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62 賢きもの

ラルシーカのダンジョン11階の山岳地帯を登山中の冒険者パーティーDK


「この上って何かある?」

山頂を指さしながら、リータが言う。


スカウトのリータはもう先行しておらず、パーティーはひと塊になって山道を歩いている。

山をかなり登ったので、森はなくなり、山肌と背の低い高山植物が点在する程度だった。

「わからないけど、それを見に行くのが冒険だからね」

リータの質問にライトが答える。


「多分、あるヨ」

ヨークが自信あり気に言う。


ヨークはこのパーティーのマッピング担当なのでダンジョンの形状の一番の理解者なのかもしれない。

その経験から、ダンジョンの造りに何らかの意図があると思っている。

なので彼女の多分は結構、的を射ていることが多い。


11階でも既に、7~8戦、戦闘をしたので、ドロップ品や魔石で充分な利益を得ている。

もうどこで引き返してもパーティーの運営には問題ないのだが、元々、DKは利益を得るために冒険をしているのではない。


「山頂にボス的な何かいないかな」

「そういう雰囲気じゃないけどね」

「宝箱があるかもヨ」

「どうかしら」

ケリーは脳筋的な意見を言い、ライトは感覚的に応え、ヨークが金銭的な願望を述べ、リータはどうでもよさそうな曖昧な返事をする。


そんな、会話をしながら、歩みを進めていると、山頂らしきものが見えてくる。


そこには何か尖ったものが見える。

「山頂ね」

リータの視界でも、その先には何もないことが分かった。


山頂周辺はそこまで急斜面ではなかったので、普通に登頂することができた。

そこには360°のパノラマが開けていて、眼下にはどこまでも続く森が広がっていた。


そして、山頂の中心には方尖柱(オベリスク)が聳え立っていた。


「なんだろうね、これ?」

ライトがコンコンと叩きながら言うが

「オデも初めでぎだんで、わがんね」

ナーラが応え、他のメンバーも首を傾げる。


「何か書いてあるヨ」

そう言ってヨークが側面の文字らしきものに指をさす。


よく見ると4面のすべてに何かしらの文字が刻まれている。

「わからない・・・」

皆、口を揃えてそう言っていたが

「読めないヨ」

と言いながらもヨークはマップに文字を記入していた。


その横でライトが

「ご飯にしよう!」

と言い昼食になった。


ヨークはご飯を食べながらも、マップに書いた文字とにらめっこしている。

他のメンバーは景色を堪能したり、ブーツを脱いで、足をリラックスしたりしている。

食事より文字を気にしているヨークにライトが声を掛ける。

「ヨーク、何かわかった?」

「わからないヨ、ただ、何かがもらえるんだと思うんだヨ」

ヨークは食べかけのクレプもそのままに顎に手を当てて考えていたが、

やがて、諦めたのか、ガツガツとクレプを完食し立ち上がる。

「悔しいんだけどね・・・トゥト!」

元来た道の方に自分たちの教官の名前を叫ぶ。


「ちっ、嬢ちゃん、帰ったら古エルフ語の勉強だからな」

舌打ちと共にそんなセリフを吐きながらどこからともなく、緑髪のベテランスカウトが姿を現す。


「トゥト!」

ライトは嬉しそうに驚き、他のメンバーは唖然としている。

ヨークだけはトゥトがハインディングで様子を見ていると確信していたようだが・・・


トゥトはヨークに近寄り、ヨークが見ているメモを指さしながら読み上げる。



・木の穴を水で満たせ

・光あらば道は示される

・見出した瞳によって力が与えられる

・ここの台座に光を


「だな」

トゥトはそれだけ言い残して、後ろ手に手を振り、何処へともなく消えていった。


「ありがと」

ヨークは小さくお礼を言い、オベリスクの台座に向かい、文字とトゥトが読んでくれた言葉を確認する。

それをライト達が追って来て、その様子を見ている。


「ライト」

ヨークが手招きしてライトを呼ぶ。

「多分ここだヨ」

そう言って台座のある部分を指さしてライトに示す。

そこは言われてみればコルフェのダンジョンで土魔力を込めた壁に似ている。


ライトはヨークに言われるままに台座に近づき指定された箇所に光の魔力を込める。


それなりの魔力を込めるとオベリスク全体が光だし、オベリスクの先端から一筋の光が伸びる。

その光は森の中で一本だけ飛び出た大きな木を刺していた。


ヨークはマップにその大木を記入して、周囲を何回も確認し、特徴を書き込んでいる。

「トゥトがダンジョンでマッピングをしろって言った意味が解ったヨ」

そう言いながら眼下の森を見て大木までの道筋を辿っていく。


ライトはブルルっと背筋が震え、喜びが込み上げてくる。

森とマップを交互に見てルートを探しているヨークにライトは飛びつき、抱きしめる。


「ちょ、どうしたのライト?」

「ヨーク、ありがとう、冒険って楽しいね、僕1人だったら絶対にこんなの解らなかったよ」

何がもらえるかはわからないが、ヨークはある程度、予測して、考えていた。

そして、文字が読めなかったが、その後の解決方法まで用意されていた。

そのことにライトは感動する。


「まぁ、DKは脳筋が揃ってるからね、こういうのは私向きなだけだヨ」

ヨークはそう言って謙遜するが、ライトは自分では及びもつかないから尊敬する。

「それよりも、ルートわかったから、行こ」

ヨークはそう言ってライトの手を引き、山を下り始めた。


高山部分を抜けて、山間の森の中に入っても、ヨークはルートを間違えることなくパーティーを大木へと導いた。


「間違いなくこの木だヨ」

ヨークのセリフにライトとリータが木登りの準備をしている。


2人は荷物と装備を置くとスルスルと木に登り、すぐに見えなくなったが、しばらくすると、

「あったよー!」

という声が降ってきた。


木が一瞬、震えたかと思うと、薄い水色の光が溢れ出し、

周辺に生命のエネルギーが満ちていく。

例えれば、冬を越え、春から夏にかけて、木々や新芽が生い茂る、そんな瑞々しい感覚があった。


そして、強い水色の光が辺りを包み、光が収まると、木の根に宝箱が出現していた。


ライトとリータは飛び降りる勢いで、木から降りてきた。

胸の前で指を組み、宝箱を見つめるヨークの目がキラキラしている。


「開けてヨーク」

「うん」


ギギギィー


重厚な宝箱の上扉が大きく口を開ける。

中には今までで一番大きいアイズストーンが5個と片目用の眼鏡が入っていた。

そして、上扉の裏にメッセージが掛かれていることにヨークが気づく。


もちろん文字は読めなかったが、そこに手をかざした瞬間に小声で

「賢きものに授ける」

そう囁かれた。


ライトにもそれは聞こえたので、ライトはその眼鏡をヨークの手から取り、ヨークの左耳に手を伸ばしてそれを付ける。

「ひゃっ」

ヨークはくすぐったそうに左肩を上げ、目を閉じる。

次に目を開けた時には左目は違った光景を映し出していた。

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