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第七話 上級クラスとの遭遇

「その調子だ!百本ノック行くぞ!!」


「俺が先に死にます!」


「気にするな!!死ぬ直前で止めれれば保健室まで持っていける!」


 そのときだった。


 コツ、コツ、と靴音が訓練場に響いた。


 振り向くと、入口に二人の生徒が立っていた。


 一人は、長い黒髪を背中まで流した女子生徒。

 制服の着こなしは完璧で、姿勢も真っ直ぐ。

 そして何より――人を見下すのに慣れている目をしていた。


 もう一人は、白い髪の少年。

 静かな表情で、まるで風景でも眺めるようにこちらを見ている。


 少女はゆっくり訓練場を見回した。


「……あら」


 小さく眉をひそめる。


「ここ、補修クラスの訓練場でしたの?」


「違うけど」


 思わず俺が答えると、少女は少しだけ笑った。


「そうですの?」


 腕を組み、顎を上げる。


「朝から妙な音がすると思えば、なるほど」


 視線が俺に落ちる。


「補修クラスの方でしたのね」


「決めつけが早い」


「能力というものは残酷ですもの」


 少女は当然のように言う。


「努力で埋まる差と、埋まらない差がありますわ」


「朝からパンチ強いな」


 そのとき、隣の少年が口を開いた。

 穏やかな声だった。


「でも、不思議だね」


 俺を見る。


「さっきの動き」

 少し首を傾げる。


「とても人間らしく無かった」


「人間じゃなかったら何なんだよ」


「可能性かな」


「ふわっとしてる!」


 少女は小さくため息をつく。

「キオナ、落ちこぼれに興味を持たないでくださいます?」


「落ちこぼれって言った!!」


「事実ですわ」


 少女――ヴァリナは平然と言った。

 そのとき、黒達教官が口を開いた。


「ヴァリナ」


「はい?」


「提出物」


 ヴァリナが固まった。

「能力分析レポート」


「……」


「三日前締切」


「……」


「出てないぞ」


「え?」


 一瞬、空気が止まった。

「……え?」


 さっきまでの冷笑が、一瞬で消えた。

「そんなはずありませんわ」


「ある」


「確認してください」


「確認した」


「え」


 ヴァリナが慌ててカバンを開く。


 バサバサと紙が飛び出す。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「待つ」


「ここに入れたはずですのに……!」


 横でキオナが静かに言った。

「だから昨日確認しておけって言ったのに」


「言ってないですわ!!」


「言ったよ」


「言われてません!」


 ヴァリナはカバンの中を必死に探す。

 紙がどんどん床に落ちていく。


「どこですの!?」


 黒達教官が腕を組む。

「五分待つ」


「ありがとうございます!」


「出なかったら補修」


 ヴァリナがゆっくり顔を上げた。


「……補修?」


「補修」


 俺と目が合う。


 そして、俺の後ろの広い訓練場を見る。


 沈黙。


「……絶対に出しますわ!!」


 さっきまで俺を見下していたお嬢様は、

 今や必死にカバンをひっくり返していた。


 キオナはその様子を眺めながら、小さく言う。

「面白いでしょ、この娘」


 俺を見る。


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