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戦場の殺人鬼16
式典の当日、
国王は
エンニ王子が
無事出席して
くれたことに
安堵した。
戦時下では、
軍部との関係は
今後も
良好を保たねば
ならないのだ。
軍部にとって
エンニ王子は
強力な戦力であり、
武器なのだ。
だから彼らは
エンニ王子が
何時でも戦える状態か
確認したがっていた。
エンニ王子は、
久々の式典で
躊躇しながら
国王と
レント王子と共に
軍関係者たちに挨拶をした。
沈黙は、貫いたままだったが。
式典後の舞踏会が始まると
レント王子が
目を離した隙に
エンニ王子は
いなくなっていた。
彼は段上の
王子の椅子に座り
ゆっくり大広間を
見渡していた。
そして、
少し考え込むような
仕草をした後
その場から帰ってしまった。
レント王子は
その様子を見ていたが
黙って見過ごした。
『やはり、兄さんは
誰かを捜しているのだろうか。』
『一体、誰を待っているのだろう。』




