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69 あっちにはいかないほうがいい

翌朝、ライトは宿の裏手の井戸で身支度を整えていると女性陣も揃って出てきて挨拶をする。

「おはよう」

「「「おはよう」」」

今回はヨークが一番眠そうにしている。


「ライト、昨日、私、何か変な事言わなかった?」

「どうしたの?」

「良く憶えてないんだヨ、お肉食べて気持ち良くなったところまでは覚えてるんだけど・・・」

「べ、別に・・・変じゃないと思うよ」

「それならいいんだヨ」


ライトは昨晩、ヨークをお姫様抱っこして部屋に戻ると、リータとケリーから不公平だと言われ・・・

2人にも同じことをせがまれた。

ライトは女に優しくなのでこういう押しに弱い・・・のであった。



マジックバックの中から出来物で朝食を済ませ、宿屋の主人に事情を説明すると、主人と同世代の村に知り合いに荷運び用の馬車で良ければとアカマット村の2つ手前の村まで行ってくれる話を付けてくれた。


なぜ2つ手前の村までなのか尋ねると、よく分からないがそこから先の治安が悪いらしい。

村人が行方不明になったり、見たことのないモンスターの影のようなもの・・・話を聞いても要領を得ない。

ライトがリータの顔を見るとリータは手を広げ首を傾げる。


それでも大分ありがたいのでお願いすることになり、DKパーティー全員はすぐに車上の人となる。


普段、馬車での移動の際は各々、自由に過ごしていることが多い。


ライトは大概、外に目を向け風景を楽しんでいることが多い。

ヨークはライトと一緒に風景を見ていることもあるのだが、最近は本を読んでいることが多い。

今回も副ギルド長から借りた古エルフ語の本を持ち込んでいたが、

乗合馬車と違い座りが悪く、しかも悪路だったので、たちまち気分が悪くなってしまう。

ので、今はライトがヨークに膝枕している。


他の3人は荷馬車だろうが悪路だろうがそのほうが普通まである育ち方をしているので、街育ちのヨークだけが不慣れなのは当然であろう。


今は不穏な話を聞いた後なのでリータは御者席の後ろで前方の警戒をし、ケリーは後方で周辺警戒をしている。


スエビ村を出ていくつかの村を通り過ぎ、2日目の昼まで順調に道程を進んでいるとある村で手を振られ声を掛けられる。

「あっちにはいかない方がいい」


馬車を止めてもらいライトが話を聞く。

「何があったのですか?」

「それがよく分からないんだ、ただ、何かがいる・・・そう感じるというか」

「話にならないわね」

リータが少し苛立ちながら言う。


ライトは少し考え、皆で馬車から降りて、スエビ村の御者にここまででいいと旨を伝え、

お礼に半銀貨と帰路の食糧をマジックバックから渡す。


「ヨーク、具合は?」

「少し、休憩すれば、大丈夫だヨ、荷馬車より歩きのほうが助かるヨ」

「私は少し様子を見てくるわ」

「あんまり遠くに行っちゃだめだよ」

「主、自分も」

「そうだね、ケリー、お願い」


リータは駆け出し、ケリーがそれに着いて行く。

ヨークは木陰で三角座りをしていた。


ライトは村の周囲を見て回り村には異常がないことを確認して、ヨークの元に戻る。

「村に異常はないみたい」

「そうなんだ、なんか変だね」

ヨークの青かった顔に色気が戻ってきた。


リータ達もすぐに戻って来て

「確かに、何かいるわね」

「近づきたくない感じがするな」

それぞれの感じたことを報告してくれる。


そうであってもライト達の選択肢は一つ、行くしかないのである。


一先ず、昼食にしてトマテ亭の朝食用のパンを2個づつ食べる。

ヨークは一つしか食べなかったので、ライトは心配したが、顔色はほぼいつも通りになっていた。


「行こう!」

ライトのその一言で全員立ち上がり、街道を西に向かう。

数人の村人がライト達を心配そうに見ているが、問題の放置もできないので何も言わずに見送ってくれる。


街道を歩いてしばらくすると、ライトは変な感覚を覚えた。

圧迫感というか、なぜかそっちに行きたくない感じがする。

「これは変だね」

感じはするが、ライトの歩みに変化はない。


ライトは闇魔法ヒープを使って周辺を確認すると、右手奥の森に黒い靄(もや)が浮いているいるように見える。

「あそこに何かある」

ライトはそう言って靄を指さして、リータに闇属性の魔力で見てみてとアドバイスする。

「やってみる」

リータは最近、闇属性の魔力循環を始めたので、少し使えるようになってきていた。


リータは何度か目を瞬いてライトが指さす方を見ると、確かに何か黒いものが浮かんでいる様に見える。

「見えたわ」

リータはそう言って、そちらにすり足で向かっていく。


ケリーはトゥーハンを抜き、ヨークも盾を構えているが、ライトは危険性をあまり感じてない。


さらに近づいていくと、藪の上に靄が浮いているので、藪の中に何かありそうだ。


リータが藪の近くで屈み、覗き込み、

「これね」

藪に手を突っ込み、取り出したのは大き目の魔石だった。

その瞬間、靄が晴れ、変な気分も無くなる。


魔石には文字が刻まれていて、よく見ると、地面にも魔法陣が描かれていた。


「人避けの結界?」

ヨークがぼそりと呟く。

何かしらの知識に引っかかったのだろう。


ヨークはリータが持っている魔石をジッと見て、文字を読もうとするが、

「読めないけど、多分、古エルフ語だヨ

こんな事ができるのは、高位の魔法使いかエルフだけだヨ」

ヨークは見解を話しライトの顔を見る。


「エルフ!見てみたい!」

皆の緊張感が一発で吹き飛んでいった。


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