『「キャハハ!ピクピクしてるぅ〜」と言う自然系列メスガキがウザいので放置してたら、台風にわからされて「私が雑草でしたぁぁ!」と泣き叫んで俺に縋りついてきた件』
「キャハハ! ピクピクしてるぅ〜。おっもしろ〜い。息したくても出来ないんだよねぇ〜、かっわいそ〜う♡」
夏の昼下がり、俺の家の庭に、そんなおぞましい台詞が響き渡った。言葉だけを聞けば、猟奇的な殺人鬼の犯行現場だ。あるいは、極めて悪趣味な動物虐待の最中。
俺は冷めたコーヒーをサイドテーブルに置き、重い腰を上げて窓の外を覗き込んだ。
そこにいたのは、腰まで届くツインテールを揺らす一人の少女だった。見た目だけなら、どこかの令嬢かマスコットキャラクターのように可愛らしい。
だが、彼女が熱心に指差して嘲笑っている対象を見て、俺は深い溜息をついた。
「おい。いい加減、うちのパキラを煽るのをやめろ」
彼女が「死にかけの犠牲者」のように扱っていたのは、俺が三年間大事に育てている観葉植物の鉢植えだった。
「……うっさいわね、この自然の一部が! 私は今、この植物さんに『生命の不条理』ってやつを教えてあげてるの! 見てよこれ、私に煽られて葉っぱが震えてるわよ? あーっ、無力ぅ! 光合成する以外に能がないなんて、ホント 無力ぅ〜!」
「それはただ、風に揺れてるだけだ。あと、お前の二酸化炭素を浴びて、むしろ喜んでる可能性すらあるぞ」
彼女の名は、自称・自然系列メスガキ。
普通のメスガキは人間に向かって「ざぁこ♡」などと抜かすものだが、この女のターゲットは、この世界の「自然」そのものだ。
山、川、空、そしてそこに付随する動植物。そして「いつも庭に座っている」というだけの理由で、俺も彼女の分類上では「岩や木と同列の自然物」として煽り対象に含まれているらしい。
「ふんっ! いい? 私は自然系列の頂点なの! この雑草さんも、私に煽られることで自分が自然の一部だって再確認してるんだから! 感謝してほしいくらいだわ!」
彼女は胸を張り、ドヤ顔でパキラに中指を立てる。 その光景は、壮大すぎるほどにしょうもなかった。
◇
その週末、俺は気分転換に近くの川へ釣りに出かけた。当然のように、背後には「自称・自然の支配者」がツインテールを振り乱してついてきている。
「キャハハ! 見てよこれ、水に糸を垂らして……自然を騙そうなんておっもしろ〜い! 魚さんたちもバカよねぇ、あんな針に引っかかるなんて。無力ぅ〜、脳みそプランクトン以下ぁ〜♡」
川面に向かって高笑いする彼女を無視して、俺は竿を振る。数分後、俺の竿に小さな当たりがあった。
釣り上げたのは、体長五センチにも満たない、小指のような小魚だ。
「……あ、釣れた」
俺がバケツに入れようとしたその時、彼女が横から割って入ってきた。
「ちょっと退きなさいよ、自然の一部! ここは自然系列の私が引導を渡してあげるわ! ほーら見て、ビクビクしてるぅ〜! 生きたまま息ができないなんて私って残酷ぅ〜。今すぐ楽にしてあげようかぁ〜? んん〜?」
彼女は、今にも消え入りそうな命を救う英雄……ではなく、それをなぶり殺す魔王のような顔で、小魚の鼻先に指を突きつけた。
「さぁ、観念しなさい! 私が直々に締めて……ひゃっ!?」
その瞬間、小魚が最後の力を振り絞って跳ねた。 鋭いヒレの先が、彼女の白くて柔らかい人差し指をピッと掠める。
「いっ、たぁぁぁい! 刺した! 今、この魚、私を刺したわよ!? ひっ、ひどい! 自然の分際で私に逆らうなんて……血が出てる! ねぇ、血が出てるわよ!? 死ぬ! 私、破傷風とかで死んじゃうぅぅ!!」
さっきまでの魔王様はどこへやら。彼女は指先を抱えて、川岸でバタバタと地団駄を踏み始めた。
