第三話 補修
補修クラスの実技授業ほど、世の中で無駄なものはないと思う。
なにせ、集まっているメンバーが全員「使い道がない能力者」なのだ。
「よーしお前ら!」
訓練場に現れたのは、筋肉ムキムキ・目つき最悪の鬼教官だった。
「今日は実技だ!四人一組で模擬戦!以上!」
「雑すぎません?」と俺が言う前に、
「はいゴン前出ろ!」
①剛田ゴンが一歩踏み出し、気合を入れた瞬間――
「……」
ピクリとも動かない。
「固まったな」
「今すげぇ硬いっす!」
「動け」
「無理っす!」
開始五秒で戦力外が確定した。
「次!早見!」
②早見シュンが構える。
「見える……0.1秒先が……」
「じゃあ避けろ!」
「……来るの分かってるのに当たる!」
ドン。
「だから意味ねぇって言われてんだよ!」
「うるさい!今のは俺が悪い!」
「認めるな!」
「次!丸山!」
③丸山ポチが前に出て、深呼吸する。
「昨日カツ丼二杯食ったから、今日は行ける」
「行けるってどこに?」
ぷしゅっ。
ポチがちょっと浮いて、ちょっと転んだ。
「……以上だ!」
教官が頭を抱えた。
「なんでお前ら全員“動作に欠陥”があるんだ!」
「偶然です」
「偶然で済むか!」
そして最後に、俺の番が来た。
「反動増男!殴れ!」
「嫌です!」
「殴れ!」
「自分が吹き飛ぶんです!」
「知ってる!」
仕方なく、サンドバッグに拳を当てた。
ドン。
バッグは微動だにせず、俺だけが後ろに吹っ飛んだ。
「ほらな!」
ゴロゴロ転がって、壁の前で止まる。
「……あれ?」
さっきより、飛距離が伸びてる気がした。
「なあ今の、結構速くなかったか?」とシュン。
「気のせいだろ」と俺。
「床ワックス塗った?」とポチ。
「俺を実験体にするな!」
教官はため息をついた。
「いいかお前ら。能力ってのは“強い弱い”じゃない。“使い方”だ」
「それ、強いやつが言うセリフですよね?」
「黙れ最下位」
授業終了の合図が鳴る。
結局、今日も成果ゼロ。
……のはずだった。
帰り際、俺は何気なく後ろ向きに拳を振った。
――ドン。
次の瞬間、身体が前に滑った。
「……?」
誰も気づいていない。
俺だけが、違和感に立ち止まった。
(今の……後ろ向き、だったよな?)




