第3話:盗賊団? チートで秒殺だけど、俺の冒険心は秒で消滅だ!
朝、冒険者ギルドはいつもの喧騒。カズマはカウンターでクエスト報酬の金貨を数えながら、隣でメルルがピョンピョン跳ねてるのにイラッ。
「カズマ! 次のクエスト、盗賊団退治だよ! 超楽しみ!」
「楽しみ? どうせ俺のスキルで一瞬で終わるじゃん。RPGの醍醐味、どこいったんだよ…」
セレナがドカッと肩を叩いてくる。
「愚痴ってないでさっさと準備しろ! 盗賊団のリーダー、けっこう強いらしいぞ!」
「強いって言っても、俺のチート前じゃ雑魚もボスも一緒だろ…」
カズマ、セレナ、メルルの3人は、山奥の盗賊のアジトへ向かう。クエスト詳細によると、盗賊団は「血の牙団」。リーダーは元冒険者で、魔法剣士らしい。カズマは道すがら考える。
「魔法剣士か。まあ、ゲームなら中ボスレベル? でも俺のスキルなら…はぁ、つまんねえな」
山の岩場に囲まれた盗賊のアジト。木造の砦に、ゴロツキたちがたむろしてる。カズマたちは物陰から様子を窺う。メルルが風魔法で偵察しようとすると、セレナが止める。
「待て、メルル。あいつら、魔法探知の罠を張ってる。バレたら面倒だ」
「へえ、盗賊のくせに頭いいじゃん。まあ、関係ないけどな」
カズマ、ニヤリと笑って新スキルを発動。
「スキル名:『範囲即死フィールド』! 半径50メートル内の敵を即死させる、MMOの禁断チート!」
指を鳴らすと、砦全体が紫色の霧に包まれる。次の瞬間、盗賊たちがバタバタ倒れていく。リーダーの魔法剣士らしき男も、剣を振り上げたままプスッと気絶。
「…はい、終了。お前ら、戦う気満々だったのに出番なくてゴメンな」
セレナ、口をあんぐり。
「お、お前…これ、戦闘って呼べるか!? 私、剣一振りもしてねえ!」
メルルも目をキラキラさせながら突っ込む。
「カズマ、すごいけど…なんか、こう、物足りないよ! 魔法でドッカーンしたかったのに!」
「だから言ってるだろ! 俺のスキル、強すぎて冒険が作業ゲーなんだよ! 女神、このクソ仕様なんとかしろ!」
砦を漁り、盗賊の金品を回収。ついでにリーダーを縄で縛って町に連行。ギルドに戻ると、受付嬢が目を丸くする。
「血の牙団を…半日で!? カズマさん、ほんと何者!?」
「何者って、ただのチート転生者だよ。ほめてもワクワクは返ってこねえ…」
報酬を受け取りつつ、カズマは気づく。スキルクリエイターの使用回数が、今日すでに2回。残り1回しか使えない。
「くそっ、1日3回の制限、ほんと邪魔。こんなんじゃ、冒険のピンチすら演出できねえじゃん」
その夜、宿屋の部屋でカズマはベッドに寝転がり、考える。このチート、確かに便利だけど、敵を倒すのも問題解決もワンボタンすぎる。
「RPGってさ、苦労してレベル上げたり、戦略練ったり、仲間と絆深めたりするもんだろ? 俺、何してんだ? ただのチートマシーンじゃん…」
そこへ、部屋のドアがノックされる。開けると、メルルがニコニコで立ってる。
「カズマ! 次のクエスト、めっちゃヤバいの見つけたよ! 魔王軍の前哨基地襲撃だって!」
「魔王軍? いや、どうせ俺のスキルで一掃だろ。ワクワクゼロだよ…」
「えー! でもさ、私とセレナの活躍も見たいでしょ? ね、ね!」
メルル、なぜかウキウキ。セレナも廊下から顔を出し、ニヤッと笑う。
「カズマ、明日はお前のスキルに頼らず、私がリーダー倒すからな! 見とけよ!」
「はいはい、どうせ俺がトドメ刺す流れだろ…」
カズマ、ため息をつきつつ、ちょっとだけ思う。仲間がこんなに熱いと、ほんの少し、冒険っぽい雰囲気…ある? いやいや、ないない! 結局、俺のチートが全部ぶち壊すんだから!
「女神よ、マジで俺の冒険心返してくれ…。このままじゃ、俺、ただのチート配信者だぞ…」