64 それぞれの成長
ラルシーカのダンジョン15階のボス部屋でDKのパーティーがこのダンジョンのボスと対峙している。
モンスターは3体、青いサイクロプス、緑のサイクロプス、そして、他より2周り大きい赤いサイクロプスだ。
「青はオデが!」
「じゃあ、緑は私だな」
そう言ってナーラとケリーがそれぞれの得物を手にし前衛らしく前に駆け出して、1対1を引き受ける。
「守り重視で!」
駆け出していく2人の背にライトの言葉が投げられる。
必然、残りの3人でボスの赤いサイクロプスに向かうのだが、
リータは既に矢を赤の顔面に向け放っている。
この時、DKのメンバーは誰一人、この状況でモンスターに負けるとは思っておらず、
逆に、早く戦って、実績を積まなければ、全部ライトの魔法で片付けられてしまうという、
ヘンな焦燥感すらあった。
実際、ここまでの道中、ダンジョンにもかかわらず、危険を感じたことすらなかった。
常に十二分の安全マージンに守られてする冒険は知らない町で買い物するのとあまり変わらない緊張感しかない。
だからといって、彼らに油断があるわけではない。
ナーラはサイクロプスの攻撃を全て躱しきれるほど俊敏に動けず、
何回かは、こん棒での攻撃をシールドで受け、弾き飛ばされるが、転がりながら起き上がり、すぐに反撃に転じて、一進一退の攻防を繰り広げていた。
ケリーは慎重に相手の攻撃を躱し、後の先を取り腕や足に着実にダメージを蓄積させていく。
赤に至っては、既に目は抉られ、無暗にこん棒を大振りし、どうとどめを刺されるかを残すのみになっている。
「ライトはもう手をだしちゃダメ!」
ホワイトレイを撃とうとしていたライトはヨークに釘を刺されその場から後ずさり、他の2人の戦況を確認する。
そんなライトと比較的近くで戦っていたケリーと目が合う。
ケリーは緑の攻撃をバックステップで躱すと、トゥーハンデッドソードを立てて高く掲げ、
そこに自らの火属性の魔力を剣に込める。
「ガァ!」
ケリーが気合を放つとトゥーハンデッドソードは赤く明滅し始め、熱を帯びだす。
そこに緑のサイクロプスが突進しながらこん棒を振り下ろすと、ケリーは斜めに踏み込み躱しながらサイクロプスの胴体を薙ぐ。
サイクロプスの腹から白い煙が上がったかと思うと、そこからハラワタが押し出され前のめりに倒れこんだ。
緑のサイクロプスが倒れ、青と戦っているナーラに注目が集まるのを本人も感じたのか
「手ーだずな、オデがやる」
ナーラが声を上げるが、
何度も跳ね飛ばされ、額や頬から擦り傷や切り傷で血を流して肩で息をしている。
しかし、幼い顔はしているが眼光鋭く青のサイクロプスを睨んでいる。
対する青は一見、なんとも無さそうだが、よく見ると動きは鈍く、左の膝だけが赤黒く傷ついている。
ナーラは全ての打撃を青の左膝だけに集中していたのだ。
ヨロヨロとサイクロプスに向け歩を進め、正対し、バトルアックスを構える。
サイクロプスの胸の筋肉が盛り上がり、こん棒を振り上げてナーラを叩き潰すように真上から振り下ろす。
ナーラは転がるように前進し、叩き潰しを躱し、渾身の横薙ぎをサイクロプスの左膝に叩き込む。
ドゴンっ
サイクロプスの膝が不自然な曲がり方をして、身体を支えきれなくなり、崩れ落ちる。
左が前に盾、右に後ろがバトルアックス。
細い腕からは想像できないアンバランスなあの構えにナーラは既に入っている。
ドギャンっ
ナーラの狙い寸分違わずバトルアックスが振り下ろされる。
青の首が胴体から切り離されて、飛ぶ。
断頭斬
彼女はこの技でこれから幾千幾万の首や胴体を切り飛ばす。
その本当の意味で実力での最初の一撃だったのかもしれない。
ボスの赤いサイクロプスは胸や腹に傷や痣が無数に出来ていて、背後からはリータが右手に手斧、左手にナイフを持って返り血を浴びながらアキレス腱や踵に攻撃を加えている。
ヨークがウォータージャベリンの魔法を真正面からサイクロプスに叩き込んでいる。
「威力が足りないヨ・・・もっと鋭く・・」
「硬いわね、この木偶の坊!」
MMと矢では決定的なダメージを与えられないと見てそれぞれ別の攻撃方法を試しているようだ。
「ヨーク!魔法はイメージが大切、リータ!魔力の流れに集中!」
ライトが2人に声援を送る。
ヨークはこくんと頷き、リータは何かを思い出してポッと顔を赤くする。
先に違いを作ったのはリータだった。
赤いサイクロプスから少し距離を取り、楽な姿勢を取り、目を閉じる。
体内の魔力の流れをもう一度チェックして身体強化のイメージを整える。
床を蹴り、腕の力を手斧に伝え、腰の回転で身体全体をサイクロプスの赤いアキレス腱にぶつける。
手斧は柄の真ん中でぽっきり折れたが、ぶっつりと何かを切り裂く確かな手応えと共にサイクロプスが横回転にもんどりうって倒れていく。
その時、サイクロプスの手からはなれたこん棒がヨークの方に向かって飛んでくる。
「キャッ」
予期せぬ危険にヨークは小さく悲鳴を上げてギリギリ避けるが、
びりっ
防具の胸当てと衣服の前面が破れてこん棒と一緒に飛び去って行った。
「ヨーク!」
心配して駆け寄ってきたライトが見たものは、
白いヨークの素肌に並ぶかわいい二つの小さなキイチゴだった。
「ヨ・・・ヨーク」
ライトが震えながらヨークの胸を指さす。
ヨークは大丈夫の笑顔をライトに向けていたが、ライトの指さす先を見るとそこには露わになった自分の双丘があった。
「キャーーライトのエッチ」
白肌を真っ赤にしながら胸を隠すと同時にメイスが振られ・・・
ゴンっ
ライトの記憶はここで途絶えた。




