戦場の殺人鬼 1
大陸一の王国セレブキシン。この国の第一王子は、大陸随一の剣術士である。
だが、戦争により彼は、戦場の殺人鬼と呼ばれてしまう。
世界2大陸の1つピフラ大陸。
西部のカシール王国、
北部のオトロープ王国、
そして大陸のほぼ2/3を領土に持ち
統治しているセレブキシン王国。
そのセレブキシン王国と
隣国のカシール王国は、長い歴史の間に何度も戦いを重ねてきた。
休戦は幾度かあったが、長年の戦闘による累積された怒り、憎しみが
両国間の和平への道を閉ざしていた。
近年では、
カシール王国のテロによる襲撃により、セレブキシン王国の王妃アンナと幼い第一王女リンネアが殺された事を発端とする戦争が起きていた。
セレブキシン王国は、
第一王子エンニを主力とした武装騎士軍の活躍により、戦勝へ導き、
カシール王国に圧勝していた。
エンニ王子が戦場に赴けば、敵兵士らはその姿を見ただけで戦意喪失する。
なぜなら、エンニ王子は一騎当千の猛者と言われるほどの剣術士だったからである。
最初の戦いでは
エンニ王子を国の英雄と讃えていたが、度重なる戦闘により彼は敵国の兵士だけではなく、味方の兵士たちまでにも恐れられるようになっていた。
戦場でのエンニ王子は、敵の兵士を徹底的に皆殺しにしていたからである。
直近での戦場では、まるで殺しを楽しむように敵兵士を切り殺していく。
そんな彼の姿を見た自国の兵士たちは、彼のことを
《殺戮の王子》《戦場の殺人鬼》
と呼んでいた。
斯くしてエンニ王子は、自国、敵国に名を馳せ畏怖の対象として見られるようになったのである。