65 戦利品
柔らかな感触と良い匂いでまどろむ心地よさで目を覚ましたライトは、頭に激痛が走り覚醒する。
視界には心配そうに覗き込むヨークの顔が間近に迫り、気絶していたことを認識していく。
「ごめんね、ライト・・・」
瞳に涙を湛えながらヨークが謝罪を口にする。
「イテテ・・・」
頭を押さえながら体を起こすと、ヨークに膝枕されていたことに気が付き、ヨークの前に座りなおす。
「僕こそごめん。悪気は無かったんだけど・・・」
ライトが視線を逸らしながら顔を赤くする。
「わかるヨ、ライトは悪くないの・・・わたしが動転してメイスで殴ったのが悪いんだヨ」
「僕は大丈夫だよ、赤のサイクロプスは?」
ヨークが視線を向けた先に今までにない大きさの魔石と大きな赤い肉のブロックが数個、置いてあった。
話によると、足をやられて動けなくなったサイクロプスをみんな・・・で殴り倒したらしい。
主に強化ブラッティメイスが新たに血を吸って頭蓋骨を粉砕していたことは誰も口にしない。
ヨークは破れた装備の代わりに大き目の布を身体に巻いていたのでライトはマジックバックからヨークの代わりの服を取り出して渡す。
ライトが周囲を見渡すとボスを倒したのに微妙な空気になっているが、
リーダのライトが戦闘中に撲倒されたのだから仕方がない。
離れた壁に寄りかかっていたトゥトが見かねて口を開く。
「お前たちの戦闘の実力はB級に近いだろう、ただ、実戦経験が乏しいからイレギュラーなことへの対応が心配だ。
今回もそうだが、未経験の突発的なことが起こった時に冷静さを失うってことは命の危険に直結する」
皆、トゥトの言葉を集中して聞いている。
「時には仲間の腕が飛ぶこともある、自分の攻撃で仲間が傷つくことがあるかもしれない。
今回は嬢ちゃんの服が破れたが、次はライトが丸裸になるかもしれないからな。
機会があまり無いからな、そうなっても動揺しないように気を付けることだ」
「丸裸・・・」
ケリーがその言葉に反応した。
「ああ、世の中には衣服を溶かすモンスターがいるし・・・薬もある。
衣服を脱がす魔法もあるからな」
ゴクリっ
誰とは言わないが生唾を飲み込む音がした。
「大事なのはそっちじゃない。
何があっても平常心を失うなっていう今回の教訓を糧にしろってことだ」
「・・・わかったヨ」
ヨークの返事と共に皆が頷いている。
「それじゃ、さっさと帰るぞ」
トゥトはそう言って台座の大きな宝箱に親指を向ける。
「ヨーク、開けて」
ライトがヨークに勧める。
「わかったヨ」
ヨークは少し嬉しそうに宝箱の前に立ち、上蓋を上げる。
中には5人分の今までで一番大きなアイズストーンとサイクロプスが持つようなラージシールド、切れ味の良さそうなブッチャーナイフそして、沢山の金銀銅貨が入っていた。
ライトは山吹色のアイズストーンとラージシールドをナーラに渡す。
「オデにぐれるのが?」
「うん、持てるならナーラのだよ、今の盾はヨークに返してあげて」
「わがっだ」
ナーラはそう言って今持っている盾をヨークに渡し、ラージシールドを受け取る。
ラージシールド側から見ると、シールドとバトルアックスしか見えないが、
ナーラはその小さな体と細い腕でも、しっかりとラージシールドを持ってバトルアックスを振って見せた。
「なんが、ええ塩梅だず」
左右の重さのバランスが取れたのか、安定感が増したように見える。
「うん、良いね!」
ライトはウインクしてサムズアップして見せる。
そこにヨークがちょいちょいとライトの袖を引っ張って気を引き、耳に手を当てて囁くように言う。
「あの盾、衝撃吸収とストレングスUPの付加が付いてるヨ」
「???」
ライトは意味がよくわからない。
「ボスドロップみたいなもんだからな、このダンジョンで一番いいものだろ、金貨30枚はするだろうな」
近くにいたトゥトが教えてくれる。
「しゃっん!」
ヨークが悲鳴だか叫びだかを上げている。
「じゃあ、このナイフは?」
「筋切りブッチャーナイフ・・・肉、筋、腱に特効あり」
ヨークが眼鏡を使って見えたものを言う。
「え~料理に使おうかと思ったんだけどなぁ・・・リータいる?」
「貰うわ、ちょうど手斧が折れちゃったから」
「たぶん、金貨10枚じゃ買えんだろうな」
「ナ、ナ、ナ、ナ、ナイフでジュウ」
ヨークの目と口が大きく開かれている。
ヨークの金銭感覚の崩壊はしばらく続きそうだった。




