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恋愛ゲーム  作者: 七度
遊戯部との出会い
1/23

00話「暇だ」

「暇だ」

部屋の奥の窓に近い席で、一人の少女が呟いた。

周りにいる数人の少女たちは、興味なさそうに、

本を読んだり、ゲームをしたり、瞼を閉じたまま壁に寄り掛かったりしている。

「暇だ、暇だ、暇だぁぁぁ!!」

先程の少女が大声で叫び、椅子から立ち上がったところで、

その場の全員が、彼女の方を見た。


「なぁ、彩」

壁に体重を預けていた少女に向かって、立ち上がった少女は呼びかける。

「何ですか、神子様」

「暇なんだ、助けてくれ」

神子と呼ばれた少女は瞳をウルウルさせながら、彩と呼んだ少女に近寄った。

「そうですか、困りましたね」

真面目な顔をして、彩は考えるように右手を頬に当てる。

「そうなんだ、困ってるんだ。困ってるんだ」と何度も繰り返しながら

神子は目の前の彩を、がくがく揺すった。


「ギャルゲーも、乙女ゲーも飽きたんだ!ツンデレがデレた瞬間に全てがどうでもよくなったんだ!」

「ぎゃるげー?おとめげー?」

耳慣れない言葉らしく、彩は不思議そうに首を傾げる。


「とにかく、何か面白いことがしたい!」

大声で宣言し、神子は部屋全体を見回した。


「ねぇー、神子ちゃん」

先程まで携帯ゲーム機で遊んでいた少女が、神子に声をかける

「あんなに楽しそうに攻略キャラの話してたのに、もう飽きちゃったの?」

幼い声、小学生にしか見えない外見。しかし神子は、少女に対して敬語だった。

「そうなんです。エンディングを迎えた途端に、今までの熱が冷めてしまって」

「あら、困ったねー」

「エンディングまでの、過程は楽しかったんです!でも、でも、告白されたら、相手に何の興味も無くなってしまって……」

「他のキャラクターも、攻略したら?」

「全員終わりました」

「……」


『昨日購入したって言ってたのに、早すぎだろ』とは、誰も突っ込まなかった。



「んー、ゲームの恋で飽きたなら、本物の恋でもしてみれば?」

視線を元のゲーム機に戻して、幼い少女は提案した。

「ゲーム……恋……」

ぶつぶつと二つの単語を呟きながら、神子は真ん中の大きなテーブルの周りをぐるぐる歩き始める。考え事をするときの、彼女の癖だった。


しばらくして、ガンッと大きな音とともに自分が座っていた椅子にぶつかって、神子は歩くのをやめた。そして、満面の笑みで声高に言った。


「リアルギャルゲーをやろう!」


一同、無言。彼女の思いつきで、今まで色んなことをやらされた。今回もどうやら、厄介なゲームを思いついたらしい。


「ギャルゲーで、ハーレムなんてよくあることだ。しかし日常では、私は見たことが無い!見たことがないなら見たいと思うのが人間だろう。よし、ハーレムを作るぞ!」

「あの、神子様」

遠慮がちに、彩は、腰に手を当ててふんぞり返る神子に声をかけた。

「意味がよくわからないのですが?」

「説明してやろう!つまりだな、一人の男を部員全員で誘惑するんだ。その男が、誰か一人に惚れたらゲーム終了。男を自分に惚れさせた者の勝ち。勝ったやつには……そうだな『部員全員に何でも一週間命令できる権利』を与える!」


一瞬生まれた沈黙。だが、弾んで楽しそうな声が、その場の空気をぶっ飛ばした。

「おもしろそう!あたしそれやるー」

外見小学生少女が、手を上げる。

「小桃先輩なら、わかってくれると思ってました!!」

神子は、小桃と呼んだ少女の手を取って、ぶんぶんと振り回す。

「さっすが、神子ちゃんだね。いつも面白い思いつきをありがとー」

小桃はニッコリと、笑う。後ろに花が舞っていると錯覚してしまいそうな、可憐な笑みだった。

「さて、…絹代」

神子の声に、少し離れた場所で本を読んでいた少女が顔を上げる。

「お前はどうする?」

絹代は、微笑む。

「神子さんの提案なら、構いません」


「決まりだな」

それは、部屋の中の全員が感じていた。二人が肯定したことで、ゲームの開始が決定される。


「おい犬」

少女ばかりのこの部屋で、一人だけ隅の方にいた少年に、神子は命令した。

「お前は審判をやれ。男が誰に惚れたか、正確に判断しろ」

「それはいいけど、犬はやめろ!犬って呼ぶな!犬って―――……」

ギロッ 少年を睨む神子は恐ろしい顔をしていた。

「ごめんなさい」

抗議の言葉を飲み込んで、少年は頭を下げる。今の彼女に何を言っても無駄だと正確に判断したのだろう。


「では、ギャルゲーの主人公役を選ぼう。確か戸棚に、今年の新入生の個人情報があっただろう。……おい犬、持ってこい」

どうしてそんなものがこの部屋にあるのか。誰も聞かない、聞いてはいけない。

少年は慌てて、棚から分厚いファイルをひっぱり出すと、神子に渡そうと振り返り、

「あっ」

先程、神子がぶつかった椅子に足を引っ掛けた。

がつん 少年が顔から床に倒れ、

ばさっ ファイルが宙を舞う。


中に入っていた、個人情報の一枚が飛び出す。ひらひらと舞ったその一枚は、偶然にも神子の足元に落ちた。手に取り、それを読み上げる。

「……沢村 浩太」



「運命だね、決まりだねー」

「その方で、いいのですか?」

「……参加したくないです」

「顔がぁっ顔がぁっ!!」


他の4人の言葉は、そのときの神子には聞こえなかった。

そして



「待っていろ、浩太」

にやりと、彼女はこれからの楽しい日々を想像して笑った。


スタートしました。


書いていれば、上手くなるかな…と、甘いことを考えてます。

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