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新婚旅行のハズでした  作者: もんどうぃま
第二章 夫の留学

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13/30

13 明暗


次に別室に入って来たのは三人の中で一番年齢が上の方でした。腕を組んで私たちを睨んできます。私は占いの結果をお伝えすることにしました。


「スザンヌ・ノイアー子爵夫人、あなたが関係している鉱山に未来はありません。かなり無茶な工程で掘り進んだようですね。取り残しはありますが、大したお金にはならないと思います。小さな石でも、もしかしたら、うちの親方にお願いすれば利用方法を思いつくかもしれません」


「そう。じゃあ、その親方とやらに連絡してもらえる?」

「お断りします」

「なんでよ!やりなさいよ!たかが職人が!」


ああ、言ってしまいました。

「夫人はもしかして、他国からこの国へ嫁がれた方ではありませんか?」

「そ、そうよ!何か問題でも?」


「なぜ、職人を見下すのですか?この国の職人の地位は男爵位よりも高いのです。それになぜ、店の営業を妨害しておいて、何かしてもらえると思っているのですか?」

今のアダマンテ王国では、職人の地位はそれほど高くありません。ギヨーム会長に教えていただいた時は驚きました。


「だって、鉱山の石が欲しいでしょう?」

「いいえ。鉱山は間に合っています」

「私はこの国の貴族よ!」

「私は隣国の貴族です」

「伯爵家の元令嬢でこの国の子爵家夫人よ!」

「隣国の公爵家の令嬢で次期侯爵ですわ」


「嘘よ!そんな人が商工会会長と商売の話をするはずがないわ!」

私たちの視線を遮るようにギヨーム会長が間に立ちました。

「また思い込みですか。困りましたなぁ」

ギヨーム会長はぽりぽりと頭を掻いています。


「子爵をお呼びしましたから、お引き取りください。あなた方の家との取引はしないと以前も申し上げたはずですが。あなたの迷惑行為への苦情が限界を超えているんですよ」

会長が困り顔で子爵夫人に話しかけました。


「庶民のくせに何なの?この国の鉱山よりも他国の鉱山を優遇して私たちに損害を与えるあなたは売国奴だわ!」

「はぁ。またそれですか……」


慌てた様子で職員の方が駆け込んで来ました。

「子爵は来ないそうです」

「え?」

「離縁するのでそちらで処分してほしいとのことです」

「そんな馬鹿な!私はずっとあの家のために!」


「あー、夫人、これ三度以上揉め事を起こしていませんか?」

「私は揉め事など起こしていませんわ!」

「この国では二度は許されますが三度以上家に損害を与えた者との縁切りが許されているのです。どこまで庇うかはその家によりますが、捨てられたのでしょうね。家で大人しくしていたら良かったのに」


「私は子爵家のために交渉に来たのであって揉め事を起こしたのはあなた方の方でしょう?なすり付けにも程があるわ!」

「子爵家のタウンハウスにも顔を出さないように、とのことです。夫人のお荷物はここに運ぶと言っていました」

駆け込んできた職員の方がギヨーム会長を庇うように立ちました。


「はぁぁー。面倒なことになった……」

ギヨーム会長は頭を抱えてしまいました。


「酷いわ!あの家の鉱山は私が見つけたのよ!感謝もせず無駄に掘り尽くしたあの家が、あの鉱山を活かしきれなかったんじゃない!なんてこと!あの領地にはもう何もないのに!破滅だわ!」


私とバスチアンは同時にお互いを見ました。

「もしや、あなたはシェリンガム伯爵家のご令嬢だったのでは?」

「そうよ。それが何?」

「鉱脈の天使!」


「いやぁね。恥ずかしい呼び名はやめて頂戴。もう天使なんて歳じゃないわ」

やっぱり!子どもの頃、豪運の鉱脈ハンターが居たとお父様から聞いたことがあります。


バスチアンにも会ってみたいと話したことがありました。結局彼女に嫉妬したのか価値を見出さなかったのか、シェリンガム伯爵家から出されて嫁に行ったと、お父様が珍しく愚痴を言っていたのを覚えていますわ!


