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この気持ちが報われなくても  作者:
日常

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2/2

幼馴染みの存在



「おい凛、今日起こしてって言ったじゃん」

「私は朝練あるから先行くって言いました~」


 どこにいても目を引く人間というのはいるもので。遠野朝日と、その幼馴染みの眞鍋凛はこの学校でも有名だった。

 テニス部のエースで、サラサラとした艶やかな黒髪をよくポニーテールでまとめている彼女は、驚くほど綺麗な顔をしている。

 大きな黒目とそれを縁取る豪華な睫毛。

 健康的な顔立ちなのにどこか華やかで嫌味のないナチュラル美人。メイクで盛って自信をつけた女子なんかは裸足で逃げ出したくなるような。

 とにかくモテる遠野君も、眞鍋さんと並べばまるで雑誌の1ページだ。

 どんなイケメンと並んでも遜色ない彼女なら、遠野君と付き合ったって誰に妬まれることもないだろう。

「大会終わったばっかの癖に、真面目だね~」

「優勝ごほうび、忘れてないよね?」

「ケーキバイキングだろ?まさか本当に優勝するとは思わなかった」

「男に二言はないでしょ?週末楽しみにしてるからね」

「わかってるって」

 この距離感で付き合ってないことのほうが不思議だ。

「相変わらず仲良いな」

 クラスの誰かが声をかけた。

「どこ見て言ってんのよ」

「別に普通だろ」

 ジレジレしているのは本人達だけで、周囲はほぼカップル認定している。

 とは言え、私がその周囲に含まれるかといわれるとそう言うわけでもないんだけど。

(眞鍋さんとは同じクラスだけど、話したこともないしね)

 おおよそ只のクラスメイト。

 遠野君にしても最近バイトに入ってきたばかりだから話すようになっただけで、学校では特に関わりもない。

 グループが違う、とか言う問題ではなく基本私がぼっちなので。あんな陽キャの中心にいるメンバーなんかと話せるわけもないのだ。


「あ、雪野!おはよ」


 急に話しかけないでよ。

「…おはよう」

 遠野君が目に入ったからといった感じで挨拶してきたけど、周りはちょっと不思議そうにしていた。

「朝日、雪野さんと話したことあったっけ?」

「最近バイト始めたって言ったじゃん?そこの先輩」

「え~、そうだったんだ」

 周囲の視線がこっちに向いたのがわかった。というか、なんでこっちに来るのよ。少し、いや非常に居心地が悪い。

「雪野さんおはよう。雪野さんってバイトとかしてたんだね」

「……まぁ」

 初めて眞壁さんに話しかけられたわ。

「お邪魔じゃなかったら今度ご飯食べに行っても良い?朝日からバイト始めたって聞いてて、いってみたかったんだ」

 美人な上にこんなにフレンドリーなんだから言うことなしでしょうね。

「……別に…私に許可を取るようなことじゃないから」

 そっけない態度になってしまった私に気を悪くすることもなく、彼女は「そう?よかった」と笑った。

「いや、来んなよ」

「雪野さんは良いって~」

「良いとは言ってないだろ」

「悪いとも言ってないでしょ」

 テンポの良い会話は夫婦漫才か何かなのか。

 いずれにせよ私のいないところでやって欲しい。

「それにしても、雪野さんっていつも勉強してるからバイトとかするの意外だったね」

「雪野いつも成績1位だもんな」 

 そんなことをこの2人に言われているうちに、別のクラスメイト達まで集まってきた。ムードメーカーのいるところが人の集まるところなのだろう。

 うっかり台風の目のなかに入ってしまった気分だ。

「え~、雪野さんってバイトとかしてるの?」

「マジか!どこで?会いに行ける?」

「私見たことあるよ。隣駅の近くのファミレス」

「マジか!絶対行く!!」

 ………何故?

 何故陽キャはこんなにフレンドリーなのか。

 私のバイト場に来て何になるんだ。遠野君目当てか?

 休み時間に必死に勉強しているガリ勉の私に話しかける人なんてそういなかったのに。

「あぁ~、雪野さんごめん。大人数になっちゃうかもだけど、平気?」

 普段話したこともないクラスメイトに一気に話しかけられて固まっている私に、眞鍋さんが気遣うような視線を向けた。

 陽キャはこうやって増えていくのね。

「だから、私に許可を求める必要なんてないから」

 愛想もよくない私の何が面白いのか、眞鍋さんはまた楽しそうに笑った。

「ありがとう。邪魔しないように行くから」

「だから来なくてイイって言ってんのに」

「はいはい、そろそろチャイム鳴るから、朝日は自分のクラスに戻ったら~?」

 照れ隠しで来店拒否する遠野君をあしらって、眞鍋さんは席に戻っていった。

 本当に来るんだろうか?

 ……来そうだな。

 フットワーク軽そうだし。

(朝から慣れない会話で疲れたわ)

 やっぱり、人付き合いは私に向いてない。

 会話もうまくないし、何より人に気を遣うのが面倒くさい。

(住む世界が違う…)

 私が仲良く出来るような人たちじゃないわ。

 改めてそんなことを思うと、いつのまにか溜め息が漏れていた。


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