75 父親たち
昼下がり、いつもより微睡みが長く、中々覚醒しない頭を実家の安心感が助長するかのようにベットから出れないライトに、
ダダダダダダっ!ボフっ
駆け足からのダイブで強引に覚醒せざる得ない状況が襲う。
「お兄ちゃん、いつまで寝てるの!」
もちろん、その声の主は妹のティファなのだが、
「まだ眠い・・・」
ライトが半開きの目を擦りながらティファに言うと、
「もう、みんな起きてるよ、リタ姉も来たし」
女性陣の方がライトより徹夜に強いようだ。
ベットから降りて居間に向かうと女性4人が楽しそうに話していた。
「あら、ライト、おはよう、あなたまた、随分と頑張って女の子たちを守ったみたいね」
エレナは笑顔でライトを迎える。
「父さんにそうしろって言われたから・・・・」
「お兄ちゃんってむっつりスケベだったんだね」
ティファの言葉になぜかパーティーメンバーが頷いている。
「一通り、ライトとの出会いをお母さんとティファちゃんに話したんだヨ」
「主は命の恩人で尊敬する主だ」
「まあ、しょうがないわ、ライトだし」
「お兄ちゃん、ドワーフの女の子にまでプロポーズされたんだって?」
「そんなことないよ、、、父さんは?」
ティファの問をはぐらかすも男女差1対5に居心地が悪くなってライトは母親に尋ねる。
「畑で麦撒きの準備をしているわ」
「ちょっと行って来る」
そう言ってライトは家を飛び出す。
「顔を洗ってらっしゃい」
ライトの後を追うように母の声が追いかけてきた。
外に出て、井戸で顔を洗っているとリータが布を渡してくれる。
「私のお父さんも一緒に」
「そうだね」
ライトは頷いて畑の父親を捜す。
リータは自宅へと戻って行った。
風が気持ちいい。春の花が色とりどりに方々で咲いていて、ライトは新鮮な感覚を受ける。
一年前とまるで変わる所のない村だったが離れたせいか少し違って見える。
麦畑の予定地で父親を発見し、駆け寄る。
「父さん、残ってる仕事は?」
「急ぎのものは特にない、晩飯ようにガニッシュとリークを収穫するくらいだ」
「手伝うよ」
「ああ」
予定地からこじんまりとした畑に移動する。
ライトはガニッシュを2株とリークを2株掘り起こして、クリンの魔法で綺麗にする。
「おお、便利だな」
「こう見えてもD級冒険者の魔法使いだからね」
ライトは父親におどけて見せる。
タイラーはライトの顔を見て、何も言わず頭に手を乗せる。
そんな父親に
「あとで、あって欲しい人がいるんだ」
「何かあったのか?」
ライトは周りを見回してから少し小声で
「うん、エルフを助けた」
「・・・そうか」
タイラーは一瞬、目を丸くしたがそれだけ言って家の方へと歩き出す。
家では女性4人が大盛り上がりで話し合っていた。
「ライトのサンダーボルトが副ギルド長の魔法障壁を8層も貫いたんだヨ」
ヨークはライトの真似をするように左手を伸ばして熱弁していて、ライトに気が付かない。
「・・・ヨーク」
「あ!」
ヨークは我に返り少し気恥ずかしそうにうつむく。
「あ~あ、お兄ちゃん、戻ってきちゃった・・・」
「主がパーティー名をDKにした話をしていたところだ」
「ライト、頑張ったんだね」
エレナは嬉しそうだ。
「わたし、お姉ちゃんたちに子豚みせてくる」
ティファはそう言ってヨークとケリーの手を引いて外に連れ出す。
入れ替わりにタイラーが入って来たので改めて話をする。
「エルフ狩りに遭って怪我したエルフを助けたんだ、今は森にいる」
「エルフ・・・珍しいわね」
「あと、エルフの友達も羽を怪我してて・・・」
「友達?」
「うん、マンティコアのポポ」
「マンティコア・・・・」
「良い子だよ賢いし」
「フーッ」
黙って腕を組んで話を聞いていたタイラーが一つため息をする。
「心配ないよ大人しいし・・・」
「心配なのはお前だライト」
「どうして?」
「貴族がそのエルフを欲しがったらどうするんだ?」
「・・・守る」
「貴族を敵に回すのか?」
「そうじゃないけど」
「価値が高いものを手に入れると理不尽が降りかかる」
「僕が手に入れたわけじゃないよ!」
「同じことだ」
「タイラー・・・お父さんはね、あなたが大切なのよ」
エレナが父親の手に自分の手を重ね、ライトを見て言う。
「連れてらっしゃい」
「うん、わかった」
ライトは家を出て、隣のリータの家に向かう。
リータの家の前で大きな声で
「リータ!」
そう叫ぶとリータと父親が家から出てきた。
「おかえり、ライト」
「ただいま!おじさん」
「リータは街でちゃんとやってるかい?」
「リータ、強いよ、ダンジョンも一発で踏破したし」
「ほら、言ったじゃない!」
どこの親も子供は心配のようだ。
「で、どうしたの?」
「母さんが連れて来いって」
「そう、わかったわ、父さん、ちょっと一緒に来て」
そう言ってリータは父親の手を引いて一緒に外にでる。
3人、駆け足でアカマットの森を進みながら会話をする。
「エルフ?」
「そうよ、ライトが助けたの」
「それで王都までそのエルフと一緒に行くのか?」
「うん、怪我をしてほっとけなかった」
「そうか・・・」
リータの父アルマンドは考える目だ。
「難しいこと?」
ライトがアルマンドに問う。
「そうかもな、エルフを見たら捕まえようとする人間は多い」
「そうなんだ・・・おじさんも?」
「今は必要ないが、俺も若い頃なら考えたかもな」
そんなライトと父親の会話をリータは黙って聞いている。
「あと、マンティコアがいるよ」
ライトの不意の一言に
「え!」
驚き、アルマンドは無意識に背中の弓を確認しようとして手を止めた。
それを見てリータが笑う。
「アハハ、お父さん弓は持ってきてないもんね」
「危なくないのか・・・?」
「大丈夫よ、昨日一緒に遊んだわ」
「遊んだ・・・」
アルマンドには娘がマンティコアと遊ぶ姿が想像できない。
「もうすぐ着くよ」
「こんな近くに・・・」
駆け足を止め、藪の向こうにいるであろうエルフに声を掛ける。
「オカリナ!」
ライトが叫び少しすると、
「ライト、良く戻った」
返事がする。
「行くわよ」
やや尻込みをするアルマンドの手を引いてリータが藪に突進する。
藪を抜けると巨大な魔獣に寄りかかる美しいエルフが3人を見ていた。




