78 アクセル・オン
夕暮れの街道をリータと手を繋いで走る。
手はリータからきつく握られているので離れない。
幼少の頃、森に行くときはいつも、こんな風にリータに手を握られていた。
ライトは同じ強さで手を握り返し、加速してリータの前に出ようとすると、
リータは更に加速して、抜かれまいとする。
心拍数が上がり、体温が上がり、気分まで高揚してくる。
ライトは無属性の魔力の流れを意識して、足に身体強化をしようとした瞬間、
繋いでいるリータの手から魔力が吸い取られ、
ビューン
リータが急加速して、視界から飛んで行った。
ライトは慌てて、加速してリータの後を追うが、視界の先にリータの姿はない。
あるのは突き破られた藪と雑木林。
ライトは走るのをやめて、
「リータ!」
叫ぶ。
「ライト、こっち」
藪の先から声がするので、雑木林に入って行くと、蔦や蔓に絡まっているリータがいた。
「大丈夫、リータ?」
絡まっているリータに問いかけると
「あんた、何したの?」
リータは絡まったまま問い返す
「身体強化しようとしたらリータに魔力吸われた」
「そうなんだ・・・わかったから、早く助けなさいよ」
「え~どうしよっかな」
ライトにしては珍しく意地悪を言ってみたが、
「ナイフで抉るわよ」
「はい、すぐ助けます」
ライトはマジックバックから手斧を出して蔦や蔓を切っていく。
「私がライトの右手を握ってたからかしら?」
救出中にもリータが話しかけてきた。
「確かに、魔力循環してるのにちょっと似てるかも」
絡んでいる蔦や蔓を切り、リータが動けるようになると、
「ん」
そう言って左手を出してくる。
街道に戻り先ほど同様に右手で握り、走り出す。
走りながら、魔力循環するつもりで魔力を動かそうとすると、
ビューン
また、リータが加速していった。
ライトも軽く走って着いて行くと、少し先でリータが立ち止まっていた。
「どうしたの?」
「足が・・・」
そう言われてリータの足を見ると小刻みに震えている。
「無理するから・・・」
「そうね、でも、使えるかも・・・・ん」
今度は両手をライトに向け差し出す。
「うん?」
「にぶいわね、足が動かなくて難儀してるわ」
「ああ・・・え」
「ん」
リータは再度、手を差し出す。
「わかったよ~」
ライトはリータの背中と膝裏に手を入れて、要望通りお姫様抱っこをする。
リータはライトの首に回した手に力を入れ、ライトの耳元で囁くように
「ありがとう・・・ライト」
と言った。
アカマット村まで街道を歩いきながら、さっきの加速について話をしていた。
「使えるかな?」
「対人戦とかボス戦に使えるわよ」
「でも、危ないよ」
「使い方次第ね」
この時点でリータがこの技を使うとライトは確信する。
「ラピッドアクセルって技があった気がする」
「何よそれ」
「技の名前、アクセル・・・アクセル・・・アクセラ・リータなんちゃって」
「・・・ちょっとカッコイイわね」
「え??」
後にそれが彼女の二つ名になるとはライトは思ってもみなかった。
ライト達が村に着くころには夕闇が迫っていた。
「遅くなっちゃったわね」
「リータが走り過ぎだよ」
「そうね、悪かったわ」
「いいよ」
そう言ってライトはお姫様抱っこを止めてリータを下ろす。
リータの家に行くとアルマンドとオカリナが待っていた。
「リータ」
心配そうにアルマンドが声を掛ける。
「もう大丈夫よ」
リータが応え、そのままオカリナの前まで歩き、まじまじと顔を見る。
「これがお母さんの顔」
「ああ、よく似ている」
「美人ね」
「当り前だろ、お前の母さんだ」
「よく、お父さんが結婚できたわね」
「・・・この野郎!」
父娘が笑い、ライトとオカリナも笑った。
「リーファ!」
「どうして・・・?」
ライトの両親も驚いていた。
アルマンドが抱えていたことも手伝った。
ライトがみんなに説明する。
「これはオカリナの偽装魔法でレグ=クレスの鑑。
リータに似せて自分に写す魔法なんだって」
ライトがそこまで言うと、オカリナは魔法を解く。
耳が長くなり、目が切れ長になり、睫毛も長く、手足もスッと細く長くなる。
「我はオカリナ、怪我したところをライトに助力していただき、行動を共にしている
本日はお招きいただき感謝の念に絶えない」
ダダダダッ
「ほんとにエルフだ」
ティファが掛けてきたのをリータがキャッチしたがお構いなしに指を差し顔を近づける。
「ああ、エルフだ」
オカリナはそう言ってティファの頭を撫でる。
「話は後だ、晩御飯にするぞ」
タイラーがそう言うとライトが素早く食事の準備を始める。
そう、ライトの家では食事の優先順位は何よりも高いのである。




