74 ライトの家
雑多な小鳥達が鳴き始めると同時に朝日が昇り始める。
アカマットの森の朝はこうして始まるとライトは知った。
湿った新鮮な空気が寝ずに移動して疲れた肺や喉にさわやかな癒しを与えてくれる。
あまり村の人がこない森の奥にオカリナとポポを残して冒険者パーティーDKのメンバーは村に向かう。
人避けの結界は張らないで置いた。
村の入り口に立つ頃には早い人は動き始めていたので顔見知りにライトとリータは笑顔で手を振りながら帰還を告げる。
「じゃあまた後で」「ちゃんと寝なさいよ」
ライトとリータは手を振り別れて各々の家に入って行く。
「ただいま!」
「あら、ライト、おかえりなさい」
ダダダダダダダダッ
「お兄ちゃん!」
母の出迎えの声と同時にティファが勢いよく掛け飛びつきをしてくる。
「お土産!ってこの人達は?」
ティファが飛びついたライトの肩越しに2人の女性が立っているのが見えた。
「僕のパーティー仲間」
ライトはそう言って2人に向き直る。
「ライトのパーティーのヨークだヨ」
「主の奴隷、ケリーです」
ライトにしがみついているティファに2人が挨拶をする。
「奴隷って・・・」
そう言いながらライトからずり落ちてティファも挨拶をする。
「妹のティファです」
ティファはオマセにスカートをつまんでカーテシーをして見せながら、2人の顔を交互に見ている。
「ライト、お客さんなら入ってもらって」
母親のエレナが促す。
そこで初めてライトは母親の姿を見るのだが、大きなお腹を抱えてキッチンで動きづらそうにしていた。
「母さん!」
そう言ってライトはエレナに近づき手を貸してテーブル近くの椅子に座らせる。
「フゥ・・・おかえりライト」
エレナは一息ついて改めてライトの顔を見ながら言う。
「お腹、おっきいね」
ライトが目を大きくして言う。
「もう、いつ産まれてもおかしくないわ、それよりお客さんをいつまでも立たせていては駄目よ」
エレナはお腹を撫でて見せ、立ち尽くしている2人に目を向ける。
「入りなさい」
2人の後ろから声が掛かる。
ヨークとケリーはびっくりして振り返ると
ライトの父親のタイラーの大柄にまた驚く。
「ただいま!父さん」
タイラーもライトの顔をよく見てから
「良く戻ったな、ライト」
それだけ言って顔を背ける。
「ライト、ほら、座ってもらいなさい」
「そうだね、ちょっと待ってて」
ライトは駆け出して納屋から予備の椅子を出してくる。
「ヨークお姉ちゃん、ケリーお姉ちゃん、こっち座って」
ティファが2人の手を引いて自分とライトの椅子に2人を座らせる。
「ライトのパーティーのヨークです」
「主の奴隷、ケリーです」
2人は両親に頭を下げながら椅子に座るとそこに丸太椅子を二つ持ってライトが戻って来て、
「僕の父さんと母さんだよ」
そういって2人に紹介する。
「ご飯はまだ?」
エレナの問に
「まだだよ」
ライトが応えると
「アラアラ、朝は少な目なのよ」
そう言って朝食が準備されているテーブルを見る。
鳥と豆と野菜のスープ、黒と赤のベリー、サラダとパンが並んでいた。
「大丈夫だよ」
ライトはそう言って、マジックバックから皿を出し、ケジャク、ケモモ、バナジを盛り
次の皿にトマテ亭のパンと屋台のクレプを並べた。
「すごーい!美味しそう!」
ティファが椅子に立ち前のめりで見回している。
「あら、トマテ亭のパン?」
「え!そうだよ、母さん」
「懐かしいわ・・スープを」
そう言って体を動かそうとしたエレナを
「私が!」
ヨークが制して自分が動こうとすると
「・・・ヨークお姉ちゃん、こっちだよ」
ティファが手を引いてキッチンに連れて行く。
木の皿に2人で3人分スープをよそってテーブルに戻ると
「ライトが無事に戻ったことに感謝します」
タイラーがそう言って指を組み目を閉じる。ライトの家族も指を組み目を閉じる。
ヨークとケリーもそれを見て真似をする。
「じゃあ、いただこう」
タイラーの言葉で食事が始まる。
「ねーねーお兄ちゃん」
「いいよ、好きなの食べな」
「やったー!お兄ちゃん大好き!」
ライトがパンやクレプの説明しているが、
ティファは既に右手にパン、左手にクレプを持って口の周りにソースを付けながら食べている。
「道は通れたのか?」
タイラーがライトに問う
「うん、通れるようになった」
「何で朝に?」
エレナが不思議そうに尋ねる
「夜通し歩いてきたから」
「それは疲れたでしょう」
エレナは苦笑いを浮かべ
「うん、食べたら寝る」
そう言いながらライトはもう眠そうだ。
ヨークが真剣にスープを味わいながら食べている。
街での料理と違い、調味料の類は少なく、苦みやえぐ味もあるが素材の味に力があると感じる。
ケリーも自分の村のことを思い出しながら感慨深げに味わっている。
そしてライトは
「美味し~い~!街のご飯も美味しいけど、母さんのスープが一番美味しい」
「お兄ちゃん!ティファも手伝ったんだよ!」
「そか、夜は肉祭りだね」
「やったー!すご~い!」
脈絡はよくわからないが兄妹の会話なんだなぁとヨークは思って見ている。
食事も終わり、寝る段階になると、エレナの指示でライトとティファの部屋のベットにヨークとケリーが寝て、両親のベットでライトが寝ることになった。
3人共慣れない徹夜ですぐに眠りにつく。
ライトは辛うじて、寝る前に肉のブロックを2つマジックバックから出して父親に渡しておいた。