「……ただの切り傷だ。ほら、貸せ」
「早く締めてぇぇぇ! この魚、怖い! 早く動かないようにしてぇぇ!!」
涙目で叫ぶ彼女の横で、俺は無言で小魚を回収し、手際よく一瞬で締めた。
動かなくなった小魚を見て、彼女はズビズビと鼻を鳴らしながら、まだ震える指を俺のシャツの袖で拭いている。
「……ふんっ。当然の結果よね。私の指を傷つけた代償は高くつくんだから」
さっきまで半泣きで逃げ回っていたくせに、安全が確認された途端にこれだ。この女、学習能力という概念が、文字通り自然消滅しているらしい。
◇
その日の晩。食卓には、あの「メスガキの宿敵」である小魚の唐揚げが並んでいた。指に絆創膏を貼った彼女は、箸を武器のように構えて、皿の上の小魚をギロリと睨みつけている。
「……ふんっ。さっきは油断したけど、結局はこうなるのよね。あんなに必死に私を刺したのに、最後はカリカリに揚げられて私の血肉になるなんて。あーっ、無力ぅ! 食物連鎖のピラミッドの下層にいる気分はどうかな〜? んん〜?」
言い草は最低だが、彼女の箸使いは無駄に洗練されていた。小さな身を器用にほぐし、口へと運ぶ。さっきまで「怖い」と泣きついていた相手を、今は微塵の躊躇もなく咀嚼している。
「もぐ……もぐもぐ……。ふん、まぁ、自然の分際で味だけは認めてあげなくもないわ。私の血肉になれることを光栄に思いなさいよね」
結局、彼女は皿の上の小魚を、骨の一本すら残さず完璧に平らげた。その食べっぷりの良さだけは、自然への敬意……ではなく、単なる食い意地の張り方として、見ていて清々しいほどだった。
しかし、そんな「自然の覇者」を気取る彼女にも、想定外の事態が訪れる。翌朝、俺は猛烈な悪寒と共に目を覚ました。どうやら昨日の川釣りで、風邪を引いたらしい。
「おい……悪いが、今日は寝かせてくれ……」
ふらつく足でベッドに潜り込む俺を、彼女はドアの隙間から、見たこともないような動揺した目で見つめていた。
「な、なによそれ。自然の一部であるアンタが、勝手に機能停止するなんて許さないんだからね! ほら、起きなさいよ! 岩が風邪引くなんて聞いたことないわよ!?」
「岩じゃねえよ……。放っておいてくれ……」
意識が朦朧とする中、彼女がバタバタと家の中を走り回る音が聞こえる。数時間後。彼女が持ってきたのは、焦げ臭い匂いのするドロドロの液体(一応お粥らしい)だった。
「……ほら、食べなさいよ、この低気圧に負けた雑草! アンタがいないと、私が誰を煽ればいいのか分かんなくなるじゃない! ほら、あーして! ざぁこ、ざぁこ! お粥もまともに食べられないなんて、自然界失格よ!」
彼女は半泣きで「ざぁこ」を連発しながら、震える手でお粥を俺の口に押し込んでくる。煽っているのか、心配しているのか。いや、たぶん両方なのだろうが、その必死さは「小動物が一生懸命巣作りをしている」ような、妙な健気さを感じさせた。
ふと、窓の外に目を向けると、そこには異様な光景が広がっていた。庭の植物たちが、窓ガラスを叩かんばかりに枝を伸ばし、葉を震わせているのだ。
毎日彼女から「二酸化炭素の煽り」を浴び続けてきた植物たちは、どうやら彼女を「群れのリーダー」か何かに認定したらしい。主人の危機を察した彼女の殺気(あるいは焦り)に同調して、家全体を包み込むように成長を早めている。
「……ちょっとぉ、窓の外の連中まで騒ぎ出しちゃったじゃない! みんなアンタが無力なのがおっもしろくて見に来てるんだから! だから……だから早く治りなさいよね!」
