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第2話/潜み、散り散りの農民家を

 潜み、散り散りの農民家を歩き抜けていく。眠りに沈んだ街外れが静寂に落ちている。所々の窓から見える蝋燭の明かりが夜にえていた。口が酸っぱいほどに綺麗だ。

 やがて文字の滲んだ看板を暗がりに掲げる服屋を見た。ごみの棄てられた家屋の壁に寄って聞き耳を立てるが物音はない。微かなイビキが僕の売られた先の本屋のあるじに似ていて少し気分が悪い。吐き気があった、肉は無くても目も霞んで言葉を発せられたんだ、どうやらこの体はただの骨じゃないらしい。

 眉をひそめつつ軒先、店内と歩を進めていく。扉も無く、周囲に人も見えない。盗むのは簡単だった。手指を確かなマントの冷たさに撫でられながら外に出て、先ほどのごみに見付けていた血付きの包帯を拾い集める。顔に巻いては結び、血の多く付いたものは手足の包帯として巻いては結んだ。血をもう嗅ぎたくはない。

 さっさっとマントを羽織ってすぐ服屋を離れる。売り物に対価を出せないのが嫌で仕方ない。稼いだら金を置いておくから、それまではどうか忘れたままでいてほしい。

 頭巾フードを深く引っ張った。



 過去、諍いによって滅んだ宿場町はロペル森林に呑まれた。緑園街とはそれ(・・)から再興に成功した街であり、現住民による愛称なんだとか。路地裏から、空が紺から新緑へと明るくなるさまを眺めながら僕はじっと座っていた。葉の緑ではない。にも関わらず空が染まることが、白い化け物が現れたときの趣味の悪い空を思い出させてくる。せめて取っ掛かりになればいいけれど。

 街中は徐々に砂利を踏む音が多くなる。街の外周よりは肌寒さが薄まったとはいえ確かに感じる冷えに対して、決して痛くならない両のほねさすり合わせた。だんだんと密度を増していく人々から流れる日常らしさを多分に含んだ会話へと耳を澄ます。目を閉じながらも、確かに文字として情報が浮かぶようだった。

――「またすぐ会えるかな……」――「だからこの薬飲んだら症状が悪くなるんだって」――「建物高いねー! 都会だねー!」――「ねえ、あの魚腐りかけてない?」――「とりあえず混ぜればいいって訳じゃねーよ」――「格好好いだろ? 誤魔化すなって?」――「まったくあなたは。言い方が遠回しなんですよ」――「いい薫りだ」――「ほら、手が汚れてる」――「あの先生猫好きらしいよ」――

 僕の居た本屋でも教師姿の男がよく来ていた。熱心な人だったのか本を二日に一冊は買っていったのを覚えている。教師……か。突然本屋のあるじも印刷機を導入して本が安くなったとはいえ、それでも嵩張るだろうに。

 教師なら本の在処を知っているだろうと、まずは生徒らしき姿の少女達を追いはじめた。

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