第四話 模擬戦闘で……
模擬戦という言葉には、もっと緊張感があっていいと思う。
少なくとも、補修クラスのそれは――事故現場だった。
「よーし、今日は模擬戦だ!」
鬼教官の一声で、俺たちは訓練場に立たされた。
「二対二!能力は自由に使え!ただし死ぬな!」
「どうやったら死ぬんだよ!」
組み分けは即決だった。
俺とゴン、対するはシュンとポチ。
「いくぞ増男!」
「待てゴン!お前が先に突っ込むと固ま――」
言い終わる前に、ゴンは気合を入れた。
「うおおおお!!」
――ピタッ。
「ほら止まった!」
像みたいに直立不動のゴンを盾に、俺は後ろから様子を見る。
「シュン来るぞ!」
「見えてる!……けど避けられない!」
ドン。
シュンの攻撃を、ゴンが真正面から受け止める。
硬直筋のおかげで、びくともしない。
「おお!初めて役立ってる!」
「褒められてるのかそれ!?」
その瞬間だった。
ポチが地面に腹を打ち付け、圧を溜め始める。
「今だ!蓄圧放出!」
「やめろポチ!近い!」
ぷしゅっ――。
ポチが跳ね、同時に俺の足元がずれた。
避けようとして後ろを向いてバランスを崩した俺は、とっさに腕を振る。
――ドン!
「ぐはぁっ!!」
次の瞬間、ポチの身体が横に吹き飛んだ。
「は?」
背中側にいたポチに、俺の肘が叩き込まれていた。
「ちょ、増男!?今の何!?」
「知らん!俺は殴ってない!」
俺は後ろ向きだった。
敵に背を向け、逃げる姿勢で腕を振っただけ。
なのに――。
「増男に攻撃された……」
ポチが唖然とする
教官が目を細める。
「……反動か」
「え?」
「お前、後ろ向きに力を出したな?」
言われて、はっとする。
この前の違和感。
さっきの感触。
(反動が……前に出た?いや、正確には背中側か)
試しに、俺はゴンに背を向けて拳を突き出した。
「ちょっと待て増男!」
――ドン。
「うおおおお!?」
俺の身体が、ゴンに向かって吹っ飛んだ
「……え」
「……は?」
「……なんで前?」
俺は立ち上がり、拳を見つめた。
「……まさか、俺……」
答えは、目の前にあった。
殴った方向じゃない。
力を出した向きの“逆”に、反動は来る。
教官が口を開く。
「殴れない能力じゃない」
「……え?」
「向きを間違えてただけだ」
ゴンが床に転がったまま、親指を立てた。
「増男……お前、ヤバいぞ」
俺は、少しだけ笑った。
――この能力、
使い道があるかもしれない。