俺の額に、冷たすぎるほど冷えたタオルが乗せられる。メスガキの罵倒と、窓を叩く葉の音。最高にウザくて、最高に騒がしい。けれど、不思議と悪い気分ではなかった。
◇
俺の風邪が治って数日後。まるで彼女の騒がしさを具現化したような、超大型の台風が街を襲った。
窓の外は猛烈な雨風で白く霞み、街路樹が苦しげに身をよじらせている。そんな中、彼女はリビングの窓を勢いよく開け放とうとしていた。
「ちょっと、危ないから閉めろ!」
「うるさいわね! こんな絶好の『わからせタイム』を逃すわけないでしょ! 見てなさい、自然系列の頂点たる私の威厳を!」
彼女はベランダに飛び出すと、荒れ狂う暴風雨に向かって仁王立ちし、細い腕を天に突き上げた。
「キャハハ! ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ 必死に吹いてておっもしろ〜い! もっと雨降らせてみなよ、雲さんの顔、真っ赤……っていうか真っ黒だよぉ〜? あーっ、無力ぅ! 街一つ壊すのにどれだけ時間かけてるのよぉ!恥ずかしくないのぉ〜?」
それはもはや、神への冒涜を通り越した「ただのバカ」の咆哮だった。だが、大自然は彼女の挑発を無視しなかった。いや、物理法則が彼女の軽さを許さなかった。その直後、一際激しい突風がベランダを突き抜けた。
「あ、……えっ? ちょっと、体が……浮い……あわわわわわわ!!」
自重がほぼ存在しないような細い体は、風の抵抗を一身に受け、文字通り紙屑のように宙に舞った。
「あわわわ! 待って! 今の冗談! 冗談だからぁぁ!! ごめんなさい、自然様ぁぁ! 私が雑草でしたぁぁ! 助けてぇぇぇ!!」
ベランダの手すりを越えて、異世界へ転生しかけている彼女の腰を、俺は背後からガシッと掴んだ。
「……だから言ったろ。帰るぞ」
「離さないでよぉ! 絶対に離さないでよ、この自然の守護神さまぁぁ!!」
俺は半泣きで暴れる彼女をリビングへ引きずり戻し、窓を閉めて鍵をかけた。床にヘナヘナと座り込んだ彼女は、ずぶ濡れのツインテールを垂らしながら、まだ外で鳴り響く風の音にビクビクと肩を震わせている。
「……ふんっ。まぁ、今日のところはあいつの根性に免じて、引き分けにしてあげるわ」
「お前、さっき『私が雑草でした』って叫んでたぞ」
「聞こえない! 自然の音で何も聞こえなーい!」
彼女は真っ赤な顔をして耳を塞ぐ。その足元では、相変わらず窓の外から「仲間」を心配して、尋常ならざる速度で成長したパキラの枝が窓ガラスをトントンと叩いていた。
翌朝。台風一過の青空が広がっていた。庭に出ると、そこには昨日の嵐を乗り越え、より一層青々と、そして異常に巨大に茂った植物たちと、それにまた「イキり」を再開している彼女の姿があった。
「キャハハ! 見てよこの葉っぱ! 昨日の風でちょっと破れてて無力ぅ〜♡ そんなんで私の庭の住人が務まると思ってるのぉ〜?」
指の絆創膏もそのままに、彼女は今日も元気いっぱいに自然を煽り散らしている。結局、彼女がどれだけ吠えようが、自然は変わらずそこにあるし、彼女のウザさも変わらない。
「……まぁ、これがこの家の『自然』なんだろうな」
俺は呆れ半分、諦め半分で、二酸化炭素を元気に吐き出すメスガキの背中を眺めながら、淹れたてのコーヒーを啜った。
【※AI利用に関する表記】
本作は、作者が考案したプロットや設定、および言葉遊びをベースに、本文執筆の一部(50%程度)にAIのテキスト出力を利用・調整して作成しています。
皆様の家の植物も、たまには煽ってあげてください。光合成が捗るかもしれません
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