戦場の殺人鬼 3
国王の命により
王城に戻されたエンニ王子。
ドミバレロ伯爵家令嬢イーダが
婚約者になったことを知らされる。
国王とエンニ王子の前で
婚約者として挨拶するイーダ。
エンニ王子は挨拶も返さず、
白眼視し、一言も発しなかった。
何とか言葉を交わそうとするイーダに
冷淡な態度を取り続けるエンニ王子。
王子の態度に不安を感じた国王は、
仲を取り持とうと必死に話すが、
エンニ王子は
その後直ぐに自室に戻ってしまう。
そして結局
食事も執務も自室で行い
婚約者イーダとは
一切会おうとはしなかった。
何日も会えず、
続く冷遇に
苛立ちを覚えたイーダは、
ついに強行手段に出た。
自分の魅力を知れば
きっとエンニ王子は
自分の虜になるはずだと。
彼女は、
秘策である媚薬入りの香水を付け、
寝室に浸入する事を企てた。
自分の家の者に
秘密裏に
エンニ王子の寝室の合鍵を作らせ、
夜の護衛兵士に金品を渡し、
根回しをした。
深夜、
エンニ王子の寝室に浸入したイーダ。
服を脱ぎ、
裸でベッドに潜り込んだ。
直ぐに異変に気付いたエンニ王子は
常に枕元に忍ばせていた短剣で、
曲者の首に刃を当てた。
その状況に怖れ、震えながら
エンニ王子に話しかけるイーダ。
「私はイーダです。
怪しい者ではありません。
エンニ様。」
暗い部屋の中で
顔は見えずとも
その声でイーダと分かった。
エンニ王子は
怒りを込めて言った。
「私の名を呼ぶな。
今すぐ私の部屋から出ていけ。
これ以上、
私に何かしようとすれば
喉元の刃がお前の顔を
傷付けることになるぞ。」
イーダは、
慌ててベッドから飛び出した。
服を抱え、
急いで
エンニ王子の寝室から出て行った。
イーダが部屋から出て行くと、
エンニ王子はベッドのシーツを
全部剥がし取った。
そして部屋の外の廊下へ
投げ捨てた。
ベッドに残った
イーダの匂いに嫌悪したからだ。
それから、
エンニ王子は
朝まで寝ることなく
警戒し続けていた。