3階まで戻る。廊下の突き当たりの部屋の前で、神子がドアを開けたまま待っていた。

「よし、入れ」

言われた通りに部室へ入ると、後ろで引き戸が閉まる音がした。


「まずは自己紹介だ」

神子は浩太の前に回り込み、腰に手を当てて胸を張る。

「河上神子、2年生。『遊戯部』部長だ。よろしく」

偉そうな美人だなというのが第一印象だったが、それは出会ってから数分経った今でも変わらない。言葉、態度、全てが偉そうだ。


「次は、小桃先輩お願いします」

待ってましたとばかりに、小さな少女がぴょんっと椅子から立ち上がり浩太の方を向いた。

「東郷小桃です!3年生で、先輩なので、敬ってねー」

『3年生』、その言葉に仰天した。


赤いプラスチックの球体がついたヘアゴムで、右と左で二つに縛ってある髪。茶色の大きな瞳。どう見ても小学生にしか見えない外見。

年下だと思った。3年生と聞いた後でも、信じられない。


「遊戯部のー、副部長です」

驚いた様子の浩太をほったらかして、小桃はマイペースに自己紹介を続けた。

「小桃って呼んでね!」

目をキラキラさせて見上げる少女の勢いに、一歩下がる。

可愛い。一部のマニア受けのよさそうな可愛さだ。


「彩」

神子の一声で、浩太の右側にいた少女が一歩進み出た。

先程後ろから声をかけてきた、真面目そうな少女だ。

「柚木彩です。よろしくお願いします」

それ以上話すことはない、と言うように彩は頭を下げた。上の方で束ねた黒髪がするりと垂れる。


「彩は私と同じ2年で、クラスメイトだ」

素っ気ない彼女の紹介を付け足すように、神子が口を開く。

「昔からの友人で、私の護衛をしてもらっている」

護衛?

耳慣れない言葉が聞こえた気がする。なぜ普通の学生に護衛が必要なんだ。そんな疑問が浮かんだが、すでに次の部員の紹介が始まっていた。


「真島絹代です。よろしくお願いしますね」

小桃の隣に立っている少女が、ふんわりと微笑む。落ち着いた雰囲気の彼女は、見覚えがあった。


「真島さん、遊戯部だったんだ」

「あら?」

不思議そうに絹代は眼を丸くする。

「わたしのこと、ご存じなのですか?」

「…お、俺のこと知らないの?」

「すみません。記憶にないです」

申し訳なさそうに、彼女の眉尻が下がった。どうやら本当に知らないらしい。

(入学したばかりなら仕方がないけど、2か月も経ってまさか・・・)

落ち込みつつも顔に笑みを張り付けて、自分も自己紹介することにした。


「真島さんと同じクラスの、沢村浩太です」

「そうだったんですか。すみません、覚えてなくて」

「いえ、いいんです。俺の影が薄いだけだと思うし」

内心そんなことは思っていない。クラスメイトの大半とは親しいし、毎日を騒がしく過ごしてきた。真島絹代と会話したこともある。

(そっか、覚えてないのか)

知っているのは自分だけ、というのは悲しかった。


絹代は、白い肌と艶やかな髪、そして慎ましい性格から、現代では珍しい大和撫子として密かに男子たちの憧れだった。男子の一人が彼女に話しかけただけで、クラス全員の男から睨まれる。女子は普通に絹代との会話を楽しんでいたが、男子には近づくこともできない高嶺の花だ。

一度、図書委員だった彼女に図書室の蔵書について尋ねたことがあったが、そのときの『お前、真島さんに話しかけてんじゃねぇよ』という無言の男子たちの視線は、今でも忘れられない。



「よし、これで全員自己紹介は終わったな」

神子の声で、はっとして顔を上げる。どうやら自分は、ぼぉっと思考の海に漂っていたようだ。



「ちょっと待て!」

突然、部屋の隅から声がして、一人の少年が飛び出してきた。


「オレにも自己紹介させろよ!」

「何だ、いたのか犬」

「犬じゃねぇぇ!!」


大声で否定しながら、少年はこちらを向く。

「三原祐平。2年生だ。よろしくな後輩!」

よく分からないが嬉しそうに、ニヤニヤ笑っていた。


「ありがとう、沢村!これで遊戯部の雑用が2人に増えるんだな!!ああ、オレにもやっと自由な時間が……」

「バカを言うな」


神子が冷たい声で、三原を睨む。寒い。凍りそうだ。実際、睨まれた少年は凍ったように視線だけ神子に向けて、動かなくなった。


「私の愛しい人に、雑用なんかやらせるな」

ぎゅっと浩太は手を握られた。出会ったときに掴まれたのとは違い、優しい温かさだった。


「今日から、浩太は我が部の一員だ。つまり雑用のお前より立場は上だ。」

「え、沢村は1年だろ」

「だからどうした」

「え、オレより上なの?」

「そうだ」



そんなばかなぁぁぁぁぁ!!!

三原は叫びながら、首を振った。


「もう嫌だ、こんな部活やめてやる!!」

「ほぅ、いいのか?」


彩、と神子は呟いて、真面目な表情で隣に佇んでいた少女から、一冊のファイルを受け取る。青色のそれを見た瞬間、三原の顔から血の気が引いていくのが分かった。


「お前が産まれてからの全て。恥、屈辱、初恋の人。全てが、この中に入っている。……どうする?屋上から、ばらまいてほしいのか?」

「ごめんなさいぃぃ!!何でもやります!!犬でいいです!!でも、それだけはやめてくださいぃぃ!!!!」




遊戯部部室に入ってから、6分。

浩太は、今すぐここを飛び出して家に帰りたいと思った。

登場人物1


河上 神子

(かわかみ かみこ)


遊戯部 部長

2年生

偉そう 美人 偉そう

好きなゲームは オセロ

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