第8話:補給基地破壊? チートで一瞬だけど、俺の冒険魂はもう圏外だ!
冒険者ギルドの朝、いつもの喧騒が響く。新しいクエスト「魔王軍の補給基地破壊」が貼り出され、冒険者たちがビビりまくり。カズマはギルドのカウンターでエールをちびちび飲みながら、セレナとメルルに囲まれてうんざり顔。
「カズマ! 補給基地だよ! 敵の物資ぶっ壊すなんて、超カッコいい!」 メルルが杖を振り回して興奮。
「カッコいい? どうせ俺のスキルで即終了だよ。冒険のドキドキ、完全に圏外…」
セレナが鎧をガチャリと鳴らし、ニヤッと笑う。
「今回は私が敵の指揮官をぶった斬る! カズマ、チートは最小限な!」
「最小限? 俺のスキル、いつもオーバーキルなんだけど…」
クエスト情報によると、補給基地は森の奥の要塞で、魔族兵と巨大兵器が守備。物資を破壊すれば魔王軍に大打撃らしい。カズマ、ほんの一瞬「基地破壊って派手じゃん」と期待するが、すぐ現実に戻る。
「いや、どうせチートでワンパンだろ。俺の冒険心、もう圏外で電波ゼロ…」
森の奥、鉄の柵に囲まれた補給基地。巨大な魔導砲台がゴロゴロ並び、魔族兵が巡回中。カズマ、セレナ、メルルは木陰から様子を窺う。メルルが風魔法で偵察しようとするが、魔導結界で弾かれる。セレナが剣を抜きかけるが、敵の数が多すぎて躊躇。
「おい、カズマ! さっさと何かやれよ!」 セレナがイラつく。
「はいはい、分かりました。スキル名:『空間歪曲キューブ』! 対象エリアを空間ごと圧縮して破壊する、ストラテジーゲーの最終兵器!」
カズマが手を振ると、青いキューブが基地上空に浮かぶ。キューブがギュインと回転し、空間が歪む。次の瞬間、基地の半分がグシャッと潰れ、魔導砲台がスクラップに。魔族兵はパニックで逃げ惑う。
「…はい、終了。セレナ、メルル、なんか用?」
セレナ、剣を握りしめて叫ぶ。
「カズマ! 私の出番、ゼロじゃねえか! せめて一撃くらい入れさせろ!」
メルルも帽子をバタバタ振って抗議。
「カズマのスキル、派手すぎ! でもさ、戦うハラハラ感が…ないよ!」
「それ、俺の心の叫びだよ! このチート、冒険の緊張感全部消滅させやがる!」
残った魔族兵が反撃に集まってくる。指揮官らしき魔族が炎の槍を構えるが、カズマはため息をつきつつ次のスキル発動。
「スキル名:『自動戦闘ドローン』! 敵を自動で殲滅するAIチート!」
小型ドローンが無数に現れ、レーザーで魔族兵を掃討。指揮官も一瞬で蜂の巣。戦闘終了、所要時間3分。セレナが地面を蹴る。
「カズマ! お前、ほんと戦う意味奪うな! 私の剣、ただの飾りかよ!」
「悪いな、俺のスキル、効率厨の極みなんだよ。女神、このクソ仕様どうにかしろ!」
ギルドに帰還。破壊した物資の証拠を提出し、報酬の金貨と魔族の装備をゲット。受付嬢が「補給基地を半日で!?」と絶叫する中、カズマはげっそり。
「こんなん、ただのRTAだろ。俺の冒険魂、完全にデータ削除済み…」
夜、宿屋のテラスでカズマは星空を見ながら考える。空間歪曲もドローンも、確かに最強。でも、敵との駆け引きもピンチのスリルも皆無。セレナとメルルは報酬でウハウハだけど、俺の心はカラッポだ。
そこへ、セレナがドカッと隣に座る。
「カズマ、今回のクエスト、ちょっとだけチームワーク良かっただろ? 仲間って感じ、悪くねえよな?」
「仲間? 俺、ただスキルボタン押しただけじゃん。冒険感、どこに置いてきたんだ…」
メルルも飛び込んでくる。
「カズマ! 次は魔王軍の大将が動くって! 超ヤバいクエストだよ!」
「ヤバい? どうせ俺のスキルで一瞬だろ。女神、俺のドキドキ返してくれよ…」
セレナがカズマの肩をバシッと叩く。
「いい加減愚痴るな! 次はお前も剣持って戦えよ。チートなしで!」
「剣!? 俺のステータス、ゴミ以下だぞ! 即死コースじゃん!」
3人で笑い合う中、カズマ、ほんの少し思う。仲間とのこの騒がしさ、ちょっとだけ…パーティ感ある? いや、違う! 俺のチートが全部台無しにするんだ!
「女神、マジで普通の冒険くれよ…。このままじゃ、俺、ただのチートプログラムだぞ…」




