誕生日会
”これから勝負がはじまる” という時だった。
ゲームに必要な人数がひとり足りない事に気が付く。「そういえば、あの子はどこ?」
「ほんとだ、どこいったんだろ」「えー、もう始まっちゃうじゃん」
今日は年に一度の【誕生日会】の日。ゲームの参加者たちはこれから居間に集合しようとしていた矢先だった。
「困るよ、ゲームが成り立たないじゃん」参加者のひとりがあわてる。 するとそこへ、、、、
「僕が出るよ」招待されていない赤の他人が急にひょこっと現れた。「だれだよ、君」別の参加者が彼をじろりと見て言う。
「僕が出れば丸くおさまるだろ」「ああ!たしかにね」別の参加者があいづちを打った。
「何言ってるんだよ、こんな知らないやつが急に参加したらややこしくなるだろ!」「でも・・背に腹は代えられないじゃないか」
言い争いをしている参加者たち。すると、「細かい事はいいじゃないの!ゲームが成り立つかどうかのほうが大事なのよ!ほら、さっさと準備して!始まるわよ!!」さらに別の参加者が彼等をたしなめる。
「・・・それもそうだな」「うん、準備しよ」彼女の説得力のある一言に、本来の目的を思い出したような面持ちで他のメンバーは納得したのだった。
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・・・ゲームは白熱していた。
彼女は困っていた。(どっちがババなんだろう?)正直、今年こそは勝ちたいんだが。
毎年、【自分の誕生日会】でゲームに負けるってどうなんだろう。
特にババ抜き。他はともかく、毎年、こればっかりはどういうわけなのか勝てずにいる。
目の前の友達は2枚のカードを突き出し、出方を待っている。他のメンバーが固唾を飲んでその様子を見守る。相手は勝利を確信しているようで、なんとなくにやついているのがわかり、少しばかり腹が立つ。
数秒が経った。(・・・だめだ、わかんないや、もうこっちでいいや)彼女は観念したように向かって左側のトランプを相手の手から抜き取った。その時、相手の顔が「あっ」という驚きに変わったのには気が付かなかった。
抜き取ったトランプをひっくり返してみる。 手元には2枚のクローバーの4が残されていた。
「あーあ」目の前の友達が苦笑いしながら、ひらりとJOKERを捨てる。
やった! 勝った!! まじで!!!? ・・・・・・・・・・・しかし。
「ん?」
彼女は手元の2枚のクローバーをじっと見比べる。
「・・・・・・・。」
(デザインが少し、違う?? 気のせい????)
札を持ったまま、じっと動かない彼女を勝利感に浸っていると勘違いしたのか、周囲の皆は早々にカードを片付け始めていた。 はっと我に返り、彼女もあわててそれにならう。
ま、いいか。勝ったんだし♪
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パーティーが終わったその晩の事。
「協力してくれて、ありがとう」JOKERは言った。
「いや、こちらこそ役にたててよかったよ」クローバーの4はそれに答える。
「以前の子は気がつかないうちにどこかへ行ってしまったみたい、前から元気が無くて気になってはいたけど、みんなショックを受けていたわ」
「・・そうなんだ」
「あなたが来てくれてすごく助かった、ずっとここにいてくれるよね?」
「僕、ここにいて・・いいの?」
「もちろん!皆気が付いていないし、君の演技、なかなかだったよ」スペードの5が言った。
「いや、いつか気が付いたって関係ねえよ、もうお前は俺たちの仲間なんだから」ダイヤのAが力強く言った。
「ありがとう、みんな、これからよろしくおねがいします」
引っ越しの際にはぐれてしまった”クローバーの4”は、こうして新たな居場所をみつけるという幸運にめぐまれたのであった。
完