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76 レグ=クレスの鑑

ポポに寄りかかりながら、

オカリナが足元の水たまりに腰から下を浸け、沐浴の恰好をしている。

上半身に薄布だけを引っ掛け、下半身は裸のようだが・・・


慌てる様子もなく

「予想より随分と早いな」

オカリナの赤い瞳がライトを見る。

「うん、母さんが連れて来いっていうから」

「ご母堂が・・・そうか」

オカリナは何かを察したらしく、水から起き上がりかけ、

ここでリータによって2人が回れ右をさせられる。


その後、ライトの後ろ手のクリンによって洗浄されたオカリナから布擦れの音が聞こえる。

「便利な魔法よな」

「冒険に重宝させてもらっているわ」


「本当にエルフとマンティコアだな」

2人のやり取りを聞いて、アルマンドが警戒を解いて近づいてくる。

「ポポをここに置いて行っても大丈夫?」

「問題ない。こやつとは里でもいつも一緒にいるわけではないのでな」


「危険はないのか?」

アルマンドがオカリナに聞く

「ポルポローネは敵愾心が無ければ自ら人族を攻撃することはない」

「・・・そうか」


視界の先で既にリータがポポの鼻先や顎舌を撫でて、ポポが嬉しそうに喉を鳴らしている。

それを見て、

「リータの父でこの森で狩人をしているアルマンドだ」

ライトが昔、習った狩人流の左肩に右手を添える挨拶をする。

「我はオカリナ、人の子、ライトの助力を受け、共にいる」

オカリナはアルマンドの目を見返し挨拶に応える。


「傷の具合は?」

隣からライトが聞く

「出血は止まったが痛みがあり歩くのに難儀する」

そう言って太腿の縫った傷を見せる。

「矢傷、リータが処置したのか?」

「うん、鏃が残ってたから、手際良かったよ」

傷には自分が教えた処置がしてあり、改めてリータを見る。

「ぬしの娘にも世話になった。かたじけない」

オカリナは感謝を示す手のポーズをする。


(アレ)が役にたったなら良かった」

そう言って、オカリナの背中と膝裏に手を回し、抱え上げる。


「は、な・・・」

オカリナが声を上げる。

エルフは見た目以上に軽く、アルマンドは逆に驚く。

「軽いな、怪我人・・・いや、怪我エルフは大人しくしてな」

そう言ってアルマンドは歩き出す。


「お父さん、やるわね」

そう言いながら、なぜかリータがライトの方を見てくる。


お姫様抱っこされたままオカリナはポポに顔を向けて、

「大人しくしておれ」

そう告げる。




「セェヘ・ニューベーメン?」 

「うむ、ここより北西にある獣人の国の更に北、ハイドランドに我らの森はある」

歩きながらライトがオカリナに色々と聞いていた。

「獣人の国で怪我をしたの?」

「そうだ、疑問なのは何故、人族がセェヘ・ニューベーメンにいたのかじゃが・・・」


元々、獣人はエルフに対して友好的とまでは言わなくても敵対的ではなかった。

それなのにセェヘ・ニューベーメンにエルフ狩りの部隊がいたことが腑に落ちないらしい。


「何かが動いているやもしれんな」

オカリナは目を閉じて何かを思い悩む。


「この国の王さまはどんな人?」

「謁見は未だだが、初代賢王カズスは王弟よりこの国を独立させ、帝国の食糧庫としての確固たる位置を確立させた」

「見てきたような話し方ね」

リータの指摘に

「フフ」

オカリナが不敵に笑う。

「食糧庫!」

ライトは嬉しそうに笑う。



そんな話をしていたら、村の付近まで来たので姿を隠すためにローブを着せようとしたライトを制し、

「これでよかろう」

オカリナはそう言って何かの魔法を使うと、

金髪赤目の見た目16歳くらいの少しリータに似た美少女へと変容した。


「すごい!リータの姉妹みたい!何て魔法?」

「レグ=クレスの鑑」


抱いているアルマンドがそれを見て硬直している。


「お父さん・・・」

固まっている父親にリータが声を掛けながら近づくと

ハウハウと動いているアルマンドの口から


「・・・リーファ」


こぼれるように紡がれたその名前が誰の名なのか皆が理解した。


「すまぬ!」

魔法を解こうと動くオカリナに

「待て!・・・待ってくれ・・・そのままでいてくれ」

アルマンドが懇願にも思えるように止める。


今度はリータが変容したオカリナの顔を見て固まっている。


ライトも吸い寄せられるように視線がオカリナの顔に向き・・・


「リータのお母さん」

そう無意識に口からでた。





「浅慮であった」

「いや、娘に母親の姿を見せてやれた・・・それに」

「ん?」

「いや、いい」


オカリナの使った魔法は隣人の姿を真似て自信に投影するらしく、被写体がリータだったそうだ。


固定化の魔法から解けたリータは振り返り村の方に走って行き、ライトは一瞬アルマンドに目配せをしてそれを追う。


リータは身体強化を使ったようで、凄まじく早い。

ライトも全力で身体強化を使うが全然、追いつけないが、見失うことはなかった。


やがて、恐らく隣村の近くの大きな木に蹴りを入れているリータに追いつく。


「何なのよ!何なのよ!・・・・ハァハァ」

ゲシゲシ

「何よ!お母さんって・・・・プッハァ」

ゲシゲシゲシ


ライトは黙ってリータの少し後ろに立っていた。


「お母さんって・・・・」

ゲシ


「お母さん」

スンッ


リータの肩が小刻みに震えて


気丈なリータが泣くところをあまり見たことがないライトだったが


リータの肩に触れ、振り向かせ、頭から抱き寄せる。


「何でよ何よ」

そう言ってリータはライトの胸をボカボカ叩いていたが


「お母さん・・・うえーん」

ライトに抱き着き子供のように泣き始めた。


ライトはただ黙って、リータを抱きしめ、頭を優しく撫でていた。

オカリナの恰好について加筆しました。

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