まだ腕は衰えていないのかしら?何事も試してみないと分からないわよね。

「もしよろしかったら、私と事業提携をしてくださらない?」

「あなたと?なぜ?」

「鉱脈ハンターとしてのあなたと手を組みたいのです!申し遅れましたわ。オリビア・クリスタル。クリスタル公爵家の娘ですわ」


「ああ、あの鉱山の持ち主の。なるほど。あなただったのね。理解したわ。鉱石の加工技術を商会に提供しているのね」

「ご明察ですわ。孤独な環境での情報収集、お見事ですわ」


「伯爵家からついて来てくれた執事がいるの。ここへ荷物を持って来るのも彼だと思うわ。私の一人娘はアダマンテの貴族に嫁いだの。娘のためにも早く家を立て直したかったのだけれど、交渉が下手で空回りばかりで……離縁されてしまったのならこの国にもう未練はないわ」


「では、私と事業提携をしてくださいますか?」

「ええ。私で良いのなら喜んで。とは言っても昔のように鉱脈が見つけられるかはやってみないと分からないわ。念のため伝えるけど、娘には才能はないわ。だから知識を伝えなかったの」


「腕試しに頂戴良い鉱山があるのです。そこが終わったらぜひクリスタル公爵領に。父も私も鉱脈の天使に憧れていたんです。一度で良いのでお話し相手になっていただけたら父も喜びますわ。勿論執事の方とご一緒に」


「分かったわ。諸々の契約は執事同士に任せても良いかしら。私、少し休みたいわ」

「では私の滞在先に部屋を用意してもらいますわ。あ!その前に、夫人が迷惑をかけた方々へのお詫びをしませんと。結局お金で気持ちを表すことになるかとは思います。私の資産から出させていただいて、それ以降は要相談ということでいかがでしょうか」


「試用期間を設けるということね。分かったわ。後は執事を待って話しましょう。私、こういった交渉ごとが下手なの。もうお分かりでしょうけど、すぐ頭に血が上って余計な事を言ってしまうの。きっとまた怒られてしまうわ」

夫人は肩をすくめると部屋を出て行きました。苦笑したバスチアンが、私に向かって軽く会釈をして部屋を出て行きました。


「ギヨーム会長、どこか個室を貸していただけますか?」

「もちろんだ!いやー、鮮やかにまとまったねぇ!」

「嫌ですわ。まだお一人残っていますでしょう?これからが厄介ですわ」

「そうだったね。三人いたね……」


鉱脈の天使の荷物を持った執事はそれからすぐ商工会を訪ねて来ました。やはり少ない荷物です。バスチアンの案内でノイアー夫人、いえ、スザンヌ様とお呼びしましょう。執事の方と三人で私の滞在先のあの家へ向かいました。ここから歩いてすぐの所です。


スザンヌ様との契約はバスチアンに任せて、私はもう一人の方との対面のお時間です。「困難」を抱えた方です。どんな困難なのかはもう一度占わなくてはいけません。


リオネルは私の緊張感を感じ取ってか、私から離れようとしません。ありがたいことです。私を守ろうとするその気持ちがとても嬉しいのです。


三人目の女性は商工会の建物の一室へ通されました。虚ろな眼差し。キュッと結ばれた口角。絡まった毛先。ここ数日彼女はどこに宿泊していたのでしょうか。


彼女はここへ着いた時に少し抵抗したそうで、椅子に縛り付けられていた方です。食事をした後落ち着いたので拘束を解かれてここへ連れてこられました。


着ている服の裾、襟、袖、汚れがあります。貴族ではないように見えます。三人の真ん中くらいの年齢の方。三十歳くらいでしょうか。


椅子に座った彼女の前にお茶とお菓子を並べました。

「どうぞ召し上がって。この街で有名なお菓子ですのよ」

私からお菓子を食べます。チラッとその様子を観察した後、彼女も食べ始めました。普段から毒に気をつけないといけない立場の方、もしくは虐待?様々な可能性が浮かびます。


私は席を移って占いを始めました。はるかのメッセージは三つ。光ったら下がれ、教会、そして佐渡ヶ島です。カードのメッセージは自己犠牲、敗北、疲労困憊。


「あなたは何をするように言われてここへ来たのですか?」

彼女の手元が光りました。私は座っていた場所から素早く後ろに下がり、立ち上がるとリオネルに庇われながら扉の外へ。


商工会の男性が彼女を取り押さえました。腕が折れてしまったようです。咄嗟に取り押さえようとした方向が良くなかったのか、元々骨が脆いのか。腕が曲がらない方に曲がっていました。そのまま痛みで気絶してしまったようです。


知らなかったとは言え、他国の貴族に刃物を向けたとなると極刑は免れないでしょう。せめて私だけの時だったら何とかしてあげられたかもしれません。


はるかが「光ったら下がれ」と伝えてくれたので、素早く対応ができました。リオネルは私をギュッと抱きしめて、

「良かった……」

と声を絞り出しました。少し震えています。



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