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61 色の無い世界

ラルシーカのダンジョンの地下11階

初戦を終えて、メンバーの動きには淀みがない。


ここまで道案内と情報を提供してきた山吹色の瞳を持つドワーフのナーラにとって、

自分を雇った冒険者パーティーの中では間違いなく最強だった。

というか、常識外れだという方が腑に落ちる。


なぜならば・・・

装備の質が上がり、強敵化したモンスターを相手に楽勝し、その結果の話合いが鏃の値段なのである。


普段、ラルシーカのダンジョンに訪れる冒険者の目的は

肉のドロップを持ち帰りそれを売って金銭を稼ぐ。

ほぼ、営利目的である。

浅い層でオークを狩り、肉のドロップに一喜一憂する冒険者を山のように見てきた。


冒険者は兎角、自由だと言われがちだが、生きていく以上、

必要最低限の生活費は、稼ぎ出さなくてはならない。

逆にいえば生活費というお金に追いかけられているので、実際は言うほど自由ではない。


そして、気が付いたら奴隷として生きていたナーラはダンジョンから肉を運び出すこと以外、

他になにもない。

得た金銭や場合によっては現物支給の全てを主人に差し出し終了である。


そんなナーラが目撃した、異常な光景は

屋台近くのテーブルの上に乗りきらないほどの料理を並べ、皆、好き勝手食べている子供たち?!

そして、食べきれなかった料理をマジックバックにしまい、ダンジョンへと潜って行った。


諦めてすらなかった。

無限に続く毎日の連続。

自分もそうだし、他の冒険者もあまり変わらない。そういうものだと思っていた。

色褪せて、全て同じに見える、何もない無色の世界。


そんなナーラの世界で強烈な異彩を放っていたのがライトとDKのパーティーだった。

昼過ぎからダンジョン入り。

初めてのダンジョンに入るメンバー。

場慣れしていない雰囲気や装備。


普通なら敬遠して当然な、生命の危険すら有りそうな見習いパーティーのはずなのだが、

ナーラの目にはそこだけ世界が色付いている様に見えた。



戻ってきたDKはさっそく違和感だ。

浅い層で肉拾いを出来るかどうかが初心者の生き残れるか、やっていけるかの基準なのだが、

言っていることがおかしい。

いや、オークの情報が欲しいというのは至極全うなのだが、欲している情報が上位種がどこにいるか

なのだ。


普通、冒険者1人でオーク1頭を倒すならD級でギリギリくらいなはずである。

しかし、このダンジョンは複数で行動するのが当り前なので、この規模のパーティーなら全員D級でギリギリラインなのだ。

なのに、DEEF級の4人で上位種の情報?1人は先日、冒険者になりたて・・・


非日常と非常識なこのパーティーにナーラの心が惹かれる。


「ライド、オデ、酒・・・」


昨日まで、いや、ライトのパーティーを見るまでは心のどこにも酒のことなど無かった。


無かったと思っていた。


ナーラのドワーフとしての本能なのか、本人もわからないが思わず口に出た。


火酒。


「プッハァー!ウッメー!」

家族と飲んでいた時ですら、こんな声を上げたことはなかったかもしれない。


衝動からジョッキを叩きつけ、目を開けて周りを見ると


世界が変わっていた。


色も音も暖かさも


ライトの藍色の瞳も

ヨークの薄水色の瞳も

リータの翠色の瞳も

ケリーの紅紫色の瞳も

楽しそうに輝いて見える。


肉の脂が美味しそうに照り、喧騒からは乾杯や笑い声が絶えず聞こえてくる。


そして、何より、体が熱い。


火酒によって心と体に火が付いたのか・・・


「オデ、生きでで、いがっだーぁ」


当然、死んでいたわけではない。

ただ、例えるなら心が死んでいたのかもしれない。


認められず、奪われ、与えられず・・・・


心を殺して生きていた、手放していた、いや、ぼろいローブのように身に着けて誤魔化していた。


わからないが、今は、生きている。


バトルアックスをくれる?

ジャイアントキリング?!

ほんと、わけがわからない。


DKと1日、共に行動して感じるのはイキイキとしている。自由にしている。

そして、このまま自由に生きていくのだと、そんな風に思う。



自分はどうだ?どうする?どうしたい?


奴隷、無能、小さい、だから、なんだ・・・・



かんげーねぇ、次ば自分のガネで火酒さ飲む!


「ライド、オデ、オデも、戦いでぇ!」

ナーラはもらったバトルアックスを短い手で大きく振り、アピールする。



「・・・じゃあ、次は3体残すよ」

「ありがと、ライド。オデ、頑丈だず、ウルフにがまれでも、オークさ殴られても、屁でもねぇ」

「わかった」

ライトが山吹色の瞳に頷き返す。


ナーラはこの後、3戦でオークソルジャー2頭とグレートボアを1頭仕留め、キャリアと道案内から

ケリーと前衛を任せられるポジションへとチェンジした。




それはドワーフの重戦士、豪放磊落のナーラが誕生した瞬間だった。

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