第6話:魔王城偵察? チートで余裕だけど、俺の冒険欲はもう空っぽだ!
ギルドの朝は、いつもより静か。緊急クエスト「魔王城の偵察」が貼り出され、冒険者たちがビビって遠巻きにボードを見てる。カズマはギルドの隅で干し肉をかじりながら、セレナとメルルに囲まれてげんなり。
「魔王城だって! 超ヤバいよ、カズマ! ワクワクするね!」 メルルが帽子を揺らして興奮。
「ワクワク? どうせ俺のスキルでサクッと終わるよ。冒険感、完全にログアウト済み…」
セレナが胸を張ってドヤ顔。
「今回は私が偵察の主導権握る! カズマ、チートは最小限にしろよ!」
「最小限? 俺のスキル、節約モードとかないんだけど…」
クエスト詳細によると、魔王城は瘴気に覆われた要塞で、魔獣や罠だらけ。偵察だけでいいらしいが、敵に見つかれば即アウト。カズマ、内心で一瞬思う。
「偵察ミッションか。ステルスゲーっぽいな…って、んなわけない! 俺のチートで全部台無しだろ!」
魔王城の外周、黒い霧が漂う岩だらけの荒野。カズマ、セレナ、メルルは茂みに隠れ、城の門を観察。門番の魔獣は、でかい角のついた竜っぽい奴。メルルが風魔法で気配を探るが、瘴気で魔法が乱れる。
「うっ、魔法が使えない! カズマ、なんかやって!」
「はいはい、任せな。スキル名:『完全探知レーダー』! 敵の位置、罠、隠し通路まで全部可視化する、探索ゲーのマップハック!」
カズマの視界に、3Dマップがポップアップ。魔王城の構造、魔獣の巡回ルート、隠し扉までバッチリ表示。セレナが目を丸くする。
「な、なんだこのマップ!? カズマ、こんなん反則すぎるだろ!」
「反則なのは慣れたよ。問題は、これで偵察が作業ゲーになることだ…」
マップを頼りに、3人は隠し通路から城内に侵入。薄暗い石廊下を進むが、突然、魔法の罠が発動! 床から炎の槍が飛び出し、セレナとメルルが「うわっ!」と飛び退く。カズマ、冷静に次のスキル発動。
「スキル名:『全トラップ無効化ゾーン』! 半径20メートル内の罠を全部オフにするチート!」
炎の槍がピタッと止まり、廊下は安全地帯に。メルルが頬を膨らませる。
「カズマ、便利すぎ! でもさ、罠を回避するドキドキ感とかないの?」
「それ、俺が一番欲しいんだよ! このチート、冒険のスリル全部ぶっ潰すんだから!」
奥に進むと、魔王軍の会議室らしき部屋。魔族の将軍たちが作戦会議中。カズマのレーダーで会話が丸聞こえ。どうやら魔王が近くの村を襲う計画らしい。セレナが剣を握りしめる。
「カズマ、今だ! コイツら叩くぞ!」
「待て、偵察だけだろ? でも…まあ、いいか。スキル名:『一時記憶消去パルス』! 敵の記憶を10分間消す、ステルスミッションの最終兵器!」
光の波動が広がり、将軍たちがボーッと放心。3人はサクッと書類を盗み、脱出。城の外でメルルが拳を振り上げる。
「やった! 完璧な偵察! カズマのスキル、ほんとバケモン!」
セレナもニヤッと笑う。
「ま、今回は私の剣いらなかったけど、次は私が暴れるからな!」
「暴れるも何も、俺のチートで全部終わっちゃうんだよ! 女神、俺の冒険心返せって!」
ギルドに帰還。盗んだ書類を提出し、報酬の金貨と魔王軍の情報をゲット。受付嬢が「魔王城から生還!?」と絶叫する中、カズマは肩を落とす。
「こんなん、ただのデータ収集クエストだろ。俺の冒険魂、完全にフリーズ…」
夜、宿屋の暖炉前でカズマは考える。探知レーダーも罠無効化も記憶消去も、確かに最強。でも、敵との駆け引きもピンチもゼロ。セレナとメルルは書類読んで興奮してるけど、俺の心は冷え冷えだ。
そこへ、セレナがドカッと隣に座る。
「カズマ、今回の偵察、ちょっとスリルあっただろ? 仲間と動くの、悪くねえよな?」
「スリル? 全部俺のスキルで解決したじゃん。どこが冒険だよ…」
メルルも飛び込んでくる。
「カズマ! 次は魔王軍の襲撃阻止クエストだって! 超熱いよ!」
「熱い? どうせ俺のチートで一瞬だろ。女神、俺のドキドキ返してくれ…」
セレナがカズマの頭を軽く叩く。
「愚痴んなよ。次はお前も剣持って戦え。チートなしでな!」
「剣!? 俺のステータス、雑魚もいいとこなんだぞ!?」
3人で笑い合う中、カズマ、ほんの少し思う。このバカ騒ぎ…ちょっとだけ、RPGの仲間感ある? いや、ダメだ! 俺のチートが全部ぶち壊すんだ!
「女神、マジで普通の冒険くれよ…。このままじゃ、俺、ただのチートツールだぞ…」