第4話:魔王軍? チートで即終了だけど、俺のドキドキはまだ休眠中だ!
朝、冒険者ギルドの空気はいつもよりピリピリしてる。掲示板に貼られた緊急クエスト:「魔王軍の前哨基地を叩け」。カズマはカウンターで朝食のパンをかじりながら、セレナとメルルに囲まれてうんざり顔。
「魔王軍って、RPGの定番じゃん! 燃えるね、カズマ!」 メルルが目を輝かせる。
「燃える? どうせ俺のスキルで一瞬で終わるよ。マジで作業ゲー感ハンパねえ…」
セレナが腕を組んでニヤリ。
「今回は私が魔王軍の幹部をブッた斬る! お前のチートは控えめにしろよ!」
「控えめったって、俺のスキル、ONかOFFしかないんだよ…」
クエスト詳細によると、魔王軍の前哨基地は山脈の洞窟にあり、ゴーレムや魔族兵がうじゃうじゃ。カズマ、内心ちょっと期待するも、すぐに打ち消す。
「どうせ俺のチートで秒殺だろ。冒険の緊張感、どこに売ってんだよ…」
山脈の洞窟、薄暗い岩壁に松明の火が揺れる。カズマ、セレナ、メルルは基地の入り口に到着。メルルが風魔法で索敵しようとするが、洞窟内に魔力結界が張られてて失敗。
「うっ、魔法が弾かれる! カズマ、なんかしてよ!」
「なんか、ねえ…。よし、今回は派手にいくか。スキル名:『時空操作ディスク』! 10秒間、敵の時間を停止させて、俺たちだけ動けるチート!」
カズマが手を叩くと、銀色の円盤が空中に浮かぶ。パチンとスイッチを入れると、洞窟内のゴーレムや魔族兵がピタッと静止。セレナが剣を振り回し、メルルが風魔法でドッカン。10秒後、時間再開。敵は一瞬で壊滅、洞窟は瓦礫の山。
「…はい、おしまい。セレナ、斬った気になった? メルル、魔法撃てた?」
セレナ、剣を握りしめてブチ切れ。
「お前! 私の見せ場が10秒って何!? もっと戦わせろよ!」
メルルも帽子をグシャッと押さえて不満顔。
「カズマのスキル、かっこいいけど…なんか、こう、物足りないよ!」
「それ、俺のセリフだ! このチート、強すぎて冒険がただのクリア動画みたいになってんだよ!」
基地の奥に進むと、魔王軍幹部らしき黒ローブの魔族が待ち構えてる。コイツ、炎の魔法剣を振り回し、めっちゃ強そう。セレナが飛び出そうとするが、カズマが止める。
「待て、セレナ。コイツ、俺のスキルで片付ける。1日3回の制限、残り1回だしな」
「スキル名:『敵弱体化フィールド』! 敵のステータスを1/10にしちまうチート!」
魔族のオーラがシュンと萎み、魔法剣もただの棒切れに。セレナが一撃でぶった斬り、幹部はあっさりダウン。
「…なにこれ、弱すぎじゃん。カズマ、お前のスキル、ほんと反則!」
「反則なのは分かってるよ! でもさ、俺だって苦戦したいんだよ! 女神、このクソゲー仕様どうにかしろって!」
ギルドに帰還。報酬の金貨と魔族の装備をゲットしたが、カズマの気分はどん底。受付嬢が「魔王軍の基地を半日で!?」と驚く中、カズマはぼやく。
「こんなん、ただのスピードランだろ。俺の冒険心、マジで瀕死なんだけど…」
夜、宿屋の酒場。カズマはビールをちびちび飲みながら考える。時空操作も弱体化も、確かにチートだけど、敵を倒す爽快感ゼロ。仲間は楽しそうだけど、俺の心は空っぽだ。
そこへ、メルルがドカッと席に乱入。
「カズマ! 次のクエスト、超ヤバいんだから! 魔王の右腕が近くの街に来るって!」
「右腕? ふん、どうせ一撃で終わるよ。俺のスキル、インフレしすぎ…」
セレナもグラス片手にニヤッ。
「カズマ、今回は私が主役な。チート頼みなしで、私の剣でブッ倒す!」
「はいはい、でも結局俺のスキルがトドメ刺すパターンだろ…」
カズマ、ふと気づく。セレナとメルルの熱量、なんかちょっと…楽しそう? いやいや、違う! 俺のチートが全部台無しにしてるんだ!
「女神よ、頼むから俺に普通の冒険をくれ…。このままじゃ、俺、ただのチートBOTだぞ…」