戦場の殺人鬼 2
そんな第一王子エンニに対し、
父王であるカルロス・セレブキシンは、悩んでいた。
カシール王国との
戦勝の功労者とも言えるエンニ王子が、戦場での戦闘が余りにも酷いことに。
《殺戮の王子》《戦場の殺人鬼》
と呼ばれていることも王の耳に入っていた。
エンニ王子は18歳の時、
初陣での凱旋後様子がおかしくなり、
気付いた王は、
王立医学部の精神科医で名医と言われていたマイヤー医師に診てもらった。
マイヤー医師の診断では、
初めての戦いにより精神的苦痛を受けている。
のんびり生活し静養すれは、時間が経つにつれ平常心を取り戻す。
というものだった。
それから、側で支える伴侶が必要だとも助言した。
カルロス王はこの名医に従い、
暫くエンニ王子を別城でゆっくり静養させていた。
そしてその間に以前から、
軍の将軍バーミンから薦められていた、
ドミバレロ伯爵家の令嬢イーダとの婚約の話を進めていた。
ドミバレロ伯爵家は10年前、
ある王都の大商会を手に入れてから、
王国内の物流業に関して力を広げてきた貴族である。
軍部への物資取引もあり、
将軍バーミンとの関係が強い。
ここで、
王族しかも第一王子との婚約が整えば、王国中の物流業がドミバレロ伯爵家の手中となる。
ドミバレロ伯爵は、将軍と手を組んで娘イーダとの婚約を国王に申し込んでいた
しかし、国王カルロスの親心は裏目に出てしまう。
もともとエンニ王子は、ドミバレロ伯爵家の令嬢イーダを嫌っていたのだ。
この婚約の話が出たとたん、今までとはまるで違うエンニ王子の態度に、
周りは困惑する事になる。