85 王都へ
「いて、いて、いってー」
ケリーが右肩を押さえ痛がっている。
「アレでは強化に身体が耐えられる訳なかろう」
オカリナが見かねて駆け寄り、ケリーの背中から右肩、腕を触診する。
「結構なダメージぞ」
少し怒ったようにライトを見る。
「師匠からも身体強化を使う時は気を付けろって言われてました。
ごめん、ケリー」
ライトはそう言ってケリーの近くまで来て謝る。
そう言う間にリータがタンクトップを縫い合わせている。
「いや、主、謝らないでくださいよ、私が頼んだことだし」
「魔力、込めすぎたかな?リータと同じくらいだったんだけど・・・」
「リータはウイングブーツを履いとる、あとはトゥーハンデッドソードの重さじゃろう」
オカリナはそう言いながらケリーの腕を釣るように布を肩から掛ける。
「ありがとうございます」
「ふん、しばらくは剣が振れんぞ、大人しくしておれ」
「えええぇ、それは困る」
「ヒールで治すのは駄目なの?」
ライトが聞くと
「細かい筋の断絶だ、自然治癒すれば強くなろう」
「強くなるなら、我慢します」
ライトが心配そうにしてから振り返り
「リータも程々にね」
「わかったわよ」
修練を終わりにして、皆で買い物に行く。
もちろん、食糧の充実が最優先だ。
「オカリナは食べ物はなにが好きなの?」
「我らは須らく森で生きる故、森にあるものを好む」
「肉も魚も食べるよね」
「無論、だが、油分や香辛料は好まん」
ライトは自分の森での生活を思い出し、献立を考える。
「ライトよ我の食事を考えてくれるのは嬉しいが、我とて備えはあるぞ」
そう言って自分のマジックバックを撫でる。
「一緒に食事するのが楽しいから」
ライトがカラットした笑顔で応える。
「ライト、ぬしは・・・人の子等が、皆、ライトの様だと泰平な世になるのだがな」
カインズの街から王都リンカーまでは乗合馬車を使えば10日ほどで付くのだが、
ギルマスがDKに対してオカリナの特別護衛依頼と御者付きで2頭引きの箱馬車を手配してくれた。
「礼を言う、ギルドの長殿」
「ああ、チビ共をよろしく頼む」
乗合馬車よりも良い馬車なので行程も6日に短縮でき、揺れも少ない。
そのことで一番恩恵を受けていたのは・・・
「はぁ、これくらいなら耐えられるヨ」
馬車の苦手なヨークであった。
リータは御者席に座り、警戒と馬の扱いを学んでいた。
ケリーは腕を釣ったまま大人しくしていたが、
3日目には大分回復して、4日目からは休憩度に剣を振っている。
ライトとヨークは世界のことや魔法のこと、古エルフ語のことなどを順々にオカリナから聞いている。
王都に近づくにつれ、村や町の人口が増し、カインズよりも大きい街もあった。
そして、どの町や村に、まだ戦争の影響がでていないので、ライトたちには緊迫感はあまりなかった。
ただ、オカリナの心中は定かではない。
「オカリナは心配じゃないの?」
ライトはいつもの通り、真っ直ぐに聞く。
「心配しても詮無きことだ」
「たぶん、ギルマスはそのことを察して馬車をだしてくれたんだヨ」
「恐らくな」
ライトは通り過ぎる町や村々を眺めながらいつか、自分の足で回ろうと心に誓った。
天候も乱れもなく行程は順調で予定通り王都リンカーの近隣に到着する。
しかし、
今までの村や町と違い、王都周辺にはただならぬ緊張感が張り詰めているのがライトにもわかった。
騎士や兵隊が道を行ききし、衛兵の警戒にも重々しさが感じられる。
そんな中、御者が衛兵にギルマスからの手紙を見せるとすぐに偉そうな士長らしき人が自ら馬で王城まで案内兼護衛をしてくれるらしい。
ヨーク曰く、
「手紙に紅星流のオカリナのことが書いてあるからだよ」
とのことだ。
「でも、まさか私達まで王さまに会うなんてことはないヨ・・・ね?」
「帝国と違って、城と言っても大きな屋敷程度だからな、即謁見やもしれぬぞ」
「え、王さま、会ってみたい!」
「さすが主」
「いや、ダメだヨ、謁見なんて心臓飛び出ちゃうヨ」
常識のあるヨークが1人、青くなっているのだった。




