第9話:魔王軍の大将? チートで瞬殺だけど、俺の冒険心はもうバグってる!
冒険者ギルドは、まるで嵐の前の静けさ。緊急クエスト「魔王軍の大将、雷帝ヴォルトを討伐せよ」が貼り出され、冒険者たちは凍りついてる。カズマはギルドのテーブルで干し魚をつまみながら、セレナとメルルに囲まれてげんなり。
「カズマ! 魔王軍の大将だよ! 超クライマックスじゃん!」 メルルが目をキラキラさせる。
「クライマックス? どうせ俺のスキルで一瞬終了だよ。冒険のドキドキ、完全にバグってる…」
セレナが剣を肩に担いでニヤリ。
「今回は私がヴォルトの首を取る! カズマ、チートは援護だけでいいな!」
「援護? 俺のスキル、援護とかじゃなく全クリアボタンなんだけど…」
クエスト情報によると、雷帝ヴォルトは魔王軍の最強幹部で、雷魔法と超速戦闘の達人。湖畔の古戦場で待ち構えてるらしい。カズマ、一瞬「ラスボス戦っぽいな」と期待するが、すぐ現実に戻る。
「いや、どうせチートでワンパンだろ。俺の冒険魂、もうシステムエラー起こしてる…」
湖畔の古戦場、雷雲が渦巻く空の下。カズマ、セレナ、メルルは霧の中を進む。ヴォルトは黒い雷をまとった巨漢で、地面に突き刺さった大剣からバチバチ火花が散る。メルルが風魔法で攻撃を試みるが、雷の結界で弾かれる。セレナが突撃するも、ヴォルトの超速斬撃で押し返される。
「おい、カズマ! 早く何かやれよ!」 セレナが叫ぶ。
「はいはい、了解。スキル名:『現実改変ペン』! 戦場のルールを書き換えて敵を無力化する、シナリオエディターのチート!」
カズマが空中にペンを走らせると、光の文字が浮かぶ。「ヴォルトの雷魔法無効化」「攻撃速度1/10」。次の瞬間、ヴォルトの雷が消え、動きがスローモーションに。セレナが剣で斬りかかり、メルルの風魔法が直撃。ヴォルト、膝をつくが、まだ抵抗する。
「しぶといな、こいつ! カズマ、もう一発!」 メルルが叫ぶ。
「ったく、俺のチート頼りかよ。スキル名:『運命操作ダイス』! 敵の行動をランダムに狂わせる、TRPGのGMチート!」
六面ダイスが空中に浮かび、コロコロ転がる。結果は「ヴォルト、武器を落とす」。ヴォルトの大剣がポロッと地面に落ち、セレナが一気に斬り込む。カズマ、最後にトドメスキル。
「スキル名:『完全終了スイッチ』! 敵を即座に戦闘不能にする、ゲームオーバーチート!」
ヴォルトが光に包まれ、ド派手に消滅。戦闘終了、所要時間4分。
「…はい、終了。セレナ、メルル、活躍できた?」
セレナ、息を切らしながら叫ぶ。
「カズマ! 私の剣、活躍したけど…お前のチートが全部持ってくじゃねえか!」
メルルも帽子を振って不満顔。
「カズマのスキル、すごいけど…なんか、戦うハラハラが薄いよ!」
「それ、俺の心の叫びだ! このチート、冒険の緊張感全部クラッシュさせやがる!」
ギルドに帰還。ヴォルトの雷剣を証拠に提出し、報酬の金貨と魔王軍の秘宝をゲット。受付嬢が「大将を半日で!?」と卒倒しかける中、カズマはげっそり。
「こんなん、ただのスピードランだろ。俺の冒険魂、完全にブルースクリーン…」
夜、宿屋の屋根裏部屋でカズマは考える。現実改変も運命操作も、確かに最強。でも、戦闘がワンボタンすぎて、心が動かない。セレナとメルルは報酬で盛り上がってるけど、俺はただのチートマシンだ。
そこへ、セレナがドカッと部屋に乱入。
「カズマ、ぼーっとしてんなよ。今回の戦い、ちょっとだけパーティっぽかっただろ?」
「パーティ? 俺、ただスキル連打しただけじゃん。冒険感、どこにバックアップしたんだ…」
メルルも飛び込んでくる。
「カズマ! 次は魔王城への総攻撃だって! 最終決戦だよ!」
「最終決戦? どうせ俺のスキルで即クリアだろ。女神、俺のドキドキ返してくれ…」
セレナがカズマの背中をバシッと叩く。
「いい加減愚痴るな! 次はお前も戦えよ。チートなしでな!」
「チートなし!? 俺、ステータスゴミなのに!? 即ゲームオーバーだろ!」
3人で笑い合う中、カズマ、ふと気づく。セレナとメルルの熱量、この騒がしさ…ちょっとだけ、RPGの仲間感ある? いや、ダメだ! 俺のチートが全部上書きするんだ!
「女神、マジで普通の冒険くれよ…。このままじゃ、俺、ただのチートハックだぞ…」




