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67 ナールディア

ラルシーカの宿屋にて

夜のうちに今回のダンジョンの清算を済ませる。


肉は全部で47ブロック回収。半銀貨~銀貨5×47(上位種とサイクロプスは自分たち用)

魔石はサイクロプス系が4個。金貨1~金貨3×4

オーク上位種が58個。銅貨20~30×58

中の魔石が252個。銅貨5~7×252

小は1200個を超えていた。銅貨2~3×1225

サイクロプスの目玉4個。銀貨5×4

その他、金貨46枚、銀貨209枚、銅貨902枚

装備品、ウイングブーツ→リータ。片眼鏡→ヨーク。ブッチャーナイフ→リータ。ラージシールド→ナーラ


「総額金貨約95枚(装備代は除く)だヨ」


ヨークがメモ帳を何枚も使い計算した結果である。


「金貨の枚数の割合が大きいわね」

リータがメモを見ながら感想を言う。

「宝箱を沢山見つけたのが大きいな」

ケリーが大きな声で言う。

今回、ボス部屋とオベリスク以外でも4個の宝箱を見つけることができたのはヨークのマッピングに依るところが大きい。


「ライトが金貨30枚、メンバーが金貨15枚づつだヨ」

メンバーはヨーク、ケリー(借金返済)、リータ、ナーラだ。

「これならすぐにお金が貯まるわね」

「このトゥーハン買うのに2年掛ったのに・・・」

「私もお母さんに悪いことしてるんじゃないかって疑われるのが心配だヨ」

女性陣が思い思いの感想を漏らす中でライトは別の事を考えていた。


(全然、勝てる気がしない・・・)

椅子に座り窓の外を眺めながらそんなことを考えている。

ライトの目標対象はそれほど圧倒的なのだ。


何回、5対1で戦っても簡単に全滅するイメージしか湧かない。


目を閉じ、腕を組んで、頭の中でいろんなパターンの作戦で挑むが全て叩き潰される・・・

サイクロプスがケリーより早く剣を振り、リータより素早く動き、ヨークより賢く、自分より強い魔法を行使する・・・

影さえ踏めない。高い壁。

「まだまだだな・・・」

「またDKのこと考えてるでしょ~」

「ん・・どうしてわかるの?」

「ライトが難しい顔してる時はだいたいそのことを考えてるからわかるヨ」

ヨークがライトの額に手を置き、眉間の皺を伸ばしている。


ライトが自分の額のヨークの手を引き寄せる。

「わ・・・」

ヨークが引き倒され、ライトの膝の上に座らされ、ライトの両腕がヨークを包みこむ。

「ライト?」

ヨークは少しの驚きと多少の期待を込めてライトに身を委ねるが、


「どうやったら勝てるかな~」


ライトの口から出てくるのは全く期待外れの言葉だった・・・。


手元にメイスがあったら思わずブッ叩いていたかもしれない。


「ファー。そんなの強くなるしかないヨ。経験を積んで、修練を積んで、強い敵と戦って・・・」

呆れと諦めのため息を一つついてヨークが考えを言う。


「そうだね!」

ヨークの答えはシンプルで分かりやすいまさにその通りだったので、ライトもそのまま受け入れやすい。

「ありがと、ヨーク!」

ライトはヨークのほっぺにキスをしてまた物思いにふけっている。


ヨークはキスされたほっぺに手を添えて複雑な気持ちになる。


食べ物には食指が超積極的に動くライトだが、女の子にはあまり動かない男の子なのをもどかしくも愛おしく思う女性陣であった。



翌朝、約束していたマグダの家の前で2人と再会して、金貨20枚を渡す。

メンバーの分け前は金貨15枚だったが、ライトが売らなかった上位種とサイクロプスの肉を売却したとしたら金貨22枚は越えそうだったので相談して金貨20枚とした。


ナーラは受け取った金貨を全てマグダに渡しライトに向かい直る。


「ライド、アリガド」

ナーラが右手を差し出す。

「冒険、楽しかったね」

ライトも右手を出してその小さな手を握る。

見た目とは違い、手の平はゴツゴツと石のように固い。

「めめっごだぢも、おめもづよがっだ。オデ、まだちゃっげが、でっがぐなって会いに行ぐが、おめもでっがぐなでろ」

そう言って尖った耳からピアスを外し、ライトの右手の小指に嵌め、


「ナールディア・ダモクレス」

「わかった、ナールディア・ダモクレス」

ナーラはそれだけ言うとマグダの家の中に入っていった。


それを見て主人のマグダが少し慌てて皆に謝罪する。

「すみません、私の奴隷が他の皆さまに挨拶もせずに・・・」

「いいんですヨ、ナーラの気持ちは何となくわかるヨ」


ナーラが全て自由に選べるなら、自分たち、特にライトと一緒に来たいと思う。

ただ、ナーラは今の自分を受け入れ、そして、会いに行くと言い切ったのだ。

ヨークはそれを彼女の強さだと感じ、必ず会いに来ると確信めいたものまである。

それほどライトには人を引き付ける力があるのだと、もう、半ば諦めの境地である。

そして、自分はそのライトの隣、一番近くにいることができるのである。



「しかし、驚きました、ナーラが本名を名乗るとは・・・」

「どうしてですか?」

「私も知りませんでしたし、自分が本名を名乗るのは結婚する相手だけだと言っていたので」

「「「「へ?」」」」



マグダの執務室

山吹色の瞳からは涙が止めどなく流れ落ち、リータが被せてくれたローブでいくら拭いてもそれを拭きとることはできなかった。


誰かと別れることに意味があったのは家族とはぐれて以来、初めてかもしれない。


何もない自分にこんなにもたくさんのものを与えてくれたのだ、しかも、何の見返りもないままに・・・


自分の名を捧げ、自分自身を捧げても全然足りないほどそれは大きいとナールディアは思う。


それならば、自分の価値を高めるしかない。


今はちっぽけで、でも丈夫な体がある。ライトに貰った武器と盾がある。戦える自信がある。サイクロプスを倒した実績もある。


めめっご達が足りない足りない、全然だと言っていた意味がようやくわかった。


何の意味も何の興味もなかった無色の世界からやることがたくさんある、光ある目標が再会が・・・


せめてめめっご達に負けない強さを携えてライトに会いに行く。

もっと女らしく酒に強くもっと心も強さも頑強なドワーフとなって改めてライトに求婚しに行く。



ただ、今はもう少し


こころのままに


ライト、ありがとう


その感謝の言葉で満たされたこころからあふれる涙を流れるままに・・・

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