第10話:魔王戦? チートで終わるけど、俺の冒険心、ちょっとだけ見つかったかも!
冒険者ギルドは戦場のような熱気。最終クエスト「魔王城総攻撃、魔王ゼノスを討伐せよ」が貼り出され、冒険者たちが士気を上げる。カズマはギルドの片隅で干しイカをかじりながら、セレナとメルルに囲まれてため息。
「カズマ! 魔王だよ! 最終決戦! めっちゃ燃えるよね!」 メルルが杖をブン回す。
「燃える? どうせ俺のスキルで一瞬終了だよ。冒険魂、完全にデリート済み…」
セレナが鎧をガチャリと鳴らし、ニヤリ。
「カズマ、今回は私が魔王をブッた斬る! チートは控えめで頼むぞ!」
「控えめ? 俺のスキル、いつも全クリモードなんだけど…」
クエスト情報によると、魔王ゼノスは無限の魔力と破壊魔法の使い手。魔王城の最深部で待ち構える。カズマ、一瞬「ラスボス戦、RPGの頂点じゃん」と期待するが、すぐ現実に戻る。
「いや、どうせチートでワンパンだろ。俺の冒険心、もうサーバーダウン…」
魔王城の最深部、黒曜石の玉座に魔王ゼノスが鎮座。炎と闇のオーラが渦巻き、城全体が揺れる。カズマ、セレナ、メルルは広間の中央に立つ。メルルが風魔法の嵐を放つが、ゼノスの結界で弾かれる。セレナが剣で突進するも、闇の波動で吹き飛ばされそうに。
「おい、カズマ! さっさと何かやれ!」 セレナが叫ぶ。
「はいはい、了解。スキル名:『無限エネルギーコア』! 俺たちに無限のスタミナと魔力を供給する、RPGの裏技チート!」
カズマの周囲に光の球体が浮かび、セレナとメルルの動きが爆速に。セレナの剣が炎をまとい、結界にヒビを入れる。メルルの風魔法が竜巻になり、ゼノスの玉座を揺さぶる。だが、ゼノスが咆哮し、全方位に破壊魔法を放つ。カズマ、ため息をつきつつ次のスキル。
「スキル名:『時空逆転クロック』! 戦闘を5分前に巻き戻し、敵の行動を無効化する、セーブデータハック!」
時間がグニャリと巻き戻り、ゼノスの魔法が消滅。セレナとメルルが再び攻撃を叩き込むが、ゼノスはまだ倒れない。カズマ、最後のスキルを発動。
「スキル名:『最終決着ブレイカー』! 敵を一撃で消滅させる、ラスボス専用チート!」
光の槍がゼノスを貫き、魔王が爆発四散。魔王城が崩れ始め、3人は急いで脱出。戦闘終了、所要時間6分。
「…はい、クリア。セレナ、メルル、楽しかった?」
セレナ、汗だくで剣を振り回しながら叫ぶ。
「カズマ! 私の剣、活躍したけど…お前のチートが全部持ってくじゃねえか!」
メルルも帽子をパタパタ振って笑う。
「カズマ、すごいけど…なんか、戦うドキドキが薄いよ! でも、楽しかった!」
「楽しかった? 俺、ただスキル連打しただけだぞ。女神、このクソゲー仕様なんとかしろ!」
ギルドに帰還。魔王の冠を証拠に提出し、報酬の山のような金貨と伝説の装備をゲット。ギルド中が「魔王を倒した!?」と大騒ぎ。カズマは疲れ果ててベンチに突っ伏す。
「こんなん、ただのノーダメクリアだろ。俺の冒険魂、完全にアンインストール…」
夜、宿屋の屋上でカズマは星空を見上げる。無限エネルギーも時空逆転も、確かに最強。でも、ピンチも駆け引きもゼロ。セレナとメルルは村人たちと祝賀会で盛り上がってるけど、俺の心は虚無…いや、ちょっと待て。
カズマ、ふと思い出す。セレナの剣が結界を割った瞬間、メルルの魔法がゼノスを怯ませた瞬間。あの時、仲間と一緒に戦ってる感じ…ちょっとだけ、RPGっぽかった?
セレナとメルルが屋上に上がってくる。
「カズマ! ぼーっとしてんなよ! 魔王倒したんだ、祝おうぜ!」 セレナがビール瓶を掲げる。
「祝う? 俺、ただチートボタン押しただけじゃん…」
メルルがニコニコで飛びつく。
「カズマ、でもさ、私たち一緒だったから勝てたよね! パーティって、こういうのじゃん!」
カズマ、苦笑い。
「パーティか…。まあ、確かに、お前らとバカやってるのは…ちょっとだけ、冒険っぽいかもな」
セレナがカズマの頭をバシッと叩く。
「ちょっとだけじゃねえ! 次はお前も剣持てよ。チートなしでな!」
「剣!? 俺、ステータスゴミなのに!? 即死エンドだろ!」
3人で笑い合う中、カズマ、初めて思う。チートで全部解決しても、セレナとメルルの熱量、この騒がしさ…これが、俺の探してた「冒険」だったのかも。
「女神、ちょっとだけ感謝するわ…。でもさ、チートの制限、なんとかしてくれよ!」




